兄へ

2014-10-23 12:47:12 | 日常
兄が亡くなった。
肺ガンだった。
昨年(2013年)に書いたブログより・・
昨日(9月30日)鹿島遠征から帰ってきた。
今回は4泊5日の遠征だった。

実はこの遠征の目的は鹿島戦ではなく
余命宣告された長兄に会うことだった。
もちろんその事は本人も家族も周りも知っている。
入院はしていないものの、手術は不可能ということだった。

9月27日午後7時過ぎ、病院から帰って来た兄と会った。
夕方まで点滴をしていたということだった。
声やしゃべり方は変わっていないが
顔を見るとむくんでいるためか3年前に会ったときとは別人のようになっていた。

『薬のせいで髪が無くなったよ』
と笑いながら話す兄を見ていると、胸が締め付けられる思いだった。

この兄とは喧嘩をした記憶もなければ怒られた記憶もない。
逆に親に怒られたときには私をかばってくれたし、私の味方になってくれた。

兄弟4人の中でも特に気が合い、大分に帰って来たときは飲みに行ったり、カラオケに行ったり、釣りに行ったりとよく遊んだものだった。
別れるとき『生きて会えるのはこれが最期かもしれない』と思うと涙が止まらなかった。
言葉が出てこなかった。
ただただ黙って手をにぎった。暖かい昔の兄の温もりだった。



この1年間、兄と連絡をとり、甥(兄の子)とも常に連絡をして変化があれば何時でもいいから知らせてくれるようにお願いしていた。
亡くなる1週間前まで元気な声だった。
しかしこのとき体は痛みで限界にきていたのだろう。

甥から父が亡くなりましたと連絡があった。
覚悟はしていたが現実感がまったく無かった。
涙が出なかった。
嫁にもそのことを告げた。
義姉宅に行っても遺影を見てもろうそくに火を灯しても何も感情がわかなかった。

そのとき、嫁が予約していたホテルをキャンセルして「銚子のホテル」をとった。
翌日、犬吠埼に行った。
銚子の海が見える。
「なぜここに来たかわかる?」嫁が言った。
「お兄さんいつもこの海に釣りに来てるって言ってたよね」
「あなたと釣りに行きたいって言ってたよね」
そう言って海に向かって手を合わせた。
嫁が突然ここに来たいと言った訳がやっとわかった。

くちびるが震えた。
涙が出た。
子供のように声をあげた。
兄が亡くなったと聞いて初めて涙が出た。
あとからあとから溢れて止まらなかった。

「また、どこかで釣りに行こうな」
兄にお別れした。





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