本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

ロイ!?

2016-07-19 18:15:34 | 住職の活動日記

お経というか、お参りの作法の中に

カタカナで「ロイ」とか「十寸」という

言葉が出てきます。

まあ、略字というか

普通の人が読んでも

分からないようにしたものか

独特の略字があるのです。

 

「ロイ」と書いて

「口伝」ということです。

「伝」という字の「云」を略して

カタカナで「ロイ」と書いてあります。

口伝ということですから、

ここは師匠に直々に口伝えに

聞いてくださいよ!

ということです。

 

また、

仏教用語はいちいち書くと難しく

筆記していくうえで

独自の略し方をしたのです。

「十寸」ということも

一見何のことやらと思いますが、

これが「本尊」ということです。

本の中の「十」だけをとり

尊の下の部分の「寸」だけを

抜き出したのです。

 

お寺の名前でも

醍醐寺という醍醐も難しく

「酉酉」と略して書いています。

「菩薩」もよく出てきますので

簡単にクサカンムリを二つ重ねて

表し、

その二つ重ねたクサカンムリの

横に「、」点をつけて菩提と

略したのです。

講義を聞くときにこうやって書くと

とても時間短縮になります。

 

カタカナももともとはお坊さんの

講義を聞く中で暗黙の了解として

字を簡略化したことから

生まれたともいわれています。

 

それとは別に

真言宗は密教ともいわれるように

一般の誤解を避けるために

あえて、「ロイ」口伝ということが

重んじられたのでしょう。

昔の歌に、お経というものは

「寝乱れ髪にさも似たり

結うに結われず、解くに説かれず」

と表現されたように、

「言うに言われず、説くに説かれず」

と、かけて表現し、

そこにむつかしい問題が残ります。

 

「言わなければ分からないし、

言えば誤解して受け取る」

般若心経にもあるように

「一切顛倒」(いっさいてんどう)

と、

仏さまの目から見たら

私たちは逆さまになっている

ということなのでしょう。

そこに、言わなければ分からんし

言えば誤解するという

ことがあって、

説く方も慎重になって

誤解を防ぐ意味を込めて

「ロイ」ということにしたのかもしれません。

 

しかしもっと考えてみると

玄奘三蔵が訳したお経に

「解深密経」というものがあります。

特に唯識を勉強するときには

とても大切な経典です。

を解くという意味でしょう。

何も隠しているということが

秘密ということではなく

秘密ということは表現が不完全である

ということも言えます。

ここでいう「密教」は

「不了義経」といわれ

本当のことを説かれた教えは

「了義経」といわれています。

私たちに解るように説いたために

まだ道理を完全に説いていない

ということで「不了義経」と

いわれるのです。

 

仏さまの悟りの内容は

いわく言い難く表現できない

ということで、

出来ないものは不完全である

ということで「不了義経」といったのでしょう。

そこのところを説いていく

ということで、

「解深密教」という経典が

とても大切になってきたということです。

 

「ロイ」とあえて言ったのも

深密なる教えを説くということで

筆舌に尽くしがたい

そういう意味合いもあって

こういう表現をしたのでしょう。

口伝として、

いわく言い難い教えを説く

ということは、そこに

師匠の力量が問われるところでしょう。

 

まあ、仏教には

面白い表現もあるものです。

 

 

 

 

 

 

 

コメント (2)
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