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中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,258話 具体的な行動を起こせる人と起こせない人

2025年03月26日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「高野を呼べ」

これは、落語家の立川志の輔さんが出演している「志の輔らくご in PARCO 2025」の中の演目「神子原米」で、何度も繰り返される台詞です。

この「高野」さんとは、石川県羽咋市にある宇宙博物館「コスモアイル羽咋」が建設された当時、羽咋市の臨時職員だった人です。その当時から報道で紹介されることがあったため、私もそれを通じて高野さんの名前は知ってはいましたが、「ガッツのある職員なんだな」という程度の認識しかありませんでした。しかし、志の輔さんの噺の中で、高野さんは「コスモアイル羽咋」を作っただけでなく、同市の神子原地区で産出した米(神子原米)をローマ法王へ献上するなど、常人離れとも言えるような行動力をもっていらっしゃることが紹介され、一気に興味を持ったのです。

そうしたこともあり、この度「高野誠鮮『ローマ法王に米を食べさせた男』」講談社を読んでみました。高野さんは、超過疎高齢化が問題となっていた石川県神子原地区を盛り上げたいと考え、年間予算60万円でプロジェクトに着手したのです。神子原米のブランド化を目的に、何の伝手もないところからスタートし、神子原米を日本人ではないローマ法王へ献上することにより一気に神子原米をブランド化し、Iターンの若者を誘致したり、農家経営の直売所「神子の里」を開設したり農家の収入を増やすなどにより、4年後には「限界集落」からの脱却に成功したのです。

本の中では「自分たちに足りないものは行動する力である」と考え、まず行動することから始めたことが紹介されています。役所内で会議を100回以上も開いたり、何百ページにわたる計画書を作ったりするだけでは何も変わらない。そこで高野さんは、地域活性化のための5か年計画をA3で1枚の計画書にとりまとめ、行動を開始したのです。

しかし当初、周囲の人達は計画を無謀と捉えており、何度も上司や市長などの反感や怒りを買い、度々冒頭の「高野を呼べ」というように呼びだされ説教をされたそうです。しかしどんなに説教をされても、高野さんは行動することを止めることはなかったのだそうです。

私たちは日々様々な構想を練ったり、今後ありたい姿を思い描いたりはしても、なかなか一歩を踏み出せないなど、具体的な行動を起こせないことが少なくありません。一説では、研修で得た知識などに基づいて実際に行動に移せる人は2割ほどであり、その中で成果を出せる人はさらに2割位だと言われています。

そのように考えると、高野さんの行動力は群を抜いていると言えるわけです。高野さんは構想を練る際には成功した人ではなく、失敗した人の話を聴きに行くなどして情報収集したそうです。前例のないことをやろうとしているからこそ、成功した話を聴くより失敗した人から話を聴くことでその経験を生かして、同じ轍を踏まないように考えたのです。この点も高野さんならではだと思いますので、私が印象に残ったところの一つです。

周囲がどのように考えているかを気にせず、できない理由を一切探さず、結果が出るまでやり続ける。このことがどれだけ大変なことであるかは言うまでもないことです。私も、いきなり高野さんのようにはなれないでしょうが、せっかく年初に高野さんの話を聴く機会をえたわけですから、少しでもあやかりたいと思っています。同時に担当させていただく研修の中でも、その重要性を伝えていきたいと考えています。

冒頭の話に戻ると、志の輔さんは昨年末、20年ぶりに高野さんと会ったそうで、この神子原米という演目は志の輔さんが能登半島地地震の復興へのエールを込めて創った噺とのことですが、終演時には冒頭の写真の「神子原米」をお土産にいただきました。

そういえば、志の輔さんと高野さんは同い年だそうですが、お二人は行動力をはじめ共通するものがあるように感じています。

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第1,257話 〇〇と思われたら嫌じゃないですか

2025年03月19日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「〇〇と思われたら嫌じゃないですか」

これは、弊社が担当させていただく研修の中で受講者に職場の問題などを語っていただく際に聞くことが多いフレーズの一つです。

この言葉の背景には、「本当はこのように考えているのだけれど、それを伝えたら相手に自分の思いとは違った捉え方をされてしまうかもしれない。嫌われたくない」という感情があるのかもしれません。つまり、相手の反応を過度に心配するあまり、本当は困っているにも関わらず相手に対する働きかけを行うことはせずに、自分の感情を収めてしまっているのではないでしょうか。そして、それによって本来は取るべき対応等を取らないということになってしまっているケースもあるのかもしれません。

こうしたことから、研修でこのような発言を聞いた際には、私から「自分の正直な気持ちを相手に伝えてみたらいかがでしょう」と声をかけることがあるのですが、ご本人の中ではその点を変える気持ちはあまりないようで、「〇〇と思われたら嫌じゃないですか」と繰り返す人が少なくないように感じています。

これに関して、先日NHKのEテレで放送されている「最後の講義」に、脚本家の大石静さんが出演されていました。改めて言うまでもないことではありますが、大石さんは脚本家として数々のヒット作を書かれています。その大石さんが番組の中でおっしゃっていたことが、前述の話の解決のヒントになるのではないかと感じました。

大石さんは「まずは自分が面白いと思うことが、絶対に大事。世の中に合わせない方がいい。周りの人の目はどうでもいい。その強さがないと、周りにこう思われるかもしれない、周りがこう反応するかもしれないと思っていたら、内なる素敵なことも出てこない。周りの反応にビビリながら生きている時代だから、自分の内側を見つめてみる」とおっしゃっていました。

私はこれを聞いて、人がどのように感じるかよりも、まず自分自身としてどのようにしたいと考えているのかを明確にすることが大切だということをおっしゃっていたのだと思いました。

人とは通常は他者との関りの中で生きているものだと思います。それゆえに、多かれ少なかれ他者の反応が気になるというのは当然のことですが、「他者がどのように思うのか」を基準にして物事を考えていたら、自分の気持ちがどんどん窮屈になって息苦しくなってしまい、やがては仕事も人生も面白くなくなってしまうのではないでしょうか。

この点で私自身が最近改めて思うのは、「人は、自分が思うほどには自分に関心を持ってはいない」ということです。「こういうことを言ったら、〇〇と思われるのではないか」と一方的に心配をすることは、実は自意識過剰になってしまっているということが、案外少なくないのかもしれません。

他者との関係性の中で自分の考えや希望を後回しにしたり遠慮したりして、過度に他者を優先することは、必ずしも良い結果を生むとは限りません。

「他者がどのように思うのか」を考えることよりも、まずは「自分はどうしたいのか」という自身の気持ちを正直に見つめ、その上で「どのようにすれば相手の理解を得られるのか」というスタンスで臨んでみてはいかがでしょうか。

大石静さんも、「〇〇でなければならないから逃れること、殻を破ること。真実は道徳や常識を超えたところにある」言っています。

さすがに深い言葉だと感じ入りました。

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第1,256話 センスを身に着けるためには

2025年03月12日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「『火鉢太鼓』は元々五代目古今亭志ん生が始めた噺なんです。その古今亭のネタを立川流が教えてもらうにあたり、元々の「半鐘はおジャンになる」というオチを(今の人は半鐘を知らないので)音(ネ)と値(ネ)にしているんです。ここはセンスですね。」

先日、噺家の立川晴の輔さんの独演会に行ったのですが、そこで演じられた落語「火炎太鼓」のオチについて、噺を終えた後に晴の輔さんがこのように紹介してくれました。ウィキペディアによると、「火鉢太鼓」は五代目古今亭志ん生が昭和初期に多量のくすぐりを入れるなどして、志ん生の新作といってもよい程に仕立て直し現在の形になったとのことですが、立川流が演じさせてもらうにあたってオチを変えたことを(面白おかしく?)「センス」と表現していました。

昨年まさに「晴れて」笑点の大喜利メンバーになった立川晴の輔さん。今回初めて晴の輔さんの古典落語を生で聴く機会を得たのですが、噂どおり実に歯切れがよく笑点に出演しているときの回答とはまた違った魅力があり、まさにセンスがある方(上から目線な表現ですが)だと感じました。

ところでこの「センス」という言葉、日常でもよく使う言葉ですが、改めて広辞苑を引いてみると「物事の微妙な感じをさとる働き。 感覚。 思慮、分別」とあります。よく「センスがある・ない」というような言い方をしますが、単に美的感覚が優れているというだけでなく、仕事においても様々な場面で使われることも多くあります。自分はどの面でセンスがあるのかということは案外と自身では分からないものなのかもしれません。しかし、センスを身につけたいと思うのであれば自分はどのような部分についてセンスを身につけ発揮したいと思うのか、その点を明確にして追い求めていくことが大切ではないかと思います。このように、私はセンスとは生まれついて持ち合わせている才能とは異なり、経験の積み重ねや訓練を重ねるなどの努力をすることで身に着けることができるものではないかと考えています。

では、自分の仕事に関して「センス」を身につけたいと思った場合、どのようなことから始めればよいのでしょうか。ありきたりかもしれませんが、まずは自分の現在の状況がどのようなものなのかを冷静に見つめて、自分の弱点や足りない点を洗い出すこと。次にそれを踏まえて「どうすればもっと良くできるのか」を考えること。そして、解決に向けたトライ&エラーを続けるということがやはり王道であり、特効薬はないと言えるのではないでしょうか。

晴の輔さんも、毎回「笑点」で司会の春風亭昇太さんから出されるお題に対して、いつもセンスある答えをし続けるために、様々なことに目を向けるとともに「もっとおもしろい答えを」「もっとお客に受けてもらえるように」と絶えず追求し続けていらっしゃるのではないかと思います。

それにしても晴の輔さんは落語はもちろんのこと、その前の「つかみ」でもテンポよく面白おかしく笑点関連などのネタをはじめとして話して、観客を引き込んでいらっしゃいました。私も晴の輔さんのようなセンスを身につけるため、とりあえず扇子を持ってみようかな。お後がよろしいようで。
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第1,255話 無自覚にパワハラを繰り返す人には

2025年03月05日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「パワハラを見聞きしたことはありません」

これは、弊社がある組織の管理職昇任試験の面接官を担当させていただいた際に、受験者の一人であるA氏が発した言葉です。

管理職昇任試験面接では、職場のコンプライアンスやハラスメントについて質問することがありますが、A氏ははっきりと「パワハラはありません」と返答したのです。しかし、その組織の人からの情報によると、当のA氏は部下を呼びつけて目の前に立たせ、小一時間にわたって小言を言うことが定期的にあるということなのです。過去に何度かそのようなことがあったため、社内の研修に加えて上司からも度々A氏に対して個別に指導を行ってきているそうですが、残念ながら一向に改善されないということです。

ハラスメントには様々なものがありますが、その中でも様々な組織において繰り返されるパワーハラスメント(以下パワハラ)が、広く世の中で問題として認知されるようになってから、既に30年ほどが経過しています。この間、厚労省でもパワハラを定義するとともに該当する具体的な言動等を6つの類型により示すなど取組んできていますが、それでも根絶することは難しいのが現状です。現に、労働基準局の令和5(2023)年の精神障害における労災の支給決定件数の中で、パワハラ(上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃を受けた)にかかるものは、289件と前年よりも32件増加しています。

様々な取組みが行われている状況にもかかわらず、パワハラを根絶することが難しいのはなぜなのでしょうか。

その理由は様々かと思いますが、私が考えるにはそもそもパワハラの加害者は自身の言動に無自覚であり、また自身のストレスの発散なども要因となって、比較的従順な部下に矛先が向いてしまっているのかもしれません。そのためか、これまでA氏は職場を異動させたとしても、必ず新たな標的を見つけ攻撃してしまうことが繰り返されてきているのだそうです。

A氏自身は実務能力は高いということであり、面接の中でも理路整然と受け答えができるため、前述の情報がなければパワハラを繰り返す人とは私自身想像がつきませんでした。

パワハラは許されない行為であり、A氏のように無自覚なままパワハラを繰り返すことを続けると被害者への影響はもちろんのこと、A氏自身(加害者)にも不利益が生じることになります。具体的には、キャリアの中断(異動)になったり、懲戒処分や法的責任制裁を受けたりするなどもありえます。

またその職場にとっても、パワハラが行われることでパワハラを直接受けている人のみならず、周囲の人も次は自分がターゲットにされてしまうかもしれないと不安を感じるなどにより、職場の風土が悪化することになりかねません。

さらには、その組織全体にとっても問題を解決するまでの時間や労力がかかるのはもちろんのこと、対応次第では法的な責任(安全配慮義務違反等)に問われることも考えられます。そして、こうしたことで組織のイメージが悪くなってしまい、たとえば新たに人を採用しようとしても難しくなるといった状況を招いてしまうかもしれません。

言うまでもなく、パワハラは絶対に許してはいけない行為です。A氏のように無自覚にパワハラを繰り返す人には、単に指摘するだけでなく適切な指導の仕方を具体的に示すとともに、組織全体としても「パワハラは許さない、断固として対応していく」という強いメッセージを発信し続けることが必要だと考えています。

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