中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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バーンスタインの言葉

2018年02月28日 | コンサルティング

「偉大なことを成しとげるには2つのことが必要である。1つは計画、1つは時間。ただし、不足気味の時間が」

これは今年、生誕100年を迎えるレナード・バーンスタインの言葉です。アメリカが生んだ偉大な指揮者であり、作曲家であるバーンスタインですが、生誕100年ということで、ここのところ様々なメディアなど取り上げられています。

バーンスタインの名を初めて聞いたという方もいらっしゃるでしょうが、バーンスタインが作曲した曲は間違いなく耳にしたことがあるはずです。たとえば「ウエストサイドストーリー」の「トゥナイト」や「アメリカ」を聞けば、多くの方が「ああ、その曲なら知っている」と思われることでしょう。

バーンスタインはその生涯で7度、来日したそうですが、私自身は残念ながらバーンスタインの公演に行くことはできなかったのです。しかし、あるとき冒頭の言葉を知ってから、一方的に非常に身近な存在だと感じているとともに、研修やコンサルの仕事を続けている日々の中で、この言葉の重みをかみしめています。

近年、「働き方改革」が大変な話題になっています。テレビや様々な書籍をはじめ、「働き方改革」を目にしない日はないと言ってもいいくらいです。弊社は会社設立時から「仕事の生産性の向上」をメインテーマの1つとして研修やコンサルに取り組んできていますが、実はその中でバーンスタインのこの言葉を何度も拝借しています。

弊社が行う研修では、受講者に様々な演習に取り組んでいただきますが、その際はじめにバーンスタインの話(特に「不足気味の時間」の部分)をしてから課題の締め切りを伝えると、納期管理を強く意識して課題に取り組んでいただけています。

私はバーンスタインの言葉の肝は「不足気味の時間」であり、つまりは「足りない時間を意識しつつ、ものごとを行う」というところにあると思っていますので、その点を強調して話をしています。

すると、その結果、受講者は締め切りをきちんと守り、さらには質の高い成果を出してくれます。いつも心の中で「さすがはバーンスタインの言葉」と思っているのです。

この言葉のように、予め「時間」を意識して、仕事に取り掛かる際にはまず納期を明確にし、そこから逆算して段取りを組むということを日常的に行えば、仕事の生産性を上げることができるということを研修の中で体験していただいているわけです。これを受講者それぞれが実際に職場に戻ってから実践していただければ、職場全体の生産性も間違いなく向上できると考えています。

皆さんも仕事に取り掛かる際には、ぜひバーンスタインのこの言葉を思い出してみてはいかがでしょうか。

さて、本人に断りもなく、これだけバーンスタインの言葉を拝借している私ですので、今年は生誕100周年を祝うコンサートに行く予定でいます。

コンサートに行く計画はしたのであとは時間だけですが、こればかりはコンサートの時間が不足しないように、十分に確保します。

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コミュニケーション研修の選び方

2018年02月25日 | コンサルティング

コミュニケーションとは言葉を使って相手にメッセージを伝えることです。言葉だけではなく、電話やメールによるやり取りもコミュニケーションです。言うまでもなく、誰もが日常的に行っている行為であり、人は呼吸をするように言葉を発し、言葉を受け止め、お互いの意思を伝えあっています。

コミュニケーション研修と聞いて、「いつも自然にやっていることをあえて教育してもらう意味はあるのか?」そう思われた方も多いでしょう。では、1日のうちの多くの時間を費やす仕事の場でのコミュニケーションについて考えてみましょう。

会社で行うあらゆる仕事の目的は(端的に言えば)利益を得ることです。情報のやり取りも、その目的を達成するために行われるものです。仕事を進める上で、誤った情報や誤解を招く表現は損失を生む元ですから、極力排除されなければなりません。

「なにを当たり前のことを大げさに・・・」と思ったかもしれません。ところが、私たちは自覚のあるなしにかかわらず、情報を正しく伝えることが苦手です。

たとえば、どんな会社にも「表現があいまいで、よく聞いていないと内容を誤解してしまう」話し方をする人や「理路整然と話すのだけれど、結局何が言いたいのかよくわからない」人が一人や二人、必ずいるはずです。コミュニケーションが「当たり前」の行為だからこそ、多くの人は「正しく伝わっているかどうか」を気にすることがほとんどないからです。

しかし、仕事の場では情報が正しく伝わらなければ致命的なミスにつながります。その結果、利益を減らしてしまうこともあります。

「職場の人間関係を改善します」、「組織のチームワークを強化します」、「ミスを防いで効率アップをはかります」・・・コミュニケーション研修を行う研修会社のホームページや会社案内によく書かれている「目的」です。

企業の研修担当者、経営者の皆様、こうした文言に出会ったら、ぜひ次のような質問をしてください。

「では、コミュニケーション研修の真の目的はなんですか?」

「利益を得るためです!」という答えが返ってきたら正解です。

きょとんとした顔をして頭の上に「?」が浮かんでいるようだったら、その会社に研修を発注するべきではありません。利益を減らすだけです。

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責任の所在を明らかにしないと、誰も動かない

2018年02月21日 | コンサルティング

「誰か!119番してください!」、「誰か!AEDを持ってきて!」

これは人が倒れているのを発見した場合、周囲に応援を頼む際に多くの人が最初に発する言葉だそうです。

もし実際にこのような緊急事態に居合わせたとしたら、あなたなら一体どうするでしょうか?

一般的には、このような場合に居合わせた人は要請にすぐに反応して、119番に通報したり、AEDを持ってきてくれたりしてくれるだろうと考えるのではないでしょうか?

ところが、実際にはこのような期待通りの反応を得られないことが、ままあるのだそうです。現に周囲には大勢の人がいたのにもかかわらず、誰も対応してくれなかったという事態が本当に起きてしまったのだそうです。

一体なぜ、そんなことが起こってしまったのでしょうか。

それは、「誰か〇〇してください」というように「誰か」と声をかけられると、自分以外の誰かが動くだろうと考えてしまい、結果として「誰も」動こうとしなくなってしまうことが原因だったのです。

では、このような場面ではどのように声をかければよいのでしょうか。

こういう場合には、大勢の中で特定の「誰か」を決めて、その人の目をきちんと見て(アイコンタクト)「あなたは119番通報をしてください」、「あなたはAEDを持ってきてください」とそれぞれに声をかけるのです。そして、合わせて伝えた相手の「了解した」という返事を確認することが必要なのです。

そうすれば、声をかけられた人はきちんと自分の責任を果たそうとするとのことです。

実は以上の話は、このたび私が参加した「普通救命講習」で受講した内容です。

これと同じような意味で、職場の問題を解決しようとする際に、責任の所在があいまいなままで「ルール」ができてしまうことがよくあります。

つまり、「誰が(Who)」という責任の所在を明確にしないままルールにしてしまうわけです。そうなると、みんなが「自分以外の他の誰かがやってくれるだろう」と期待してしまい、その結果誰も動かないという、救命の際と同様のことが起きてしまうことがあるのです。

今回の講習を踏まえ、人は「自分以外の誰かがやってくれるだろう」と期待してしまうものなのだということを前提に、ビジネスの世界だからこそ「誰が」やるのかを明らかにして取り組まなければならないということを改めて感じました。

さて、今週末は「東京マラソン2018」が開催されます。講習の中で聞いたのですが、過去にレースの途中で体調不良となり、心肺蘇生が必要となってしまったランナーが10名位いたそうです。しかし、いずれのケースの場合も東京消防庁の対応が適切だったことにより、大事には至りませんでした。

今回のレースにおいても、万が一救急対応が迫られるようなケースが起きてしまったとしても、東京消防庁が迅速かつ適切に対応してくれることを期待しています。

そして同時に、もし自分が今後冒頭のような場面に出くわしたら、ちょっと怖いけれど「誰か」と力を合わせて対応しなければと強く思っています。

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4段階評価を信用する研修担当者は失格である

2018年02月18日 | コンサルティング

ある研修会社のホームページに、受講者アンケートの結果が載っていました。そこには、この会社が提供するほとんどの研修の評価が「良かった」と「大変良かった」を合わせて95%以上となっていました。

あなたが企業の研修担当者だったら自分も「95%以上のアンケート結果」を得て大成功!と喜びたいと思うことでしょう。そして、この会社に研修を頼んでみようかなと思うかもしれません。

しかし、本当にそう思われたとしたら、あなたは研修担当者として失格である可能性が高いと言わざるを得ません。

まず、どのようなアンケートを取ったのか確かめる必要があります。

もしアンケートが4段階評価だとしたら、それはまったく使い物になりません。「評価をはっきりさせるために4段階にするべきだ」と言う人がいますが、それはあきらかに間違いです。

あなたが研修に参加し、受講直後にアンケートを記入するとします。内容が簡単でそこそこ面白かったら4段階で3を付けることでしょう。2や1を付けるのは、よほど内容が悪かったときです。真ん中の評価が無いからこそ、凡庸な研修も「切り上げ」されて「良い」になってしまいます。

つまり4段階評価アンケートは「評価をあいまいにするために行うもの」なのです。

さらに大事なことは、受講者の立場に立って考えることです。研修が「楽しかった」とか「ためになった」と思うことと、研修で身につけたことが実践で生かされることとは別の話です。

研修の評価は受講後の「行動の変化」と「その結果(成果)」でなされるべきです。それは測定することが難しく、手間と時間がかかります。たとえどんなに苦労をしても正しく評価し、それに続く研修の内容にフィードバックしていかなければなりません。

それが研修担当者の仕事だからです。

あなたの会社の研修担当者が「研修なんて受講直後のアンケート結果がすべて。何段階評価であろうが95%が満足すれば良い」と言ったらどうでしょう?

もちろん「失格」ですよね。

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日本人の知的好奇心

2018年02月14日 | コンサルティング

 「本は読まないから、本箱は置かないの」

これは私の友人が知り合いの新居にお邪魔したときに、聞いた言葉だそうです。

友人によれば、知り合いの新居は最新式の家電や素敵な家具を取り揃え、それはまるでモデルルームのように素敵だったそうです。しかし、同時に高校生の子どもがいるのにもかかわらず、本箱がないことにも驚かされたとのことでした。

その話を聞いたのと同じころに読んだのが、教育社会学者の舞田敏彦氏による記事です。舞田氏によると、OECDの国際成人力調査(2012年)の結果から、「日本人の知的好奇心は20歳ですでに老いている」とのことです。

この調査では、日本人は学力はトップだけれど「新しいことを学ぶのが好き」という知的好奇心が極端に低く、21か国中で下から2番目(最下位は韓国)。日本人の20歳の知的好奇心は、何とスウェーデンの65歳とほぼ同じレベルとのことでした。

かなり衝撃的な結果だと思うのですが、このような結果をもたらした原因は一体何なのでしょうか。これには日本の教育制度をはじめ様々な理由がありそうですが、それを見極めるのは結構難しいのかもしれません。

それでは今後、日本の若い世代の知的好奇心を向上させるためには、どうすればよいのでしょうか。

もちろん、何に知的好奇心を持つのかは人それぞれですが、まずは「ちょっと面白そう」と興味を持つことができる選択肢を増やしていくことが必要なのではないでしょうか。「面白そう」と思える選択肢が多くなれば、それに伴い知的好奇心が刺激されるものに出会える確率も増えるわけですから。

それでは、この選択肢を増やすためにはどうすれば良いのか。

私は、そのきっかけの一つは本を読むことではないかと思います。よく言われることではありますが、本を読むということは、自ら興味を持って本の中に書かれている様々な世界にふれ、その結果自分でいろいろと物事を深く考えるきっかけになっていると私自身も感じています。ですから、特に子どもの時にこうした経験をすることが大事だと思っています。

聞くところでは、今後、小学校で新たに英語が教科となり、英語のスキルを育てること、具体的には英語によるコミュニケーション能力の基礎を養うことに主眼を置くことが検討されているそうです。

もちろん、それ自体は結構なことだとは思うのですが、でもその前に、まずは「学びたい、もっと知りたい」という知的好奇心を養うこと、それが先じゃないのと思ってしまいます。

さて、冒頭の知り合いの家ですが、高校生の子どもは実は本は読まなくても、たとえばテレビなどで興味のあることを見つけると、すぐにスマホ(ネット)でそれを検索しているそうです。

なるほど、そのスピード感はいかにも今の時代らしいなと思いましたが、同時にそれは「広く浅く」なのかもしれません。

知的好奇心という意味でも、中身をもっと深く探求したいと思うのなら、やっぱり本を読むほうがいいのではないかと思うのですが、皆さんはどのように思われますか。

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プロダクトアウトで行こう!

2018年02月11日 | コンサルティング

企業が商品の開発を行うときに、2つのアプローチがあります。プロダクトアウト(product out)とマーケットイン(market in)です。マーケティングを学ばれた方にとっては、馴染み深い言葉ではないでしょうか。

プロダクトアウトは、作り手(企業)の理論を優先させるアプローチです。「作り手が良いと思うものを作り、売る」という考え方です。一方のマーケットインは、市場のニーズを調査し、ユーザーの意見を重視するアプローチです。「市場が望むものを作り、売る」ことです。

おそらくほとんどの人は、プロダクトアウトは市場(ユーザー)のニーズを反映しないからダメで、 市場の要求をしっかりと汲み取るマーケットインで商品を作らなければならない、と考えることでしょう。

ところが、過去のヒット商品、中でも全く新しい市場をゼロから作り上げてしまうような「超メガヒット商品」の多くは、プロダクトアウトによる成果なのです。

SONYが1979年に発売した初代ウォークマンは完全にプロダクトアウトの商品です。「録音機能の無いテープレコーダーは絶対に売れない!」という社内の強い反発を当時の会長盛田昭夫氏が押し切り、初代ウォークマン「TPS-L2」を発売しました。その結果どうなったかは言うまでもありません。

1970年代の中頃から終わりにかけて、私(平野)は学生でした。もしもそのときSONYからアンケートを依頼されて、「録音はできないが軽くて持ち運びができる3万円台のヘッドホン・ステレオ」について尋ねられたら、即座に「買わない」と答えていたでしょう。

もう一つプロダクトアウトで有名なものは「コンビニのおにぎり」です。これもまた1978年にセブンイレブンの鈴木敏文会長が「売れるはずがない」という反対を押し切って発売したものです。今やセブンイレブンのおにぎりの売上は年間約800億円だそうです。コンビニのおにぎりもまた、市場調査を行っていたら発売されなかったかもしれませんね。

もちろん大失敗したプロダクトアウト商品は無数にあります。それについてはあえて触れません。

私が言いたいことは、かつての日本企業はプロダクトアウトで市場を作り切り開いてきたという事実を思い出してほしいということです。

現代のようにモノが売れない時代だからこそ、ユーザーがわくわくするような商品やサービスを見てみたいものです。

経営者のみなさん、失敗覚悟でプロダクトアウトに賭けてみてはいかがでしょう。

それこそ経営者冥利に尽きる、わくわくすることだと思いませんか。

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繰り返せば、職場の習慣や風土は変えられる

2018年02月07日 | コンサルティング

「定時で帰りにくい雰囲気の職場、残業が前提になって仕事をしている職場」を「定時で帰る職場、残業にならないように効率的な仕事の進め方をする職場」にいかにして変えていくのか」、実効性のある働き方改革の取り組みが、ますます問われるようになってきています。

国会でも審議されていますが、時間外労働の罰則付きの上限規制が来春以降始まる予定になっています。(企業規模により開始時期は異なる予定)

その影響からか、弊社でもこのテーマに関する研修やコンサルのお問い合わせをいただくことが増えています。

しかし、実際に様々な企業に伺ってみて感じるのは、これまで長期間にわたり当たり前のように残業が行われていた組織においては、罰則付きの上限規制が設けられるからといって仕事の進め方を変えようとするのは、決して簡単なことではないということです。

長年にわたり、残業をすることが当たり前というような職場の習慣や風土になってしまっているので、「仕事のやり方を変えましょう、効率よく働きましょう」と言っても、一朝一夕にはいかないのです。

そして、いざ取り組みを進めてみても、すぐに効果が実感できないと、「無理だ、できっこない」と途中で投げ出したいような気持ちになってしまうのは、ある意味では致し方ないことです。

研修などの際に、受講者がそんな気持ちになってしまったときに最近私が紹介しているのが、「ヘッブの法則」です。

カナダの心理学者のドナルドヘップは、「人間は望んでいる・いないに関わらず、何度も同じ行動を繰り返すと習慣化し、定着する」というように、人間がどのようにものごとを学習するかについての法則を示しました。

この法則を、長きにわたり残業をしている職場に当てはめてみると、本来は効率よく仕事をすれば残業せずに済むはずのものであっても、職場全体が残業前提の仕事の進め方になってしまっていて(=習慣化)、それが定着してしまっていることがわかります。

そこで、もしこの「習慣」を変えたいと思うのならば、この法則を逆に使い「残業前提の仕事という習慣に従わない」という選択をしてみるのです。「効率よく仕事を進め、残業はしない」取り組みを繰り返すことができれば、それが新しい習慣になり、やがては定着させることができるようになるとも言えるわけです。

このようにヘッブの法則をうまく活用すれば、長時間労働の解消のために効果的な仕事を進め、早く帰るという働き方改革につながり、職場の風土や文化の醸成にも役立てることができると考えられるのです。

私は今後もこれを信じて、働き方改革の一翼を担っていくつもりです。

さて、人に伝えるのであれば、先ずは自らが実践しないと説得力がありません。私自身が決めた時間に仕事を終えること、これを継続するつもりです。

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産業日本語と文化としての日本語

2018年02月04日 | コンサルティング

最近、機械翻訳の精度が上がってきています。無料で使えるGoogle翻訳でもかなり「通じる」レベルになっています。もちろん、そのまま使えるところまでには達していませんが、急速に進化していることは確かです。

コンピュータが日本語を英語に翻訳する際、大きな障害となっているのは曖昧さでしょう。日本語は主語を省いたり、曖昧な表現をしたりしても通じる言語です。むしろ、はっきりとした主語述語やストレートな表現を「美しくない」とすら思わせてしまうことがあります。

しかし、すべての日本語がそうした「美しさ」を必要としているわけではありません。私たちが日常生活や仕事で使う日本語は、言うまでもなく、美しさよりも実用的であることが求められます。

産業日本語(Technical Japanese)とは「産業・技術情報を人に理解しやすく、かつ、コンピュータ(機械)にも処理しやすく表現するための日本語」であり、まさに実用的な日本語です。産業日本語が具体的にどのようなものかは、産業日本語研究会のホームページ※を参照していただくとして、どのように使われているかを紹介します。

真っ先に挙げられるのは、マニュアルです。たとえば、機械の操作マニュアルに記載された文章は、誰が読んでもただ1つの解釈しかできないようにしなければなりません。複数の解釈ができてしまっては、深刻なトラブルが生じてしまいます。

産業日本語は簡潔で明瞭な文章ですから、外国語に翻訳をすることも容易です。品質の高い翻訳文を低コストで作成することができます。産業日本語の普及とコンピュータによる機械翻訳の進化によって、今後ますます言葉の壁が低くなっていくことでしょう。

ただし、すべての日本語が産業日本語に影響されて変わっていくわけではありません。

日本語が持つ曖昧な言葉使いや遠回しな表現は、日本の文化に深く根差しています。文化というものが、一言では表現できない曖昧さや複雑さを含んでいる概念だとすれば、日本語はまさに文化と呼ぶにふさわしい存在だと思います。

今ではすっかりメールに取って代わられましたが、若い頃友人からもらった手紙の文には、友人の個性が強く反映されていました。封筒を開け、便せんを手に取ったときに目に入ってくる文がどんなに曖昧であっても「言いたいこと」が伝わってきました。

産業日本語も、手紙に書かれた日本語も、同じ日本語です。

日本語とはなんと豊かな言葉なのでしょう!

Technical Japanese Association(産業日本語研究会)

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