中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,197話 組織以外の人との接点を作るには

2023年12月27日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

今年の年末は久しぶりに忘年会を開催したという組織が多いと思います。実際に繁華街は4年ぶりに賑わいを取り戻したように感じます。先日、2020年4月に入社した人から話を聞く機会がありましたが、この12月に初めて会社の飲み会があったと嬉しそうに話をしてくれました。

この会社等の「飲み会」、最近は行われることが減ったと言われるようになって久しいです。理由は様々あるかと思いますが、たとえば上司や先輩と飲みに行くと気を使わなければならない、また組織内の飲み会ではどうしても内部の人のうわさ話が中心になりがちで、居心地が悪いと感じる人もいるようです。私自身も以前会社員をしていた頃には、同様の感想を持ったことがありました。

話は変わりますが、最近私がお伝えしたいと考えているのは、組織の外の人と接点を持つことの楽しさです。しかし、いざ社外の人との接点を持とうとしても、その機会をどのように得たらよいのか迷う人もいるかもしれません。簡単なところでは異業種交流会が思い浮かびますが、私自身の経験上でも交流会は一度に大勢の人と出会えるというメリットはあるものの、名刺交換をした相手から一方的な売り込みを受けるだけで終わってしまうこともあり、あまり得るものがなかったという感想をもつことがあります。

それでは、どのようにして社外の人と出会う場所を見つければよいのでしょうか。私のお勧めは、友人知人の行きつけのお店を紹介してもらうことです。私は知り合いが10年以上通い続けている、ある飲み屋に一緒に行く機会があり、そこで出会った人達から聞く話が非常に面白く、かつ勉強にもなると感じてよく行っていました。

そこに集まる人達の年齢や職業は千差万別で、大企業から中小企業までの会社員、医師や教員(小学校から大学まで)、公務員、NPO法人を立ち上げた人、さらには大学生まで実に様々です。その人達とは名刺交換をしてもその後に売り込みをされるようなこともなく、仕事や趣味まで実に多岐にわたる話を聞くことができるのです。私もこれまでに大勢の人と名刺交換して話を聞いてきましたが、特に印象に残っているのは大型クルーズ船の船長のリーダーシップ談や、あるNPO法人を立ち上げた人の経験談です。

お聞きする話は、私からすると素晴らしいと言える経験にもかかわらず、自慢するでもなく普通のこととして淡々と話すため非常に興味深く、そこで出会う人達はまさに「一騎当千」と言ってもいいよう感じています。

では一体なぜ、このように一騎当千者が多く集うのか、それはおそらく店主の人柄によるところが大きいと私は考えています。店主は元々大手企業の要職に就いていたのですが、30代後半に一念発起して今のお店を始め、かれこれ40年になります。開店当初から通っている客も多く、一見緩い雰囲気の店主が醸し出す空気によって老若男女が集うようになったのではないかと思うのです。

この店に行くようになり様々な人達と接点を持つことで、書籍やテレビでは得ることができない知識や人柄に触れることができ、毎回とても充実した時間を過ごすことができました。残念ながら1年半ほど前に、店主の体調等の理由によりお店は閉店してしまったのですが、こういう雰囲気のお店でしたので、現在でも店主を囲んだ飲み会が定期的に行われています。先日のクリスマスパーティにも50名ほどが集まり、ワイワイガヤガヤ、それぞれの近況をはじめ、久しぶりに旧友とのコミュニケーションを楽しんだのでした。

このようなお店(場)に出会えることは、そう多くはないのかもしれません。しかし、人とのコミュニケーションに苦手意識を持っている人、特に若い人達にこそ、飲み会に限らずぜひ会社以外の人との接点を持つ機会を積極的に作っていただきたいと考えています。

さて、お読みいただきましたこのブログ、2023年はこれが最後となります。今年1年もお読みいただきありがとうございました。来年度もよろしくお願いいたします。

それでは皆様、良いお年をお迎えください。

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第1,196話 パワハラが横行する組織になってしまったのはなぜなのか

2023年12月20日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

パワーハラスメント(以下パワハラ)に関しては、2022年4月に防止措置への対応が大企業のみならず中小企業へも義務づけられていますが、では実際にパワハラ防止は進んでいるのでしょうか。

パワハラはという言葉を聞くようになったのは、今から20年以上も前です。それまで職場での威圧的な態度などをはじめ様々な嫌がらせ等に悩んでいた人々は、パワハラという言葉が生まれたことをきっかけに声をあげるようになり、この言葉は一気に社会に浸透していったと言われています。

そうした流れの中、厚労省が2011年に「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」を発足させ、パワハラの現状把握や予防・解決に向け具体的な取り組みを開始し、様々な議論等を経てようやく2019年にパワハラ防止法が成立した経緯があります。

こうしてパワハラが広く認知されるようになり、パワハラをしてはいけないという機運が高まりましたが、その一方で最近ではパワハラを恐れるあまり、部下に必要な注意をしたり育成のために叱ることにも慎重になりすぎてしまっている管理職が少なくありません。弊社でも、この10年ほどはパワハラ防止や部下育成をテーマとした研修を継続的に担当させていただく機会が増えてきているのですが、研修の中で強く感じるのは、管理職が部下に対して必要以上に「遠慮」しすぎてしまっていたり、部下育成に対しても必要以上に「謙虚な姿勢」で臨んでいるということです。

これに関しては、これまで本ブログでも何度も触れてきていますが、職場をとりまとめるために、あるいは部下の育成のためには必要な注意や指導、時には叱ることは管理職として当然に行うべきものであり、それはパワハラとは別のものなのです。パワハラと捉えられてしまうことを恐れるあまり、管理職として必要な指導等までを控えてしまうのは本末転倒と言えます。

そういう中、先日一部の新聞で報道された神奈川県内のある市役所の職場におけるハラスメント行為の報道には、正直驚きを隠せませんでした。この報道をご存じの方も多いかと思いますが、昨年市が職員を対象に実施したハラスメントについてのアンケートでは、「ハラスメントを受けたり、見聞きしたりしたか」と尋ねたところ、複数回答でパワハラが690件、セクハラが229件あったとし、上司や同僚、さらに相談窓口にも相談したが解決していないという回答が149件あったそうです。 

具体的な行為としては、「馬乗りになって殴打する」「5時間叱責する」「男性職員が約30分、女性職員に罵声を浴びせた」「不在になった職員の悪口を大声で話す」「育児のための時短勤務について上司から嫌みを言われる」「廊下ですれ違うたびに舌打ちをし、にらみつける」等とのことです。パワハラ防止が広く認知されているはずの今でも、これだけあからさまにパワハラ行為が行われているというのは、一体どういうことなのでしょうか。

あくまで推測ですが、パワハラ行為をしている人は自身もかつてパワハラをされた経験があるなどにより、上記の行為がパワハラにあたると理解していない、あるいはこの程度はいけないことではないと思っているのかもしれません。そして結果として、組織の中でパワハラを許してしまう風土がはびこってしまっているのではないでしょうか。しかし、この状況はそもそも法律上も問題であるだけでなく、このような組織は人の流失が続いて、いずれ組織として成り立たなくなってしまっていくのではないでしょうか。

このような風土を改善するのはなかなかに前途多難だと思いますが、「ハラスメントは絶対に許さない」という思いを全職員が共有し、それを確実に実行していく。時間は長くかかるかもしれませんが、取組みが進んでこうした風土が一掃されることを願ってやみません。

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第1,195話 人が「固定」されることによる影響

2023年12月13日 | 仕事

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「上司(男性)が仕事中にスマホばかり見ているので、やる気が失せてしまうのです。やめさせるために、何か良い方法はあるのでしょうか?」

これは先日、私が担当した公開セミナーでお会いした30代前半の受講者から相談された話です。詳しい状況を聞いてみると、その上司は50代後半で非常に仕事ができる人である一方で、仕事中の大半の時間で私用のスマホをいじっているのだそうです。

毎日長時間スマホを見ることが許されてしまうのは、この部署では組織のシークレットの内容を扱っているため個室になっており、さらに構成メンバーは上司とこの受講者の2人きりのため、周囲の目に触れることが全くない状態だからなのだということです。上司は仕事自体はできる人のため、その意味ではもちろんプラスの影響もあるのだそうですが、いくら仕事ができると言ってもスマホばかりいじっているのを見るのは、マイナスの影響を及ぼしているとのことでした。

私は人事や他の部署の上司に相談することをお勧めしましたが、何分にも2人しかいない部署のため、受講者が相談をしたことが容易にわかってしまうことが懸念されるとのことでした。

これに関連して、「仕事をしない上司」や俗に言う「仕事ができないおじさん(おばさん)社員」の話は、これまでにもたびたびマスコミ等で取り上げられたり、私自身も何度も聞いたことがあります。しかし、このケースは仕事ができる上司ということであり、そういう人がこっそりと仕事をさぼるのではなく、部下の目の前で毎日正々堂々とスマホばかりを見て過ごすというのは、一体どういう心境なのだろうと首をかしげたくもなってしまいます。

今回のケースは、組織の経営にかかわる秘密情報を扱っているゆえに閉ざされた空間だからこそできてしまうわけで、そのように考えるとやはり何らかの形で「第三者の目に触れる」ことは必要なことではないかと思うのです。

現在、多くの組織は風通しのよい職場を作るためにハラスメント防止やコンプライアンスの観点から様々な研修を行ったり、意識改革を行うための工夫をしています。この受講者が所属している組織でももちろんそれらを重要視はしているようですが、他の社員や経営者の目が届かない状態になってしまっていることにより、このような結果を生んでしまっているのだと推測します。

それでは、どのようにすればこのような事態を回避することができるのでしょうか。私はやはり定期的な異動を行う仕組みが必要だと考えています。近年ではジョブ型雇用を始めたり、異動に関しても本人の意向を大切にすることが重要視されるようになってきました。もちろん、それらを否定するものではありませんし、これまでこのブログでも何度も書いてきたように、異動にはメリット・デメリットもあるとは思います。

しかし、人が「固定」されることによる弊害は必ず何らかの形で生じてしまうものであり、それを避けるためにも定期的に異動を行って様々な人の「目」を入れることで、組織に適度な緊張感を持たせ、風通しも良くしてすることができると考えています。今回相談を受けたようなケースは組織としても決して看過できないものであり、抜本的な対策を講じる意味でも「人を固定しない」ことが必要なのではないかと考えています。

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第1,194話 物ごとを浸透させるためには

2023年12月06日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「+(タス)×(カケル)ヒビク 終わらない力の始まり」

これは先月開催された「令和5年度自衛隊音楽まつり」のスローガンです。ご存じの方も多いと思いますが、自衛隊音楽まつりは防衛省が毎年11月に日本武道館で行う各自衛隊音楽部隊の演奏会です。1963年に第1回目が開催されて以降、東京オリンピックが行われた1964年と、昭和天皇の病状が悪化し祝典行事等の自粛が要請された1988年、および新型コロナウィルス感染症の拡大防止が求められた2020年と2021年を除いて毎年実施されているとのことです。

今年も陸・海・空3自衛隊のみならず、在日米軍軍楽隊の演奏やマレーシア軍中央音楽隊がゲストで演奏したほか、防衛大学校儀仗隊によるファンシードリルや全国の基地・駐屯地の和太鼓チームによる演舞がありました。大変盛りだくさんの内容の演奏が冒頭の「+(タス)×(カケル)ヒビク 終わらない力の始まり」に基づいて行われ、私も観覧する機会がありました。

私をはじめ、このスローガンを聞いたのは当日が初めてという観客が多かったのではないかと思いますが、おそらく大半の観客の心にこのスローガンがしっかりと刻まれたのではないかと思います。と言うのも、私は当日自由席だったこともあり開演の1時間前くらいに会場に到着したのですが、それから開演までの1時間の間、そして2時間の演奏中に繰り返しこのスローガンを耳にすることになったのです。(ちなみに、今年はこれまで以上に人材の募集に力が入っており、このスローガンもその流れなのだろうなと思いました。)

はじめに聞いたときには「なるほど。そういうスローガンの基に今年の演奏会が行われるのね」という程度に軽い気持ちで聞いていました。ところが、10回くらい聞いているうちに徐々に「+(タス)×(カケル)ヒビク・・・」が頭の中で繰り返されるようになり、最後のころは主催者のナレーションとともに、私の中でこの言葉が繰り返されるようになっていったのです。

話は変わりますが、組織において理念やミッションやバリューなど様々な「パーパス」を掲げているところが多いかと思います。しかし同時に、「従業員に言葉が浸透しない、思いが伝わらない。どうすれば全従業員で共有することができるのか」という問題意識を持っている経営者は少なくないと思います。

今回、自衛隊音楽まつりのスローガンを繰り返し聞いたことで、あらためて「物ごとを浸透させるためには、繰り返し繰り返し伝えていくことが最もシンプルであり、かつ効果発揮を期待できる方法なのではないか」と感じました。

もちろん、ただ単に言葉を覚えたからと言って、それだけですぐに全従業員が同じ方向性に向かえるというものではないのは当然ですが、それでもまずは言葉を共有することがはじめの一歩なのではないかと、今回の経験を通して改めて考えたのでした。

それにしても、コロナ禍を経て4年振りに本格的に開催された自衛隊音楽まつり、マーチングのように様々なフォーメーションをしながら演奏するなど、以前に比べエンターテイメント色が強くなり、より楽しめるようになったと私には感じました。YouTubeなどでも視聴できると思いますので、見ていないという方はぜひご覧になってください。

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