中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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セミナー講師になりましょう!

2018年07月29日 | コンサルティング

人は常に他人に何かを伝えたいという動機を持っています。SNSで発信することも、Youtubeに動画をアップすることも、伝えたいからです。しかし、SNSでは相手から返ってくるのは文字だけです。生身の人間から直接反応を得ることはできません。本当に伝わったと感じることができるのは、目の前の人がうなずいたり目線を合わせたりしたときです。

セミナー講師は、そうした生の反応を得ることができます。その上受講者に感謝され、お金も貰えます。あなたもセミナー講師になってみませんか?まったくの未経験者、そもそも人前で話すことが苦手、それでも問題ありません。一度は大勢の受講者の前で話をしてみたいという気持ちをお持ちの方なら大丈夫です。。
具体的な方法を書こうとすると、どうしても数万字になってしまうので、とりあえず次のようなタイトルの本やYoutubeの動画を見ることをお勧めします。

「あなたもセミナー講師になれる」、「セミナー講師になって稼ぐ法 」、「あなたも人気講師になれる!」・・・
読み終えたら(見終わったら)、ご自身のコンテンツをセミナーでしゃべっている自分を想像してみてください。

2時間以上全く問題なくしゃべることができる、しかもYoutubeで見た講師よりも上手く話ができる、と確信したならばすぐに商工会議所やセミナー会社に売り込んでみてください。・・・先に結論めいたことを言うのは気が引けるのですが、99%失敗します(それでも100回売り込めば1回は成功するかもしれません!)。

一方、「とても良い内容なのだけれど、聴き手に伝わる言葉にうまく変換できない」という方は、実はセミナー講師としては有望です。

講師が最も大切にしなければならないのは、受講者にとって役に立つ、あなたが持っているコンテンツそのものです。それを言葉にし、わかりやすい表現に変え、絵や図表で補助し、正しく伝わったかどうかを確かめるという一連のプロセスを、時間をかけて作り上げる必要があります。単なる「伝わる話し方」など、後からいくらでも身に付けることができます。

当社は「セミナー講師になるためのコンテンツ作成講座(仮)」を準備中です。
あなたの持っている「役に立つコンテンツ」を実体化(!)して、本当に売れるセミナー講師になりましょう。

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100%の敵も100%の味方もいない

2018年07月25日 | コンサルティング

「うちの人事はトップと仲良しかどうかで決まります。トップが野球部OBなので野球部に入っているかどうか、野球やサッカーで同じチームを応援しているかどうかで決まるんです。ある程度の規模の企業でありながら、こんなことが日常的に行われるなんて信じられないでしょうが、現実のことなんです。他の企業でもこういうことは行われているのでしょうか?」

これは、ある企業に勤めている方から伺った話です。この方が言うには、異動だけでなく、昇進・昇格でも「野球部人事」が日常的に行われているそうです。

客観的に「この人が昇格するのはおかしいのではないか」という人が、いきなり係長のポストについたり、大きな失敗をした人がお咎めを受けることなく、課長に昇格したりするそうです。

組織においては、公正で公平な評価や人事をすることは当たり前のことと考えられがちです。しかし、残念ながらこのように合理的ではない判断の基に、不公平ととらえかねない人事が行われることは決して少なくないのです。これは企業の人事だけでなく、政治の世界では昨今の報道などでわかるように、なおのことなのでしょう。

このようなことがあると、その恩恵にあずかれる人にとってはやる気につながるでしょうが、そうでない人はそれこそやる気がどんどん落ちてしまいかねません。

さらに言えば、やる気の問題のみならず、その人のキャリア形成にも大きな弊害を生じさせてしまいますから、このような行為は本来許されない行為のはずです。

このような仲良し人事、別の表現をすれば好き嫌い人事とも言えると思いますが、どうすればなくすことができるのでしょうか。

先日(7月8日)放送されたNHK大河ドラマ「西郷どん」スペシャルの第二弾では、今後ドラマ内で活躍する主要な人物の生きざまを紹介していました。

その中で知名度ナンバー2(NHKの街頭インタビューによるアンケート結果)だったのは、勝海舟でした。

番組で紹介したところによると、勝海舟は「敵が大好物。敵とか味方とか分けない。全部敵かもしれないし、全部味方かもしれない」と言っていたそうです。こうしたことから勝海舟を表現するときに「全身肝っ玉」と言う人もいたようです。

勝海舟は来る者を拒まず、誰とでも会い、自分を殺しに来た人とも腹を割って話し、その結果相手を魅了してしまったのだそうです。

この番組に出演していた歴史学者の磯田道史さんによると、勝海舟は「誰を味方にしようなどと言うから間違えるのだ。みんな敵がいい。その方が大事ができる」を主義としていたのだそうです。

後世に名を残す大事を成した人の行動および言動は、さすがとしか言いようがありません。

翻って組織を考えると、派閥や学閥などの「人の群れ」は現に存在するのですから、勝のように「敵とか味方とか分けない」ことはなかなか難しいです。

その結果として、好き嫌い人事は今後もなくなることはないのでしょう。しかし、組織のトップにいる人や人事権を持っている人は、好き嫌い人事の結果、有能で有要な人が組織を去ってしまうリスクがあることを肝に据えなければならないということです。

そして、トップが代われば、明日は我が身だということを考えておかなければなりません。

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上司のたった1つの条件

2018年07月22日 | コンサルティング

上司の定義は「組織において自分より役職が上位となる人物のこと」ですから、会社組織においてはすべての役職に必ず上司がいます。(社長にも株主という上司がいると考えます)

上司の仕事とはなんでしょう。真っ先に思い浮かぶのは「部下に仕事を与え、完遂させ、その成果を評価すること」です。さらに「部下を指導育成する」ことも重要な役割です。部下から見れば上司は「仕事の発注者であり、仕事の先生」でもあります。

さて、部下にとって「理想の上司」とはどのような人を言うのでしょう。私は毎年4月にいくつかの会社で新入社員研修を行いますが、最も「下っ端」である新人にとって「これか巡り合う上司がどんな人物であって欲しいか」を尋ねることがあります。グループで話し合って「理想の上司像」をたくさん出してもらいます。私はそれを片っ端からホワイトボードに書いていきます。

明るい、誠実、行動力がある、優しい、上手に叱ってくれる、むやみに怒らない、ほめ上手、人格者、思いやりがある、好き嫌いで判断しない、仕事ができる、知識が豊富、調整能力がある、責任を取る、教えるのが上手、コミュニケーション能力がある、聞き上手、ユーモアがある、飲みに連れて行ってくれる、時にはおごってくれる・・・他にもたくさんあります。挙げればきりがありません。

ほぼ出尽くしたところで数えてみると、いつも30くらいは並んでいます。次にこう質問をします。「これだけの条件を全部兼ね備えた上司は実在すると思いますか?」当然ですが、全員が首を横に振ります。

では、この条件を半分にします。どれとどれを消しますか?」グループ内で議論が起こります。決着がついたところで、ホワイトボードから半分を消します。たとえば30→15です。

「では、さらに半分にします。どれとどれを消しますか?」今度は不満の声が上がります。それでも仕方なく消す条件を選びます。15→8です。

「またまた半分にします。どれとどれを消しますか?」7→4、そして4→2と進みます。

こうして最後に1つだけ残ります。

過去十数年、業種や規模も異なる新人たちに行ってきましたが、面白いことに最後にたった1つだけ残る言葉はほぼ一致しています。

それは「逃げない」です。

これは、「責任を取る」ということでもありますが、たとえ(上司が)責任を取る必要がなかったとしても、知らんぷりはしてほしくないということです。

部下、あるいは後輩をお持ちのすべての皆さんに次の言葉を送ります。

「逃げちゃだめだ」

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変わることを恐れない

2018年07月18日 | コンサルティング

「『計画したものを途中で変更するのはよくない。計画倒れじゃないか』と上司から言われてしまって、困っています。計画したものを途中で見直すことは、決してまずいことではないはずなのですが・・・」

これは、先日お会いしたある企業の研修担当者から伺った言葉です。昨年から始めた研修の内容を変更したいと上司に相談したところ、上記のとおり「計画したものを途中で変えることは良くない」と言われてしまったのだそうです。

確かに、何の検討もせずに計画を変更するのは良くないでしょうが、きちんと検証した結果でより良いものに見直すことは、果たしていけないのでしょうか。

仕事を進める際のフレームワークに「PDCA」があります。PDCAサイクルは仕事を円滑に進める手法としてよく知られていますが、1950年に「デミング賞」で知られるエドワーズ・デミング博士によって日本の産業界に紹介されています。

皆様はご存知と思いますが、PDCAとはPlan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の順に仕事を繰り返すことで、仕事の質が螺旋(らせん)を描くように継続的に向上して行くというものです。

Plan(計画)した研修を、Do(実行)して、Check(評価、検証、分析)を行なった結果、見直しをする必要があるのであれば、後にAct(その結果に基づいた改善策の実施)をすることは、理にかなっているわけです。必要に応じてその都度状況対応することは、仕事を進めていく際に非常に大切なことなのです。

話は変わりますが、先日(7月8日)放送されたNHK大河ドラマ「西郷どん」スペシャルの第二弾では今後ドラマで活躍する主要な人物の生きざまを紹介していました。

その中で知名度ナンバー1(NHKの街頭インタビューによるアンケート結果)だったのは、やはり坂本竜馬でした。

土佐藩の下級武士だった竜馬は当初は外国人排斥派でしたが、その後は西洋文明が進んでいることを知り、それを評価して開国派に転じたのです。

この坂本竜馬という人は、主義主張に拘わらず人の話をよく聞き、自ら相手の懐に飛び込むなどして手当たり次第にものごとを吸収したのだそうです。

敵味方関係なく柔軟に対応するその様は、まさに「ウナギ」のようであり、常に「やわらかに自分を変えた」とのことです。そうした竜馬の生き方こそが新たな時代を切り開くことにつながったのでしょう。

この番組に出演していた歴史学者の磯田道史さんによると、坂本竜馬は「変わることを恐れるな」を主義としていたのだそうです。

現在社会では経済活動をはじめ、あるゆるものが日々めまぐるしく変化し、物事はあっという間に陳腐化してしまう状況になっています。それに伴い企業活動も必要に応じて時に大胆に変わることが求められていますし、変われなければ生き残ることは難しい時代になっています。

冒頭の話で言えば、Plan(計画)したものをDo(実行)し、きちんとC(評価、検証、分析)をした結果、計画を見直すことはビジネスパーソンとしてはなくてはならない状況対応力にのっとった行為です、計画倒れを恐れて変更を認めないというのでは全くずれている話です。

「変わることを恐れてはいけない」 竜馬のこうした生き方は、まさに今の時代にこそ求められているものではないかと感じています。

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ビジネスエリートに「教養」を!

2018年07月15日 | コンサルティング

このところ経営者に必要な資質としてリベラルアーツが注目されています。リベラルアーツとは単純に言ってしまえば「教養」を表す言葉です。「教養」といえば、大学の「一般教養」科目、たとえば哲学、歴史、文学、科学などを思い出す方も多いでしょう。

ほとんどの人にとっては、リベラルアーツが専門でない限り、こうした大学時代の教養科目は記憶の彼方に消え去っていることでしょう。

ところが、多くのビジネスパーソンとは無縁だったはずのリベラルアーツが、最近ビジネス誌を中心に大きな話題になっています。

「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか? 経営における『アート』と『サイエンス』」※という本によれば、「近頃の経営者はロジックやサイエンスを重視するあまり直感や感情を軽視している」ために、「創造的イノベーションの可能性を狭め」、「今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスの舵取り」を危うくしているとのことです。

ということで、世界トップクラスの企業のエリートたちはこぞって美術館のギャラリートークに出かけ、大学院の特別講座で哲学や歴史の専門家の話を聴きに行きます。そうした教養を身に付けることで、ビジネスにおける信頼感を増し、新しい価値を創造することができるのだそうです。

私はこうした風潮には大いに賛同します。ただし「エリート層にとって」という但し書きがつきます。

「ビジネスエリート」とは具体的にどういう人たちを指すのかは難しいところですが、ここでは大企業の上級管理職以上、役員クラス、およびその候補者としておきます。

そうしたエリートたちのビジネスにおける意思決定は、それ以外の(以下の)人たちのそれよりもはるかに大きな影響を経済や社会に与えます。ですから「教養に基づいた美意識や直感」は大いに結構ではないかと思います。

では、そうでない人たちに「教養」は不要なのでしょうか。

もちろん、そんなことはありません。ただし、ビジネスの場において「最も重要な」判断基準にはなり得ないと考えます。

全てのビジネスパーソンに必要な知識やスキルは、あくまでもロジックが基本になっていなければなりません。「普通のビジネスパーソン」の方は、まず基本を身に付け、土台をしっかり固めましょう。近のビジネス誌に踊らされて高価な講座に通う必要はありません。

リベラルアーツは、自身が「そろそろエリートへの道が開け始めたかな...」と思ったあたりから学び始めても大丈夫です。

なぜなら、教養は時を経ても変わらない、普遍的な存在だからです。

※ 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 山口周 | 光文社新書 | 光文社

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プレミアムフライデーの行方

2018年07月11日 | コンサルティング

プレミアムビール、プレミアムチケット・・・など「プレミアム」がつく言葉にはいろいろあります。この「プレミアム(premium)」という言葉、最近では様々な場面でよく使われていますが、改めてその意味を調べてみると、「他の物より価値があること。高級。上等。高価」などとあります。さしずめ「高級なビール、高価なチケット」といったところでしょうか。

さて、プレミアムに関連して、皆さんは昨年(2017)2月から始まった「プレミアムフライデー」を覚えていますか?当時、政府と経済界の鳴り物入りで始まりました。目的は給与支給日直後の毎月最終金曜日の午後3時に仕事を終えることを奨め、働き方改革とも連携してその後の時間を買い物や旅行などに充てることを推奨したものです。

経済産業省のホームページを見ると、次のように書かれています。  「プレミアムフライデーとは、個人が幸せや楽しさを感じられる体験(買物や家族との外食、観光等)や、そのための時間の創出を促すことで、

(1) 充実感・満足感を実感できる生活スタイルの変革への機会になる (2) 地域等のコミュニティ機能強化や一体感の醸成につながる    (3)(単なる安売りではなく)デフレ的傾向を変えていくきっかけとなる

といった効果につなげていく取組です」なるほど、多種多様な目的があったことがわかります。

さて、プレミアムフライデーが導入されて早1年半。スタート当初は様々なニュースなどで報道されていましたが、最近では話題に上ることはほとんどなくなったように感じます。また、私の周囲ではこれが話題になったことは、実はこれまでに一度もありません。

ニッセイ基礎研究所のデータによると、プレミアムフライデーの認知度自体は94.5%にもなるようですが、普及率はわずか3%ほど。この数値からも鳴り物入りで始まり、知られている割にはさほど普及していないことがわかります。

実際、導入しているのは旗振り役の公務員や民間企業では大企業が中心とのことですから、一般に広く普及しているとは言えません。

それでは、このプレミアムフライデーはどうしてあまり普及しなかったのでしょうか?

「月末で忙しい、賃金が上がるわけでもないのに時間だけ与えられても困る、そもそも仕事が減るわけではない」などなど様々理由があるようですが、確かに月末の忙しい中、仕事を残してまでやりたくないというのは本音なのでしょう。

プレミアムフライデーに限ったことではありませんが、このように制度ありきで形を作ったとしても、運用面がきちんと整っていなければ、結局は絵に描いた餅になってしまうのは当然のことです。

話は変わりますが、つい先日(7/6)「働き方改革関連法」が可決・成立しました。これは(1)残業時間の上限規制、(2)高度プロフェッショナル制度、(3)同一労働同一賃金を中心とした8つの法律で構成されています。しかし、法律が成立して形(ハード)が作られても、実際の運用面(ソフト)をきちんとフォローしなければ、プレミアムフライデーのように本来の目的には全く届かないという結果になりかねません。

実際に働き方改革を進める現場の企業等においては、「誰のための、何のための法律なのか」ということをあらためてきちんと押さえたうえで、取り組んでいただくことを強く期待します。

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中途採用のミスマッチの理由

2018年07月08日 | コンサルティング

1年前、ある大手食品商社の人事部長から中途採用についてのご相談を受けました。「昨年は3人中途で採用したのですが、半年経たずに1人辞めてしまいました。」「仕方がないのでまた人材紹介会社に募集広告を出しています。」「ここ3年で6人も辞めています。まるで広告会社を儲けさせるために採用をやっているようで・・・どうしたものでしょう。」

「退職者に、なぜ辞めるのかその理由を聞いていますか?」と私が尋ねると、「もちろんです。とにかく退職理由を徹底的に聞き出しています。」と答えました。

「今までにお聞きになった退職理由ですが、共通点はありませんでしたか?」
「はい。ほとんどが ”思っていた仕事の内容と違うから”とか、”もっと大きな仕事がしたい”といったものでした。当初の期待と実際の仕事とのミスマッチですね。」

「なるほど。しかし、ちょっとおかしいと思いませんか。中途採用ですから経験もそれなりに積んでいますよね。それに御社のような専門商社を受けるなら業務内容を知らないはずがありません。まして募集職種は営業オンリーでしたよね。」
「ああ、確かにそうですね。基本的に営業経験者の採用ですし、当社の業務については全員がよく知っていました。」

「それともうひとつ。退職者の上司だった方は、一切慰留をしなかったのではないですか?」
「そりゃそうですよ。辞めたいと口にした段階で慰留しても無駄ですから。」
「いえ、私が思うに退職した人は上司も慰留したくない人物だったのだと思います。」

人事部長はちょっと驚いたような顔をしましたが、思い出したようにこう言いました。
「そういえば、昨年の退職者の上司だったA支店長は私に、”ここだけの話だけど、今度の中途採用のBくん、大手のC社にいたそうだけど、ありゃ「ハズレ」だよ。人事部はちゃんと選んだの?”と言われたことがありました。その時は、単なる愚痴だろうと思って聞き流していました。」

「部長、それ本音です。御社のレベルに達していない人を採用してしまったのです。特に営業職の場合、自分の業績を”盛って”話す人が多いですから。それも大手企業にいた人にその傾向があります。」
「そうですか。言われてみると採用者数の充足自体が目的になっていたかもしれません。」

「人手不足の折、大変だと思いますが、採用に当たっては時間をかけて何度も面談し、十分に実力を調べ尽くしてから採用してください。」
「でも、しつこく面談を重ねると応募者が嫌がりませんかね。」
「はい。レベルの低い応募者は嫌がります。徐々に化けの皮がはがれるからです。逆にレベルの高い人はたくさん話してくれるようになります。」

「今後は調べに調べて、質問に質問を重ねて、レベルに達していないと判断したら人数が充足していなくても、いったん採用広告を打ち切ってください。その方が良質の応募者が集まります。」

それからしばらくして、この会社の「キャリア採用」広告を見なくなりました。
これが今後の会社の業績にどう影響するのか、はっきりするまでにあと数年はかかるでしょう。
ひとつだけ言えるのは、少なくとも「ハズレ」を引くことはなくなったということです。

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異動の賞味期限

2018年07月04日 | コンサルティング

A社 「うちは異動が多いんです。3年から長くても5年で異動があります」

B社 「異動は必要だと思うのですが、最近の様子を見ていると、まるで異動そのものが目的になってしまっているように感じます」

これらは、最近お会いしたお二人から伺った話です。

ご本人たちがおっしゃるとおり、確かにA社もB社も異動は多く、どちらの会社も研修担当者が3年どころか、この1年と少しの間に3回代わられました。あまりにも異動が頻繁なため、信頼関係が築けないまま出会いと別れが繰り返されているような気もしています。

異動については、このブログでも3月に「異動のメリット」(https://blog.goo.ne.jp/jinzaiikuseisha/e/a2b151575d231fd983a1a4a498cefcaf)と題して取り上げていますが、今回続けてA社とB社の方から話を伺えましたので、再び取り上げることにしました。

A社の方は、「新卒で入社後に営業部に配属されて4年がたち、もう少し営業を深堀したかった」とのことですが、この度人事部に異動したそうです。しかし「この経験を踏まえて、将来はまた営業で活躍したい」とのことでした。

一方、B社の方からは「組織の活性化を図るために、会社が異動を強化している考えは十分理解できます。しかし、転居を伴う異動は本人だけの問題ではないため、優秀な社員の退職にもつながっている面があります。他社では異動についてどういう考え方をしているのでしょうか?」という質問を受けたのですが、やや異動のマイナス面がクローズアップされている感じでした。

このように異動にはメリット・デメリットがありますが、私はプラスの面のほうが多いという考えです。それは、本人の問題だけでなく、他者への影響力という観点からもプラスの方が多いと感じるからです。

たとえば、今回のサッカーワールドカップでは、日本代表チームの監督が直前にバヒド・ハリルホジッチ前監督から西野監督に代わりました。ハリルホジッチ監督のもとでは起用の予定はなかった本田選手は、西野監督により先発ではなかったものの起用された結果、3大会連続のシュートを決めるなどの活躍ぶりでした。

このように監督によって戦略が異なり、また選手との相性もあるはずですから、当然のことながら起用する選手も変わるわけです。企業においてもこれと同様のことがあります。

たとえば、上司と部下の組み合わせがいつもいい形で仕事ができれば問題はないのですが、必ずしもそのようにいくとは限りません。

以前、ある企業で入社5年目の社員が同業他社へ転職したことがありました。当初、転職理由を明らかにしていなかった彼に対し人事が繰り返し退職理由を尋ねたところ、ようやく口にしたのは「あの上司の下でこれから何十年も仕事をすることを想像したら、我慢ができない。辞めるしかないと思った」とのことでした。

長い間、同じ組み合わせで仕事をしているとこうしたことが起こりえますし、当然マンネリにもなります。だからこそ、定期的に人を異動させることによって、社員の新たな能力を見出せます。仮に相性が良くない上司と部下の組み合わせだったとしても、一方が異動するまでの数年間は我慢して頑張れるという話もよく聞くところです。

最後に、日本代表チームや内外のクラブを率いた岡田武史氏の言葉が新聞(朝日6月17日)に掲載されていました。

「監督の賞味期限は3年。どんなに練習や戦術を工夫してもマンネリは避けられない。中心選手を代えるか、監督が代わるしかない」

監督の賞味期限は3年とはなかなか厳しい世界だと思いますが、企業においても実は同様のことが言えると感じています。さて、西野監督の賞味期限にはまだかなりありますが、去就はいかに??

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あなたの会社はトヨタではありません。

2018年07月01日 | コンサルティング

管理職向けの研修では、事前課題として何冊か本を読んできてもらうことがあります。本の選択は、研修担当者の方やその会社の役員さんからのリクエストによる場合がほとんどです。選ばれる本は、ときどき松下幸之助やドラッカー、論語などがありますが、やはりビジネス書が大半を占めます。中でも圧倒的な人気を誇るのは「トヨタのXXX」といったトヨタ自動車が実践している仕事の進め方に関する本です。

「トヨタのXXX」には生産現場の改善や企画の作り方に留まらず、人材育成や片づけまで、様々なテーマがあります。その内容は理論的であり大変わかりやすく、すぐにでも実践できそうなことばかりです。

研修前にこうした本をしっかり読み、重要な言葉の意味や考え方をインプットしてきてもらいます。それにより研修中のグループ討議では無駄な議論が無くなり、クリアでレベルの高い意見のやり取りが実現します。

ただし困ったことも、多少起こります。

たとえば「トヨタではこういう片づけをしている」という事例を読むと、なるほど大変効率的で簡単にできそうだと一瞬思ってしまいます。これが困ったことなのです。

「はじめに必要な書類と要らない書類を分けましょう。」

これを読んだ役員クラスの方々はたいてい大喜びします。自分たちは研修に参加しないにもかかわらず、「そうか今度の研修でそういうことをウチの管理職の連中に学ばせるんだな。それは期待できそうだ」というわけです。

役員や経営者にとって、書類の分別は難しくありません。自分が必要だと思えば必要だし、不要だと思えば不要だからです。また、秘書やそれに準ずるスタッフが日常的な事務作業を行っていれば、それすら考えなくても済みます。

一方、係長、課長クラスの方は「必要な書類と要らない書類を分ける」のがいかに大変であるかを瞬時に理解できます。一度「要らない」と判断して廃棄した書類を、かなり後になって役員から「持ってこい」と言われたらどうでしょう。「捨てました」では済まされません。判断ミスを責められるばかりか、責任を取らされるかもしれません。

あなたの会社はいかがですか?もし、現場の管理職が適切な判断を行い、仮に多少のミスがあったとしても経営者が現場を尊重して口を出さないなら、あなたの会社の職場もトヨタ同様きれいに片づくことでしょう。

しかし、あなたの会社の管理職はトヨタの管理職とは違います。あなたの会社の経営者はトヨタの経営者とは違います。残念ながら、あなたの会社では必要な書類と要らない書類を分類することは不可能なのです。これが多くの会社の現実なのです。くれぐれも誤解なさらないように。

それでもトヨタから学ぶことはたくさんあります。

研修では「トヨタではない会社でもできることは何かを徹底的に考えてもらい、職場で実践すべきことを具体的に決めていきます。そして、職場でそれを実践してもらい、半年から1年後のフォローアップで検証します。そこで修正を加え、さらに1年、2年・・・とトライ・アンド・エラーを繰り返すのです。これが会社の無駄をなくし、効率化を実現するための最短にして最善の道です。

「そんな面倒なことできないよ!」と思われた方も多いでしょう。

でもあなたの会社はトヨタではないのです。

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