名残の夏大根。

八百屋のおばちゃんが「夏大根、そろそろ終わりだよ～」と言っていたので、買った。

生物学上で何が違うか分からぬが、夏の大根と冬の大根では味が違うのは確かだと思っている。夏のそれは味や香りが鮮烈で、冬は優しくふくよかな味がする。

ので、最後と聞けば食べておかねばと思う。

辛味のある大根は煮る（茹でる）より炒めた方が良いと、本で読んだんだったか、裏のおばあちゃんが言ってたんだったか、神のお告げがあったんだったか、ってことで炒り煮と相成った。

豚細切れを使って。
生姜とともに炒めた肉がこれまた良く、酒に合うのだった。

あ、大根が主役だった。しゃきっと辛い大根は甘辛く煮詰めてもその素材感を失うことなく美味。辛さの奥にそこはかとなく漂う苦味が、まさに夏の名残を感じさるひと品となった。


例年なら今月下旬には、里でも初雪があり、冬が来るねえなんて言ってるうちに11月が来て、今年も終盤だねなんて言ってるうちに街はすっかり雪景色になって…

なんて、旬の名残は何かしら心をしんみりさせる味がするのである。