中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,217話 役職定年を廃止する組織の成長とは

2024年05月29日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「役職定年」を廃止。

近年、役職定年制度を廃止した企業等に関する報道が続いています。言うまでもありませんが、役職定年とは予め定められた年齢に達した社員が部長や課長などの役職(主に管理職)から退く制度であり、大企業を中心に導入されてきました。

この役職定年制度は、大きくは若手社員の育成と人件費の抑制の2つを目的として導入されたものです。しかし制度の導入後時間が経過する中で、シニア層のモチベーションの低下、人手不足で若手社員の採用が困難になってきていること、さらに働き方をはじめとする環境の変化等により、制度の運用を見直し始めた組織が増えてきたことは、当然のことだと思います。

また、こうした動きは企業に限らず、自治体でも制度の廃止ではないものの、定年を迎えた職員を引き続き参与などの肩書で、それまでと同じ仕事を担当させるという例も増えてきているようです。こうした例も、実質的には同様の動きだと思います。

こうした動きに関して私が気になっているのは、いわゆる組織の若返り、世代交代の観点からの取り組みも同時にしっかりと進める必要があり、そこを決しておろそかにしてはいけないということです。 

役職定年を廃止し、シニア社員がそれまでと同様に管理職のポジションで同じ仕事を続ける場合、当人はモチベーションを維持できますし、安定してかつ確実な成果も期待できます。しかし、それは次にそのポジションを担っていくことになる若手社員にとっては、そうした経験を積み成長していくキャリア形成の機会が限られることになります。その結果、若手社員のモチベーションをどう維持し育成していくかが、これまで以上に大切になっていくと考えています。

そのためにも、若手社員に今後のキャリアプランを示して本人と企業で共有し、それに向けて計画的・継続的に育成を行い、シニア層からのスムースなバトンタッチができるように同時に手を打っておくこと。この観点でしっかりと取り組んでいくことが欠かせないと考えています。

同時にシニア社員にも継続して「会社がバックアップしている」「これからも成長していける」と実感できるようなキャリア開発の機会を提供することも必要です。

組織全体が成長していくために、若手社員、シニア社員の一方に力点を置くのではなく、双方にモチベーションを維持してもらえるような機会をいかに提供できるかが、今後の鍵になると考えています。

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第1,216話 自分が好きに生きられるように努力することとは

2024年05月22日 | 仕事

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「社員の異動 応募制に」

先日(2024年5月19日)の日経新聞の朝刊を読んでいたところ、この記事のタイトルが目に飛び込んできました。

記事には三井住友海上保険の人事制度(異動)の刷新について書かれていたのですが、来年4月より社員は少なくとも4年に1回、自らが希望する勤務地やポストに応募する必要があり、会社はそのポストに就くためのスキル習得も後押しするとのことです。また、全国の部支店が募集するポストや社員に求めるスキルを示し、社員は自身が習得したスキル、希望のキャリアに沿って応募することができるとありました。

このように、近年では社員が希望する部署へ配属や異動ができるような制度を設ける組織が増えています。制度の導入により社員のやる気につながり、離職を減少させるなどの効果も期待できますので、今後導入する企業がますます増えていくのではないかと考えています。

しかし、一方で人気部署に応募が集中して偏ってしまうことや、異動希望が少ない部署などは半ば人が固定されてしまい、その結果仕事が属人化してしまうことなどが懸念されるのではないかと考えます。また、最も難しいと思うのは、募集部署で必要となるスキルの示し方や応募の際の保有しているスキルのアピール方法など、制度を適切に運用するためにはクリアすべき課題もかなりあるのではないかと思います。

ところで、この記事を読んだときに私が思い出したのが、先日NHKで放送された「新プロジェクトX~挑戦者たち~ 弱小タッグが世界を変えた~カメラ付き携帯 反骨の逆転劇~」です。この番組で紹介されたうちの一人が、18歳でシャープに事務職として入社した後、独学で開発研究職にたどり着いた宮内裕正さんの話です。宮内さんは事務職から開発研究職への異動を希望するにあたり、休日にも出社してひたすら勉強し、試行錯誤を重ねて最終的にカメラ付き携帯の商品化に尽力したのだそうです。

番組の中で宮内さんが発した言葉のうち、強く印象に残っているのは「自分のゴールを設定したら、(自分が)実際何を知らないのか、何を学ばないといけないのか具体的になります。」というものです。自分が進みたいと思う方向があるのなら、まずはそこにしっかりとゴールを定めること。そうすれば、それに向かって必要となるスキルや知識が自ずと明確になるということをおっしゃっていたのだと思います。

また、宮内さんは続けて「本当に真面目に一生懸命やると、すごく意外な結果になるんです。私がそうでした。」 「好きに生きました。好きにやらせてもらいました。好きに生きられるように努力してきました。」とも話されていました。たとえ今は本来の希望とは違う仕事をしているとしても、自分がかなえたいと思う方向に向かって一生懸命に努力し続けることで、キャリアチェンジは可能になるということを示してくれている言葉だと思いました。

話は戻りますが、冒頭の記事にあったように企業をはじめとする組織内での異動はこれまでのように組織命令だけでなく、自らが選択することが可能なものに変化しつつあります。

こうした中で自分の将来は自分で選択したいと思うのなら、自分はどのような道を歩んでいきたいのか今後のキャリアプランについて考えていくこと。そしてそれが明確になったら、そのためにどのような努力をすることができるのかを自らに問いかけ、それに向かって努力し続ける強い意思がますます必要になってくるのではないかと考えています。

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第1,215話 カスハラに対して組織がとるべき対応とは

2024年05月15日 | 仕事

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最近の報道によると、厚生労働省は「カスタマーハラスメント」(以下、カスハラ)に対して、従業員を守る対策を企業に義務付けるための検討に入ったとのことです。

カスハラとは、直訳すれば「顧客による嫌がらせ」ということです。カスハラについて各種の機関が行った実態調査によれば、いずれでもカスハラの件数が著しく増加しているとの結果が示されています。

実際に、私自身もこれまでに鉄道会社の駅員や店舗で働く従業員に対して、顧客が執拗にマイナス感情をぶつけているのを何度か見たことがあります。一方的な激しい顧客の物言いを目の当たりにし、もし自分があのようにされたらどういう対応をすればよいだろうかなどと考えましたが、簡単に答えは出せないと思いました。そのように考えると、今後従業員を守るために各企業等が具体的な施策を示し取り組んでいくことは、大変重要なことであり、速やかに進めていくべきものだと考えています。

同時に、最近私自身が顧客の立場として感じるのは、結果的にカスハラを誘発してしまいかねないような、従業員による顧客への対応も少なからず見受けられるということです。

たとえば、先日私がある企業に電話で問い合わせをした際に、電話口で対応してくれた人は質問に対し即答できず、その都度「確認をしてきますので、少々お待ちください」と保留にし、結局3分以上待たされたことがありました。そうかと思うと、いきなり上司と思しき人に電話が替わり、あたかもクレームとしての対応をされそうになったということもありました。

前段のような、業務にあまり精通していない人が顧客対応にあたるケースは、ここ2~3年で急増しているように感じているのですが、それは人手が不足していることが一つの原因かもしれません。しっかりとした知識を得る前に新人が現場に出ざるを得なくなって、顧客に対応する機会が増えているのかと推測します。このようなことが続くと、顧客側にも不満が募ってしまいますから、これは担当者個人でなく組織として対応すべき問題だと考えます。

もう一つ私が気になっているのは、後段のように問い合わせをクレームやカスハラのように扱ってしまうということです。クレームは「苦情を伝えたり、回復を要求する」こと、ハラスメントは「嫌がらせ」であり、使い方やサービス情報等がわからないところや知りたいことを確認する「問い合わせ」とは明らかに異なります。顧客から少々きつい言い方をされたとしても、内容をよく聞いてみればクレームやハラスメントには当たらないケースも実は多いのではないかと思います。それを一緒くたにして対応してしまうと、別の問題が生じてしまうのではないでしょうか。

顧客対応の際には、まずは先入観を持たずにじっくりと話を聞いてみる。その際にはいやいや対応しているのではなく、真摯に話を聞くという態度(非言語)も大切だと考えています。そして、やり取りをふまえ顧客が求めていることを冷静に判断することが大切です。

カスハラは許してはいけない、組織としてきちんと対応していくべきものです。一方でカスハラか否かの判断は、セクハラなどと同様に当事者間の感じ方に大きく左右されるなどの面があります。であるからこそ、今後、行政がきちんと指針を示してどのようなケースが該当するのかをはっきりと示し、各企業はそれに従い従業員を守るための施策を考え、確実に実施していくことが大切だと考えます。

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第1,214話 孤立感をもたせないためには

2024年05月08日 | コミュニケーション

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今から半年ほど前の朝日新聞の「孤立したアリ(蟻)は短命になる (2013年10月23日)」という記事が強く印象に残っています。その記事には、孤立したアリは活性酸素が増え、それが原因で寿命が短くなったということが書かれていました。

さて、ゴールデンウィークも終わり、職場に配属された新入社員は今後本格的に仕事を覚えていくタイミングになりました。当の新入社員の中には、これから職場に馴染めるだろうか、仕事をしっかり覚えられるだろうかなどと心配をしている人も少なくないだろうと思います。一方で仕事を教える側(OJTトレーナーなど)の先輩社員や上司にも、仕事をきちんと教えられるだろうかと心配している人、しっかり育てるぞと思いを新たにしている人もいるのではないでしょうか。

それぞれの職場では、新入社員に早く仕事を覚えてもらうために様々な工夫をしていると思いますが、その中で私が重要だと考えている一つが、先述の記事にあった「孤立させない」ということです。改めて「孤立」と言う言葉を辞書で調べてみたところ「他とかけはなれてそれだけであること。ただ一人で助けのないこと」(広辞苑)とあります。これを職場で考えると、新入社員に全く関心を示さない、気にかけることがないなどにより、周囲からの助けがない状態に置かない。そして何より、そのような雰囲気を作らないということが大切になると考えます。

職場で上司や先輩社員をはじめ大勢の人がいるのにもかかわらず、自身への関心が示されず、困っているときにも助けてもらえない。また、周囲が絶えず「忙しいオーラ」を出して周囲の人に話しかけにくい、質問をしにくいような雰囲気があると、新入社員にとっては周囲の人たちに話しかけようとするハードルが高くなってしまいます。その結果孤立感はどんどん深まっていってしまうのではないでしょうか。

それを防ぐためには、職場においては積極的に周囲に話しやすい雰囲気を作るように心がけることが大切です。具体的な取り組みとして仕事時間中に質問の有無にかかわらずディスカッションタイムを設けること、新人とOJTトレーナーの組み合わせのみならず、様々な組み合わせで、双方向のやりとりができるようなフリーディスカッション時間を設けるなどから始めてみてはいかがでしょうか。もちろん、その際には聞き手は話し手の話に対して頷くなどの関心を示したり、タイミングよく反応したりすることが大切なことであるのは言うまでもありません。

そして、先述の記事の終わりには「今後、社会的な関わりが生き物の健康を左右することを、アリを使って解明していきたい」とも書かれていました。このように職場で孤立をさせない、職場での良好な雰囲気や人間関係を作っていくということは、新入社員だけでなく職場のすべての人の健康にも関わる重要な問題だと考えています。社員が心身ともに健康で働くことができるようにするためにさらに職場でできることがないのか、改めてこの機会に見直してみてはいかがでしょうか。

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