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「高野を呼べ」
これは、落語家の立川志の輔さんが出演している「志の輔らくご in PARCO 2025」の中の演目「神子原米」で、何度も繰り返される台詞です。
この「高野」さんとは、石川県羽咋市にある宇宙博物館「コスモアイル羽咋」が建設された当時、羽咋市の臨時職員だった人です。その当時から報道で紹介されることがあったため、私もそれを通じて高野さんの名前は知ってはいましたが、「ガッツのある職員なんだな」という程度の認識しかありませんでした。しかし、志の輔さんの噺の中で、高野さんは「コスモアイル羽咋」を作っただけでなく、同市の神子原地区で産出した米(神子原米)をローマ法王へ献上するなど、常人離れとも言えるような行動力をもっていらっしゃることが紹介され、一気に興味を持ったのです。
そうしたこともあり、この度「高野誠鮮『ローマ法王に米を食べさせた男』」講談社を読んでみました。高野さんは、超過疎高齢化が問題となっていた石川県神子原地区を盛り上げたいと考え、年間予算60万円でプロジェクトに着手したのです。神子原米のブランド化を目的に、何の伝手もないところからスタートし、神子原米を日本人ではないローマ法王へ献上することにより一気に神子原米をブランド化し、Iターンの若者を誘致したり、農家経営の直売所「神子の里」を開設したり農家の収入を増やすなどにより、4年後には「限界集落」からの脱却に成功したのです。
本の中では「自分たちに足りないものは行動する力である」と考え、まず行動することから始めたことが紹介されています。役所内で会議を100回以上も開いたり、何百ページにわたる計画書を作ったりするだけでは何も変わらない。そこで高野さんは、地域活性化のための5か年計画をA3で1枚の計画書にとりまとめ、行動を開始したのです。
しかし当初、周囲の人達は計画を無謀と捉えており、何度も上司や市長などの反感や怒りを買い、度々冒頭の「高野を呼べ」というように呼びだされ説教をされたそうです。しかしどんなに説教をされても、高野さんは行動することを止めることはなかったのだそうです。
私たちは日々様々な構想を練ったり、今後ありたい姿を思い描いたりはしても、なかなか一歩を踏み出せないなど、具体的な行動を起こせないことが少なくありません。一説では、研修で得た知識などに基づいて実際に行動に移せる人は2割ほどであり、その中で成果を出せる人はさらに2割位だと言われています。
そのように考えると、高野さんの行動力は群を抜いていると言えるわけです。高野さんは構想を練る際には成功した人ではなく、失敗した人の話を聴きに行くなどして情報収集したそうです。前例のないことをやろうとしているからこそ、成功した話を聴くより失敗した人から話を聴くことでその経験を生かして、同じ轍を踏まないように考えたのです。この点も高野さんならではだと思いますので、私が印象に残ったところの一つです。
周囲がどのように考えているかを気にせず、できない理由を一切探さず、結果が出るまでやり続ける。このことがどれだけ大変なことであるかは言うまでもないことです。私も、いきなり高野さんのようにはなれないでしょうが、せっかく年初に高野さんの話を聴く機会をえたわけですから、少しでもあやかりたいと思っています。同時に担当させていただく研修の中でも、その重要性を伝えていきたいと考えています。
冒頭の話に戻ると、志の輔さんは昨年末、20年ぶりに高野さんと会ったそうで、この神子原米という演目は志の輔さんが能登半島地地震の復興へのエールを込めて創った噺とのことですが、終演時には冒頭の写真の「神子原米」をお土産にいただきました。
そういえば、志の輔さんと高野さんは同い年だそうですが、お二人は行動力をはじめ共通するものがあるように感じています。