中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,221話 ジェンダーの平等が進む将来はいつ来るのか

2024年06月26日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「管理職研修は男性講師に担当していただきたいと考えています」

これは私の知り合いの女性講師のAさんが、今から30年ほど前にある企業の研修担当者から告げられた言葉です。Aさんはその企業で長年マナー研修とコミュニケーション研修を担当してきた経験があるのですが、打ち合わせの中で話が管理職研修に及んだ際に冒頭の言葉を言われたそうです。Aさんが研修担当者に理由を尋ねたところ、「マナーやコミュニケーションは易しいテーマだから女性講師でも担当できるが、管理職研修は難易度が高いから女性講師には無理。そして管理職になっているのは男性だけであり、女性は管理職にはなっていない。にもかかわらず女性講師から研修を受けることは、受講者が到底受け入れらないはずだ」と言われたとのことでした。

この話をAさんから聞いたのは20年以上前のことですが、今回思い出すきっかけとなったのが、現在放映されているNHKの朝ドラ(連続テレビ小説)「虎に翼」でのやりとりでした。そこでは、主人公は日本初の女性弁護士となったものの、弁護士を探している依頼者から「弁護士は男性にお願いしたい。女性はちょっと・・・」と何度も言われてしまい、活躍する機会になかなか恵まれないという場面が描かれていました。

「虎に翼」の主人公がこうした経験をしたのは、今から80年以上も前(1940年頃)のことですが、それから50年経過した今から30年前にも先述のようにAさんも同様の経験をしていました。

さらに30年が経過した現在、はたして女性の活躍は進んだのだろうかと考えると、最近でも大学の医学部入試において女性差別があったことが報道されるなど、相変わらずの状況が残っていることは記憶に新しいところです。

そして、さらに先日(2024年6月12日)世界経済フォーラムが、世界各国の男女平等の度合いを数値化した「ジェンダーギャップ指数」2024年版報告書発表し、日本は146か国中118位だったとのことです。この順位に驚いた人も少なくないとは思いますが、日本は特に政治と経済の分野で女性の進出の遅れが際立っているとのことでした。

報道では特に議員や政府高官、それに企業の管理職に占める女性の割合は14.6%であり、各国の中では130位と「日本の重要な役職における男女格差は依然として顕著だ」と指摘されているとのことでした。日本でも女性活躍の重要性が叫ばれるようになって久しいですが、それに向けた歩みが遅々としていることが改めて顕在化したわけです。

報道の中で私が特にショックを受けたのは、現在のペースだと日本だけでなく世界全体で男女格差を解消するには134年かかることから、男女平等の実現に向けた取り組みを強化する必要性があるとしていた部分です。その実現は長く大変な道のりと言わざるを得ないと思います。

今後、日本においてジェンダー平等を実現していくためにはどうすればよいのか。その答を実現していくのにはまだまだ時間がかかるだろうと思います。たとば組織においては女性役員や管理職の登用のための目標を改めて設定して、具体的な行動計画に基づいて取り組みを進めていくしかないのだと考えます。現在は法曹界で活躍している女性も数多くいますし、私自身も女性講師として日々管理職研修を担当しているなど、歩みは遅々としているように見えるかもしれませんが、確実に前進はしているのです。

将来、2024年を振り返ったときに、当時は女性の活躍は進んでいなかったけれど「ジェンダーの平等が大きく進んだ」と言える時代が来るように、周囲に委ねるだけでなく私自身が今できることは何かを絶えず問いかけ、一つ一つの課題に取り組んで後進のための道を開く一助になるように取り組んでいきたいと考えています。

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第1,220話 アイディアが思い浮かぶタイミングとは

2024年06月19日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「ウォーキングをしていると、研究の新たな視点やアイディアが思い浮かぶことが多いので、毎日必ず歩くようにしているんです。」

これは、先日放射線によるがん治療の研究をしているある研究者が話していた言葉です。学術的な研究をしている人に限らず、多くのビジネスパーソンも仕事とは全く異なる場所やタイミングに、ちょっとしたきっかけで良いアイディアが浮かんできたなどという経験をもっているのではないでしょうか。たとえば、家のお風呂で湯船に浸かっているときや、寝床に入ってうとうとしているときなどに、突然具体的な発想やアイディアが浮かんでくるということがあります。私自身はこのひらめきのような感覚を、「目の前にアイディアが下りてくる」といった感じでとらえています。

古今東西、同じような経験をしている人の話はよく聞きますが、このように仕事から少し離れたタイミングで良いアイディアなどに恵まれるということがあるというのは、どうしてなのでしょうか。

医学的にどこまで解明されているものなのかはわかりませんが、これに関して私が思っているのは、仕事から少し距離を置くことでストレスやプレッシャーから解放され、リラックスした状態になれているということが理由の一つにあるのではないかということです。

仕事に集中し続けてこそこうしたひらめきが生まれると思いがちですが、実際には私たちはそうなるとかえって集中力が低下したり、思考が固定化されてしまったりすることが多いように感じます。

逆に、前述のような仕事を離れてリラックスできている状態では、自由にさまざまな発想を働かせることができるようになり、脳が無意識のうちに様々な情報を処理し、関連性のある情報を結びつけ「ひらめき」につながることが起こるのではないでしょうか。その意味では、この一連のプロセスは意識的にひたすら物事を考えつづけるよりも効率的であるといえるのかもしれません。

「いつでもどこでもアイディアが湯水のように沸き続ける」という人はそうそう多くはないかと思いますが、仕事に追われ余裕がないときほど、逆に意識的にいったん仕事を離れて休息を取るようにすることが必要なのかもしれません。そうすることにより、脳がリフレッシュされて集中力が回復し、再び仕事に戻ったときに新鮮な視点で課題に取り組むことができるようになります。その結果、自分でも思いがけないような新しいアイディアが目の前に現れるということになるのではないでしょうか。

しかしそうは言っても、ただ単にリフレッシュ・リラックスすれば誰でもすぐによいアイディアが浮かぶというものではないのは明らかです。もともと持っていた様々な情報が、それまではばらばらになっていたものが、あるきっかけで一つに結びつきそれが新しいアイディアになっていくわけです。そうなるための前提としては日ごろから一見仕事に直接結びつかないと思えるような情報であっても積極的にストックし、整理するなどの備えをしておくことも必要なのだと思います。

私たちビジネスパーソンは、仕事中はそれに集中することはもちろん重要なのですが、何事にもメリハリは必要です。日ごろ、物事に追われてしまい気が付いたら余裕がない状態になっていたということになりがちですが、だからこそ忙しい中でも意識的にメリハリをつけ、少しの余裕をもって物事にあたれるように心がけていきたいと考えています。

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第1,219話 研修の成果はどれくらいあるのか

2024年06月12日 | 研修

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「研修効果はもちろんあるほうが良いけれど、研修を1回やったからって、そんなにすぐ効果は出ないでしょう」

これは弊社が研修を担当させていただいている、ある企業の経営者A氏から言われた言葉です。

一般的には、経営者や研修部門の担当者も研修を行ったらすぐに効果が出ることを期待する人が多いです。研修の前と後で社員にどれくらいの変化があったか、どれくらい成長し、それが会社の売り上げや利益にどれくらい影響するのか、という点にのみ関心を持つ人が圧倒的に多い中で、この経営者はそういう意味では特別な人と言えるのかもしれません。

研修の成果はどれくらいあるのか、これは古くて新しい議論です。私が人材育成の仕事を始めた32年前には既に議論されていましたし、それ以降もずっと繰り返し議論されてきているものの、その答えはいまだに明確にはなっていないように思います。

しかしながら、できる限り研修の成果が発揮されるように発注者側(研修担当者)と研修を担う講師で議論を重ね、事前課題や事後課題を行ったりと、手を変え品を変え様々な工夫を重ねながら現在に至っているのです。

一方、私がこれまでに担当させていただいた企業の中には、たった一回の研修で社員が「変わらなかった」と言って、導入したばかりの研修を単年度で止めてしまったところもありました。一度の研修で「社員が見違えるように変わる」ことを期待したくなるという気持ちはわからなくはないのですが、特定の知識やテクニックなどを伝授するというようなケースを除けば、研修にはそこまでの即効性はないのも現実なのです。もし劇的な変化があったという場合には、その研修の中身はまさに劇薬のようなものかもしれませんし、そこで得られた効果も長続きが期待できるようなものではないのではないかと想像します。

多くの研修では、受講者自身が様々な気づきを得ること、自らが成長するきっかけとなることなどを目的に、そのためのものの見方や考え方、取り組み方などを学ぶことが一般的です。

まず、講師の講義や演習に複数人で取り組む中での受講者同士の意見交換や議論を通じ、異なる視点や経験に触れることによって、たくさんの気づきを得ることができるのです。そして、互いに触発したりされたりすることで学びあう場となり、それらを通じて自身を成長させるきっかけとなるのです。 

冒頭でご紹介したA氏は、「研修は繰り返しやらなければ意味がない」とおっしゃっています。「1日や2日話を聞いたり、演習を行ったりするだけではだめで、やり続けることだ。コストはかかるけれど、社員を育てないで会社の成長があるわけがない。だから研修はやる。そうすることが社員へのメッセージになる。うちは教育を大切にし、やり続ける会社だ。それを受け入れられないのであれば、辞めてもらって構わない」とまでおっしゃっています。

これだけのことを社員に言い続けるA氏のような覚悟を持っている方がどれくらいいらっしゃるのかはわかりませんが、研修はやり続けることが大切だという言葉を担当させていただく者として改めてしっかり受け止めさせていただくとともに、そうした企業の研修を担当させていただく機会に恵まれることに感謝し、誠心誠意務めたいと考えています。

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第1,218話 現場こそが出発点でありゴールでもある

2024年06月05日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

学生優位の「売り手市場」が続いており、計画人数通りに新入社員を採用できない企業が中小企業を中心に増えているとの報道にたびたび接します。

こうした状況の中、学生を惹きつけるために入社直後の職種や勤務地を確約する企業がここ数年相次いでいるとのことです。6月4日の朝日新聞の記事では、コース別採用を導入し入社後に経営企画や商品開発などに進むコース、企業営業などに進むコースなど、配属先によって4つのコースに分けて募集している企業が紹介されていました。

こうしたコース別採用には、学生にアピールして計画どおりに人を採りやすくする狙いがあるのだとは思いますが、その一方で応募者が集中する人気コースがある一方、応募者が少ないコースができてしまうのではないかという、新たな懸念も考えられるのではないでしょうか。

私は定期的に、入社1年目から10年くらいの若手社員の話を聞く機会があるのですが、彼らが入社時に希望していた配属先は、経営企画や商品企画を中心にマーケティングやグローバル〇〇部というように、比較的華やかなイメージの部署が圧倒的に多いのです。それらの部署は、テレビドラマなどで取り上げられることもあるため、仕事経験がない若手にとってもイメージがしやすく、同時にかっこよく見える部署だと感じられるからということのようです。

この観点からコース別採用を考えると、学生には仕事の内容が想像しにくい部署は応募者が少なくなってしまうのではないかということが心配されます。

一般的に、企業にはバリューチェーンという考え方(ある製品を世に送り出す際の一連のプロセスを価値のつながりとして捉える考え方。業務(仕事)の連鎖のこと)があります。

「購買物流」→「製造」→「出荷流通」→「販売マーケティング」→「サービス」という一連のバリューチェーンの主活動や、「全般管理」、「人事・労務管理」、「技術開発」、「調達活動」といった主活動を側面から支援する活動などです。それに関わるどの部署もなくなっては困る働きをしているわけですから、部署の間で人気に偏りが生じるのは問題です。そのように考えると、今後コース別採用を導入する企業が増加した結果、組織内の部署の人数にアンバランスが生じてしまうなどの新たな問題の発生が懸念されるのではないでしょうか。

私は、応募者数を確保するとともに、入社後に引き続き活躍してもらうためには、採用の部分だけを手厚くするのではなく、従来から多くの組織が取り入れているように、業種に限らずまずは「現場」に配属して経験を積んでもらうことが大切だと考えています。サービス業であれば顧客と接する最前線の現場に、製造業であれば製造現場などですが、直接顧客と触れあったり企業の製造現場の最前線を経験することを通して企業や組織の土台・基本を知ることができるのです。その意味で、現場こそが出発点でありゴールでもあると言ってもいいのではないかと考えています。現場で十分に経験を積んでから経営企画や商品開発などの部署で仕事をしたいと考えても遅くはないですし、より活躍ができるのではないでしょうか。

キャリア形成や成長は、配属された部署が担ってくれるものではなく、個々の日々の取り組みが未来の自分を作るということを忘れないでいただきたいと考えています。

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