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“男のためのガーデニング”改め

金勝山(旧信楽道)の「泣き地蔵」~滋賀県栗東市荒張~

2021-05-22 13:00:13 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 金勝山(こんぜやま)は、「金粛菩薩」こと東大寺の開山・良弁ゆかりの霊地とされ、金勝山を含めた竜王山・鶏冠山・阿星山・飯道山の山系は湖南仏教圏として栄えたといいます。
また金勝山には摩崖仏や巨石群が数多く残り、奈良から京都東部、湖南地方を経て三重県伊賀方面へと続く「石の文化」の道の中にある地といえます。

金勝山は標高567mの低山でありますが、“こんな所へは、二度とはこんぜ(金勝)と人はいったという”と白洲正子さんは「かくれ里」に書かれているほど険しい山だったようです。
道の駅「こんぜの里りっとう」から林道を進んだところに「泣き地蔵」という阿弥陀如来・釈迦如来・薬師如来の3仏が彫られた摩崖仏があると聞き、金勝山を訪れることになりました。



「泣き地蔵」がある峠は、栗東側から信楽側に抜ける旧信楽道にあり、旅人を泣かせるほどの坂であったといいます。
現在は道路が整備されており、かつて峠最大の難所だったとされた頃の姿を想像できないほどあっさりと到着してしまいます。



林道から階段を降りていくと開けた場所に出て、すぐに「泣き地蔵」が見えてきます。
周辺はよく整備されているのですが、近年まで草や笹が多い茂って埋もれた状態だったそうでしたが、「栗東ふぁざ~ず倶楽部」(退職された方々の同行会)の提案によって整備されたようです。
整備が行き届いたおかげで埋もれていた摩崖仏に出会えるようになったのは、ありがたいことです。



「泣き地蔵」は、幕末にあたる1865年に真海と性隋という2人の僧が、峠を越えていく通行人の道中の安全を祈願して建立したとされます。
この「泣き地蔵」摩崖仏には花崗岩(高さ2.8m、幅4.4m)の巨石に「阿弥陀如来」「釈迦如来」「薬師如来」の三尊が並んで彫られており、刻銘もはっきりと残る。



安全祈願の摩崖仏ですから、道沿いにあったのかと思って道の先を探してみましたが、その先は草が茂っていて道があったようで、なかったようで...といった雰囲気。
当日は金勝山へ登られる方々を何組かお見かけしましたが、ここを歩いていかれた痕跡は見当たらず、もうこの峠道を行く人はないようです。



さて、摩崖仏の正面へ行ってみると、風化が少なくくっきりと仏が残っていることに驚きます。
それというのもこの摩崖仏は1865年に彫られたもので時は江戸時代の最末期。
近代化の始まった時代に山中を歩く旅人の安全祈願で摩崖仏を彫ったというのもある種の違和感を感じますが、それだけ中央と地方では進む時間の速度が違ったということなのでしょう。





「泣き地蔵」を真近で見ると、顔や衣にはほぼ欠損は見られず、光背の梵字もくっきりと残っている。
蓮華座もはっきり残っているのは、やはり150年という摩崖仏にしては短い時間によるものか、草や笹に覆われていて風化から守られていたのか。



三尊は同じような通肩の衣を着ておられますので、薬壺を持った「薬師如来」以外は解説板がないと見分けがつきません。
光背の梵字が読めれば何か分かるのでしょうけど、そもそも梵字は読めないし意味も分からない。
向かって左が阿弥陀定印を結んだ「阿弥陀如来」。



中央には法界定印を結んだ「釈迦如来」で、一番右が薬壺を両手で持った「薬師如来」。
「泣き地蔵」と名が付くにも関わらず、釈迦・阿弥陀・薬師の三尊となっているのも霊山ゆえの信仰なのかもしれない。





「泣き地蔵」の阿弥陀如来の左側には銘刻がはっきりと残り、「元治二 乙丑年 建立之 真海 性随」とある。
銘刻もきれいに残っていますね。



「泣き地蔵」からもと来た道を戻る途中に視界が広がっている場所がありました。
おっ琵琶湖かと思いましたが、金勝山から琵琶湖がこんな近くに見えるはずはありません。
おそらく野洲川なんだろうと思います。



「泣き地蔵」はまさしく草や笹や竹に埋もれていた史跡だったのを、「栗東ふぁざ~ず倶楽部」の方々の手によって階段や参道が整備され、忘れられつつあった史跡を拝むことが出来るようになりました。
整備されたのは2014年春のことで今も整備を続けられているといいますから、“もうこんぜ(金勝)”といわれる金勝山にあって手軽に立ち寄れる史跡ということになります。



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