四季・めぐりめぐりて

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塙保己一の生家(埼玉県本庄市)

2020年06月02日 | 史跡・遺跡・文化財


名 称:塙保己一旧宅(はなわほきいちきゅうたく)
年 代:江戸中期
構 造:茅葺木像2階建
指 定:国指定史跡(名称:塙保己一旧宅 昭和19年(1944)11月13日指定)
所在地:埼玉県本庄市児玉町保木野325 (旧児玉郡児玉町)

江戸時代の国学者塙保己一の生家を訪ねてみました。史跡名や説明板では「旧宅」と称されていま
すが、「生家」の方がしっくりするような気がしますので、あえてタイトルは「塙保己一生家」と
しました。
塙保己一は、近代日本経済の父と評される渋沢栄一、近代日本における最初の女性医師荻野吟子と
ともに、埼玉県が生んだ三偉人の一人とされています。
塙は師の雨富須賀一の本姓を用いたもので、荻野(おぎの)氏の出自です。

渋沢栄一は、保己一が編さん『群書類従』の版木17,000以上を社団法人温故学会が所蔵管理してい
ますが、渋沢栄一は、この温故学会の設立にも関わっています。
また、日本最初の公認女性医師である荻野吟子は、明治初期には女性医師の前例が無いと門戸を閉
ざされていました。しかし、塙保己一 が出版した「令義解」(りょうのぎげ)の「医疾令」(いし
つりょ)」の中に「女医」の記述があり、そこには女性の医師についての規定があったのです。
これが、「日本にも女性の医師がいた」という吟子の主張の根拠となったのです。
このように、三人が単に埼玉出身ということではなく、このような繋がりもあったわけです




塙保己一旧宅説明板

塙保己一旧宅  昭和19年11月13日  国指定史跡
塙保己一は、延享3年(1746年)5月5日武蔵国児玉郡保木野村(現在の児玉町大字保木野)に生
まれる。7歳にして失明し、15歳のとき江戸へ出て、雨宮検校の弟子になり、先生の許しを得て
学問の勉強をしました。生来の記憶力のよさと努力により、賀茂真淵らのよき学者に指導を受け、
国学を研究し、寛政5年(1793)に幕府に申し出て、和学講談所を創立し、安永8年(1779)から
40年間かけて群書類従を編さん刊行するなど、学問上多大な貢献をし、文政4年(1821)総検校
となり、この年9月12日76歳で亡くなりました。この旧宅は、保己一が生誕し幼時を過ごした
もので、茅葺き二階建てで、向かって左側に田字形の部屋、右側に土間、厩(現物置)等があり、
後世に若干の増築や補修の箇所があるもののよく当時の姿を残しています。  
                平成2年3月吉日  
                        埼玉県教育委員会  児玉町教育委員会




塙保己一の生家(旧宅)は、保己一の弟・卯右衛門の子孫が現住しており、家屋・敷地内には入れ
ませんが、庭と畑の間から家屋を見ることはでき、間取り図が付記された説明板が設置されていま
す(下の写真)




国指定史跡 塙保己一旧宅  昭和19年11月13日指定

 塙保己一旧宅(母屋)は、父卯兵衛の代に建てられたと伝えられるところから、その建築年代は
保己一が生まれた延享3年(1746)より幾分遡るものと考えられる。この旧宅の古い形態は、桁行
7間半、梁行4間の茅葺きの入母屋造りであり、3室広間型の平面形をもつ江戸中期の上層農家の
形態を窺うことのできる建築物として貴重である。




生家の裏手西側にある『塙保己一公園』




塙保己一公園の駐車場わきに設置の看板




『塙先生 百年祭記念碑』

【碑陽】
題額:横書2行で      塙 先 生
            百年祭記念碑
碑文:縦書 (省略)
    大正十一年九月十二日
             正三位勲一等子爵 澁澤榮一            題額
             東京帝国大学名誉教授従三位勲二等文学博士 芳賀矢一 撰
             御歌所寄人正五位勲四等 坂 正臣          書
                                 児玉町 伊藤仁作 刻
【碑陰】
    大正十二年四月十二日
     贈正四位塙保己一先生遺蹟保存会建之




塙先生百年蔡記念碑について




『塙保己一墓』
塙保己一の本来の墓は、東京・四谷の愛染院にあるとのことで、元は同じ四谷の安楽寺に埋葬され
たそうです。生家近くにあるこの墓は、四谷の安楽寺の墳墓の土を生家の荻野家が持ち帰って先祖
累代の墓地に碑を建てて慰霊したのが始まりで、その後、明治44年に従来の位置に移転したとされ
ています。更に平成24年に現在の場所に移転されました。

墓碑には次のように印刻されています。

 和學院殿心眼智光大居士
 うき島か原にて
 言の葉のおよはぬ身には目に見ぬも
 なかなかよしや雪のふしの嶺 保己一

散策日:令和元年(2019)5月25日(土)