僕はびわ湖のカイツブリ

滋賀県の風景・野鳥・蝶・花などの自然をメインに何でもありです。
“男のためのガーデニング”改め

ハッチョウトンボをパチリ!~山室湿原~

2024-07-20 14:08:08 | 花と蝶とトンボと昆虫
 米原市に「山室湿原」、別名「箕作(みつくり)湿原」という湿原があり、ハッチョウトンボが見られるとのことでしたので初めて訪れてみました。
山室湿原は2万年~2万5千年前に姉川が山東盆地を南流していた時に小沢が封鎖されて形成したと推定されています。

2万5千年前は氷河期末期となり、湿原植物の他に湿原が寒冷期に成立したこともあって寒地性植物も生育しているといいます。
現地までうまく辿り着けるか心配でしたが、見やすい所に看板があり、迷うことなく到着出来ました。



山室湿原に駐車場としてはありませんが、道路脇に3台くらい車が停められる場所があり、そこから田圃道を10分ほど歩きます。
程なく入口が見えてきて、鉄柵から中に入るのですが、初めての場所で他には誰も来ていないのでちょっと不安を感じつつ鉄柵の中に入ります。



少し先に山室湿原の鉄柵があり、どうやらここからが湿原への入口のようです。
山登りで木道のある湿地を歩くことがありますが、山室湿原は木道の下はほぼ湿地かぬかるみなので歩きは要注意です。



木道は安定してはいるものの、余裕があるほどの巾はないため、よろめいたら足はドボンです。
足だけならまぁ辛抱できますが、カメラごと転落したら...被害が怖ろしいので足元&バランスに気を配ります。



好きではないシダに覆われた木道もあります。
足元の木道では何度も現れるトカゲの姿に一瞬ヒヤヒヤしたり、蜘蛛の巣がやたらと多くてかわしつつも顔面直撃は数度に及びます。
汗で濡れた顔に蜘蛛の糸がネトネトと纏わりついてとても気持ちが悪い。



落ちたら泥まみれという場所もあり、木道と低い段を渡っていくのでアスレティックにきた気分になります。
一応一回りしたのですが、花もトンボも見つからない。復路でもう一度探してみます。



湿原のところで小さな赤いものが動くのが見えたのでじくり見てみたらハッチョウトンボがいた!
初見ですが、想像以上に小さい。
ハッチョウトンボは日本一小さなトンボで世界的にも最小の部類に属するトンボとされています。



留まったらあまり動かないのは良いけど、小さすぎてピント合わせに苦労します。
しかも足元が木道で安定していないのでカメラが揺れる。最後は木道に座り込んで撮りました。



体長20mmほどですので5円玉よりも小さく、その付近には計3匹のハッチョウトンボ♂の姿がありました。
真っ赤なトンボということではショウジョウトンボもいますが、実際に見ると見間違う可能性がゼロに等しい位に大きさが違います。



下は帰りに別の場所で見かけたショウジョウトンボです。
裸眼では細かいところまで見えませんが、写真だとサイズ以外にも違いが確認出来ます。



次はコオニヤンマと思われる個体を発見!
同定ミスをしているかもしれませんが、トンボって結構識別に悩んだりするんですよね。





トンボは他にはオオシオカラトンボとシオカラトンボくらいだったでしょうか。
イトトンボの仲間がいたかもしれないが、しっかり見ていませんでした。



花はちょうど端境期だったのでしょうか。小さな白い花(ミカヅキグサ?)が一部に咲いていたのみ。
しかし、今シーズンまだ見ていなかったネジバナを発見!2カ所で咲いていました。



木道を行ったり来たりしている間中、まぁとにかくどんだけ蜘蛛の巣が張ってるんや!といった感じで悩まされました。
下のような蜘蛛の巣にはさすがに引っ掛からなかったけど、直撃していたら大変でした。



帰り道の何ヶ所かでオニユリが咲いているのを見かけました。
オニユリが咲き出したらもう夏ですね。




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やまなみ工房『岡本俊雄』展~湖のスコーレ~

2024-07-15 19:17:17 | アート・ライブ・読書
 『アールブリュット』は本来は「正規の美術教育を受けていない人による芸術」の意ですが、日本では障がい者の表現手段として受け入れられています。
生の芸術と呼ばれるアールブリュットは、伝統や流行・教育などに左右されず自身の内側から湧きあがる衝動のままに表現した芸術ともされます。

長浜市の黒壁ストリートにある商業施設の“湖のスコーレ”では定期的に「やまなみ工房」の作家による美術展が開催されており、作品の販売もされています。
今回の美術展では岡元俊雄さんという墨汁と割り箸1本のみを使用して人物画を中心に描画される作家さんの作品展となります。



写真で紹介される岡元俊雄さんの描画スタイルは、肩肘を付いて寝転びながら描く独特のスタイルで、その絵は荒々しく力感のある絵です。
人物の眼差しは絵を観るこちらを見つめるような視線で、その視線の先から何かを問いかけているのか?はたまた何かを伝えようとしているのか?



展示された絵の9枚は「男の人」というタイトルが付いており、「女の人」が2枚、「イス」が1枚でもう1枚は「デビィッド・ボウイ」の絵です。
展示室の西面の壁には「男の人-Man-」の絵が展示されており、対面の東面の奥には「女の人-Woman-」が展示されて対を成している。


「男の人-Man-」2022

YouTubeに公開されている制作風景を見ると、まず細い線で目・鼻・口や顔の輪郭を描き、その後に墨を塗り重ねていくようで、飛んだ墨の飛沫も絵の一部になっています。
涅槃像のように半身の状態で横になっていて、よく絵のバランスがとれるものだなぁとも思いますが、手の届く位置は墨が塗り重ねられて色が濃くなっているようにも見えます。


「女の人-Woman-」2021

岡元さんは甲賀市の「やまなみ工房」に所属されていますが、集団生活が苦手なため作品倉庫を専用のアトリエにしてもらって作品作りをされているといいます。
絵を描きながら物思いに耽ったり、放心したように仰向けになって転がったりと、自分だけのアトリエで自由な時間を過ごされているようです。


「男の人-Man-」2018 「イス-Chair-」2012

絵を年代に沿って見直してみると、基本の表現は同じでも、少しづつ描き方が変わってきているようにも見えます。
下の絵は重ね塗られた部分が多く、闇に包まれた人間の目だけがこちらに視線を送ってきているような作品です。


「男の人-Man-」2022 「男の人-Man-」2020 

今回の展示会では2枚だけ出品されている「女の人」です。
岡元さんは工房の見学者の中にお気に入りの女性を見つけると、途端に赤ん坊のような笑顔になったりもするようです。


「女の人-Woman-」2021

岡元さんは絵を描く時にお気に入りの音楽を聴きながら描かれるそうですが、今回唯一名前のある人物がデビィッド・ボウイです。
アールブリュットの作家さんでデビィッド・ボウイをモチーフにされる方がおられますが、ボウイを見ていると描きたい衝動が湧いてくるのかもしれませんね。


「デビィッド・ボウイ」2018

アールブリュットの作家の方は、作品が完成した時のイメージで描かれているのか、その時その時の感覚で描いておられるのでしょうか。
完成すると、塗りたくったような絵に見えて実は刺戟を感じる絵になっていたりするので、観る方の受け取り方の自由さという面白さがあります。


「男の人-Man-」2021 「男の人-Man-」2020 

余談になりますが、お中元用の洋菓子を「たねや」さんに買いに行った処、「アート×和菓子 Limited Edition2024」と題する商品がありました。
「やまなみ工房」と「たねや」のコラボ商品のシリーズがあり、福祉とアートと商品が一体化するPJは滋賀県ならではの良さを感じます。


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バンテリンドーム中日vs阪神戦~乱打戦にて阪神敗れる~

2024-07-14 17:55:55 | 風景・イベント・グルメ
 バンテリンドームでの中日vs阪神を観戦に行きましたが、貧打線とされる中日も阪神も両軍共に安打が飛び交う試合となりました。
何度か“これでもう勝った!”と確信したにも関わらず、最後は祈るような気持ちも通じず敗戦となり、ガックリと肩を落として帰ることに...。
この試合では打てない阪神の姿はなかったものの、自慢の投手力が崩れて最後は打ち負けたというよりも投壊で負けたような試合です。



観衆は発表によると36294人とあり、総客席数が36,398席ですので超満員の観客動員数です。
従って入場チェックも長蛇の列となり、中日が攻撃時の三塁側のトイレには長い列が出来ていました。



阪神のオーダーは中日の先発が右の涌井(初回だけ投げてアクシデントで退場)だったこともあって阪神打線には左バッターがずらりと並びます。
1番はライトの島田。5打数1安打で打点1なのでまぁまぁかな。



2番はセカンド中野で3番はセンター近本。
二人とも四球は1個づつ選んだもののヒットはなしで、少しバットは湿っておりましたが、守備は手堅い。





三者凡退に初回を抑えられて、阪神の先発は伊藤将司。
好投を期待しておりましたが、結果は3回6安打自責点5と残念な結果となりました。



5対2とリードされた4回の阪神の攻撃では、ヒットで出た島田の後、2アウトを取られたが前川・大山が連続四球で満塁。
この日は前川も大山もマルチ安打で調子が良さそう。若い前川は将来が楽しみですね。





2アウト満塁から坂本の会心のレフト前安打で1点追加。
ここで代打は直球破壊王子こと渡邉諒が登場。打ち返した打球はセンター前ヒットになり2者生還。
これで5対5の同点に追い付いて逆転ムードが高まってきます。





4回裏から登板した富田は13球で三者凡退。
流れは確実に阪神にきていますよ。



5回表の阪神の攻撃は近本が四球で出塁したところで4番の佐藤輝。
長打を期待して動画を回していたが、結果はセカンドゴロでゲッツー。



しかし諦めるのはまだ早い。前川の内野安打に続いて大山が申告敬遠で2アウト満塁のチャンス。
ここで打席には小幡。中日のピッチャーは左の斎藤ですが、ここは小幡に頑張ってもらうしかない。



小幡は期待に応えて右中間を破る3ベースヒット!
この時は偶然動画を撮っていましたのでバッティグと1塁からの坂本の激走とスライディング。
内野外野の大盛り上がりの六甲おろしまで撮れました。



試合は8対5で阪神リード。
得意の継投でつないで9回まで抑えられると誰もが思い始めた5回裏、漆原が大乱調。
続いてマウンドにあがった浜地も打たれて一挙5失点で10対8と逆転されてしまいます。

6回は猛虎打線が鳴りを潜めて3者凡退。7回は前川のヒット以外は3三振と意気消沈。
7回から登板した及川と8回の石井が好投して押さえてくれましたので、9回の攻撃に期待です。





9回表、先頭のサトテル三振の後、前川がエラーで出塁。続く大山のライト前で1アウト2・3塁。
さぁ~ここで切り札の原口が登場です。
原口はライトフライでタッチアップで1点かと思いきや...3塁コーチャーの判断はストップです。



殊勲の3塁打を含むマルチ安打の小幡はあえなく三振でゲームセット。
点の取り合いで面白い試合でしたが、両軍合わせて24安打で阪神も11安打の8点ですから珍しく打つ方は良かった試合でした。
途中までアルコールは飲まなかったのですが、最後はさすがに売り子さんを呼び止めて飲まずにはいられなくなる。



翌14日の試合は9回まで1対1の同点で、その1点は両チーム共にピッチャーのヒットで得点したようです。
延長戦となった10回表、猛虎打線が爆発して一挙5点をあげる大爆発です。

これで決まったと誰もが思った10回裏、1点返されて尚ランナー2・3塁で、最後は岩崎まで投入しての勝ち。
今年の阪神は相手チームの粘りもあって簡単には勝たせてもらえないですね。


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蓮の花とトンボの仲間たちをパチリ!

2024-07-08 18:35:00 | 花と蝶とトンボと昆虫
 2016年の夏に草津市の烏丸半島のハスの大群生が消滅して久しいですが、湖北では「早崎ビオトープ」や「奥びわスポーツの森」のハスの群生も消滅してしまいました。
今は延勝寺地先の琵琶湖岸に群生や西池などに群生がありますが、以前と比べるとハスの花を目にする機会が減ったのは寂しい限りです。

とはいえ夏の水辺を彩るのはやはり「ハスの花」ということで、トンボ探しを兼ねて花見へと出掛けました。
ハスの花や蕾に留まるトンボを探していると、久しぶりになるウチワヤンマを発見!うまい具合にハスの蕾に留まってくれました。



コシアキトンボも何頭か飛んでおり、シオカラトンボと縄張り争いをしていて落ち着いたところに留まってくれません。
♂は体に白い部分があり、♀はその部分が黄色いんですが、コシアキトンボの♀ってすぐに離れたところへ飛んで行ってしまいます。



チョウトンボは今が盛りなんでしょうか。とても数が多い。
メタリックな光沢のある翅が美しく、ヒラヒラと蝶のように舞うトンボで、身近なトンボの仲間としては異質なやつです。





燃えるような真っ赤な体を持つのはショウジョウトンボ。
「猩猩」という酒を好む中国の想像上の動物が赤い毛に覆われている姿を名の由来とするトンボだとされています。



目の前や地面によく留まってくれるのはシオカラトンボ(♂)でした。
シオカラトンボは♂♀で色合いが全く違うトンボで、見た目が随分と異なります。





同じシオカラトンボと名が付くトンボでも“オオ”が付いてオオシオカラトンボになると別種のトンボになります。
全身が濃いブルーをしていて、名の通りシオカラトンボより大きいトンボです。



ということでハスの花ですが、咲いているかどうか不安だったものの、かなりの数のハスの花が開花しておりました。
ハスの種類や陽当たり等で花期は違う感じはしましたが、一通りのハスが開花しており、まずは一重で純白の花を咲かしているハスからです。



次も一重のハスで、中央の白から外に向けてピンクのグラディエーションが綺麗なハスです。
ハス池でよく見かける大賀ハスよりも花弁は小さく、色も淡い色をしています。



八重で花弁の多い少し変わったハスもあります。
同じハスでも一重と八重では全く違った花のように見えます。



花弁の先端部だけがピンクのハスには魅かれるものがあります。
ハスは蜂の巣のような形状の花托の部分が、花期の間は黄色く花の美しさを引き出してくれます。



同じく中央が白で外輪がピンク色のハスも八重だとまた違った味わいがあります。
ハスは交配しやすいとされていますので沢山の品種があるとされますが、花びらの数や色や大きさなどかなりバリエーションが豊かです。



ハスの花を見ていると夏到来という感覚になりますが、ハスの花見もトンボ探しも夢中になってやっていると汗だくになります。
まだ煩い蝉の鳴き声が聞こえてこず、夏はこれからとなりますので、無理しない程度に外遊びをしたいですね。




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キュビスム展―美の革命ピカソ、ブラックからドローネ、シャガールへ ~京セラ美術館~

2024-07-04 05:50:00 | アート・ライブ・読書
 京都市左京区岡崎の京セラ美術館で開催されている「キュビスム展」の終了日が近づいてきましたので、平安神宮の大鳥居の横にある京セラ美術館を訪れました。
「京セラ美術館」は元は「京都市美術館」の名で知られており、2020年のリニューアルに伴って京セラが命名権を取得して現在の名前になったようです。

訪れるのは「京セラ美術館」になってからは初めてで、「京都市美術館」時代の「ルネ・マグリット展」以来になります。
今回のキュビスム展は、全14章に構成された約112点の作品が展示され、日本では50年ぶりとなる大規模なキュビズム展と紹介されています。



京セラ美術館は、1933年に開館したという現存する日本の公立美術館では最古の建築物で、帝冠様式という和洋折衷の建築様式の建物です。
外装はクラシックな造りとなっており、内装は西洋のお城の内装ような見事さです。





「キュビズム以前 その源流」ではポール・セザンヌの「4人の水浴の女たち」などキュビズムに影響を与えたとされる作家の作品が展示されている。
セザンヌはモネやルノワールと印象派で活動していたとされますが、グループを離れて伝統的な絵画の約束事にとらわれない独自の絵画様式を探求したとされます。
そういったセザンヌの試みはブラックやピカソに影響を与え、後に「セザンヌ的キュビズム」と呼びいる作品につながっていくという。


ポール・セザンヌ「4人の水浴の女たち」

新しい表現の可能性を見出そうとしたパブロ・ピカソやアンドレ・ドランはアフリカやオセアニアの造形物に美的価値観を見出したといいます。
この時代の前衛芸術家たちが伝統的な規範に挑戦するための拠り所として「プリミティヴィスム」に影響を受けたというのは実に興味深い話です。


ヨンベあるいはウォヨの呪物(コンゴ民主共和国)


ダンの競走用の仮面(コートジボワール)

アフリカやオセアニアの造形物に影響を受けたピカソがプリミティヴィスムに影響を受けたとされる作品が「女性の胸像」とされます。
仮面のような顔のラインと突き出した鼻。
伝統的な西洋画の域を逸脱した作品ですが、ピカソにしてはまだ青青の時代や薔薇色の時代からキュビズムに移行し始めた頃の作品のようです。


ピカソ「女性の胸像」

ピカソと共にキュビズムを牽引したというジョルジュ・ブラックは“私たちはザイルで結ばれた登山者のようでした”と結びつきの深さを語ったといいます。
初期キュビズムと呼ばれる時代は、セザンヌやプリミティヴィスムの影響を受けていたといい、ブラックも「大きな裸婦」という作品を残しています。


ジョルジュ・ブラック「大きな裸婦」

キュビズムはこの後、「分析的キュビスム」や「総合的キュビスム」と呼ばれる時代に入ります。
作品はどんどんと抽象画化していき実験的な手法へと変わっていきますが、その時代のピカソとブラックの作品は見分けが付かない状態になります。


パブロ・ピカソ「肘掛け椅子に座る女性」


ジョルジュ・ブラック「ギターを持つ男性」

キュビズムは、新しい表現を求める若いっ芸術家たちの間に瞬く間に広がり、多くの追随者を生んだといいます。
その中からフェルナン・レジェとフアン・グリスの二人はキュビズムの発展に欠かすことのできない芸術家とされます。


フェルナン・レジェ「形態のコントラスト」


フアン・グリス「ヴァイオリンとグラス」

アポリネールによって「オルフェウス的(詩的)キュビズム」の発明者と呼ばれたのはロベール・ドローネーとソニア・ドローネーの夫妻。
異質な要素を同一画面に統合する「同時主義」という手法は、古代(三美神)と現代(エッフェル塔)が同一画面に登場する「パリ市」に顕著に表れています。


ロベール・ドローネー「パリ市」

第8章の「デュシャン兄弟とピュトー・グループ」ではニューヨーク・ダダの中心人物のマルセル・デュシャンの作品が出てきます。
ダダは、既成の秩序や常識に対する否定・攻撃・破壊といった思想を特徴とし、同時多発的かつ相互影響を受けながら発生した芸術運動です。
ダダイズムはヨーロッパやアメリカではっせいしますが、根底には意味のない芸術とするのは第一次世界大戦によるニヒリズムがあるといいます。


マルセル・デュシャン「チェスをする人たち」

同じ章にフランシス・ピカビアの作品があり、聞いたことのある名前だなぁと思っていたが、この方は横尾忠則さんが「芸術の父」として憧れてきた作家でした。
おそらくは横尾忠則関係の本かなんかで読んで記憶の片隅に残っていたのだと思います。


フランシス・ピカビア「赤い木」

この辺りから黄金比・非ユークリッド幾何学・四次元の概念・運動の生理学分析とキュビズムを理論的に結び付けようとする理論が出てきます。
理論や概念的に観る近代美術には正直ついていけない部分があり、その難解さに悩まされますが、美術は結局はその作品が好きか嫌いかの判断でいいのだと思います。


マルク・シャガール「ロシアとロバとその他のものに」

モンパルナスの習合アトリエ「ラ・リュッシュ(蜂の巣)」にはフランス以外の国から若く貧しい芸術家が集い、キュビズムを吸収しながら独自の前衛的表現を確立していったとされます。
その中には当時のロシア(ベラルーシ)から来たマルク・シャガールやイタリア人のアメデオ・モディリアーニなどがいたといいます。


アメデオ・モディリアーニ「女性の頭部」

20世紀初頭のロシアにはフランスのキュビズムとイタリア未来派が同時期に紹介され「立体未来主義」として展開したといいます。
ロシア・アヴァンギャルドの画家ミハイル・ラリオーノフの「散歩:大通りのヴィーナス」は最近見たアールブリュットの作家の作品のように見えて驚きました。


ミハイル・ラリオーノフ「散歩:大通りのヴィーナス」

第一次世界大戦によってダダイズムが芽生えたのと同様に、フランス人芸術家の多くが前線に送られ、キュビズムに大きな影響を与えます。
ピカソは非交戦国のスペイン出身だったため戦地には行かず、大戦中のキュビズムを担ったといいます。


パブロ・ピカソ「若い女性の肖像」

キュビズムを代表する作家は大戦後、「秩序への回帰」と呼ばれる保守的風潮によって、複雑で実験的な試みを避け、伝統的な技法の絵画に変わっていったようです。
ピカソも同様に「新古典主義の時代」に移行していったといい、その後「シュルレアリスムの時代」を経て、ナチスドイツを非難する「ゲルニカ」へと続いて行きます。
下は写実的な人物像と並行して制作が続けられたピカソのキュビズム絵画の1点だという。


パブロ・ピカソ「輪を持つ少女」

新しい表現方法を見出そうとする考えと、その時代の時代背景や世相などに影響を受けながらアートが発展してきた系譜が垣間見えるような美術展でした。
湧き出るように同時多発的にムーヴメントが発生するなんてことは、今後も有り得るのか何てことを考えてしまいます。


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ササユリを求めて繖山に登る!

2024-06-27 06:30:30 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 ササユリは日本特産のユリ科の植物で、10~15cmの大きな花を咲かせ、葉は笹のように見えることからその名の由来になっているといいます。
花期は6月初旬から下旬にかけてとなりますが、近年ササユリは減少してきていると言われます。

森林の伐採がされなくなり光が当たらなくなって苗の成長に影響しているといいますが、鹿が増えて保護していても鹿の食害にあうことも多いといいます。
繖山には鹿はいないようですので鹿の食害はないものの、人が花を摘んだり、根っこから掘り起こして持ち帰る人もいるとのことで保護している人を悩ましているとか。



ササユリは安土町側の「近江風土記の丘」から繖山の山頂手前の辺り、地獄越から雨宮龍神社の辺りにありそうだと当たりを付ける。
北腰越から繖山山頂を目指すものの、30℃を超える猛暑日の上に、無風で湿度が高く、吹き出す汗に心が折れ、繖山山頂までのピストンに予定変更。

このコースには西国三十三観音霊場の石仏が祀られた「石仏の道」があり、番外札所・結願の華厳寺から始まり、霊場を第一番まで遡っていきます。
道は途中で繖山の山頂方向と桑実寺方向に分岐し、第二十六番の一乗寺より番号の若い札所は桑実寺への道に続いて行きます。



登り始めてすぐの所にある鳥居には2躰の「子授け地蔵」が祀られており、後方には「海上安全」と彫られた石の祠があります。
麓には西の湖があり、かつては内湖が広がっていたと想像されますので、湖上(海上)の安全を祈念したのではないでしょうか。





石仏は西国三十三観音霊場の石仏以外の仏もあります。
大きく立派な石仏は三尊石仏を祀り、光背には7躰の化仏を造られた年代などは分かりませんが、立派な石仏です。



当方の西国三十三観音巡礼は札所32寺と番外札所3寺を巡礼を済ましましたが、第27番札所の圓教寺だけが未参拝となっています。
予定していた時にコロナが蔓延して見送ったままになっており、いまだ結願出来ていませんので、取り合えず石仏にだけお参りする。



繖山に登る道は複数ありますが、どこも木段が続いて距離以上にしんどく感じ、歩きながら花を探すのが気休めになります。
最初に見つけた花はオカトラノオで、ちょっとした群生になっていました。



白い5弁花の花はノイバラでしょうか。(違うような気もする)
見分けるポイントが分かると同定出来るようになるのですが、ポイントが分からないと誤った同定をしてしまいますね。



数は少なかったものの、これも季節の花のコアジサイが咲いていました。
同じ季節でも山が違うと開花のスピードがかなり違うのが興味深いところです。



登山道の途中からササユリを見かけるようになり、この日の時点では満開もしくはいくつか蕾のものがあり、ちょうど見頃という感じでした。
最初に出会ったのは白いササユリで、ササユリは支柱で固定されていましたので誰かお世話されている方がおられるようです。



このルート上のササユリはシロバナが多かったのですが、薄ピンクの花もあります。
まだ蕾ながらも赤味のあるものがありましたので、咲けばピンク色の花を咲かせるのかと思います。



ササユリのトリオは花盛りの三姉妹のように見えます。
このトリオが咲いていた場所には群生のようにササユリがいくつも咲いていました。



ここまでいくつもの木段を登ってきましたが、山頂が近づくと木段の傾斜がきつくなり、汗が吹き出してきます。
頬をつたった汗が道に落ちるのが分かるようなサウナ状態でしたので、登るのは山頂までとし、その先の地獄越~雨宮龍神社への縦走は諦めることにします。



つい2週間前にもやってきた繖山の山頂(433m)に到着。
岩の上に腰かけてやっと休憩です。



タッチしないけど三角点もパチリ!
1時間足らずで山頂まで来れる山ですが、猛暑日の低山の暑さはこれからの季節は難敵ですね。



山頂を少し下ったところに景色の広がっている場所がありました。
眼下には西の湖、その手間には安土山があり、西の湖の奥には八幡山や長命寺山。
湖東側の山の蔭になって霞んでいますので琵琶湖は見えませんが、奥にある高い山脈は武奈ヶ岳など比良の山々でしょう。



下山して脇道を安土城考古博物館に向かって歩いていると、タイサンボクの大きな群生地があり、沢山の大きな花を咲かせていました。
最初はホオノキかと思いましたが、花は「タイサンボク」といい、モクレン科の常緑高木で北米南東部原産でアメリカ合衆国東南部を象徴する花木だといいます。



今の季節は街角や家の庭などでもアジサイの花が咲いているのを見かけますが、次は蓮や睡蓮やヒツジグサなど水辺の花がにぎやかになってくるのでしょう。
ホオノキやタイサンボクの大きな花を見ていると、蓮の大きな花を連想してしまいますね。


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小倉 宗 個展「禿カムロ KAMURO」~ギャラリーからころ~

2024-06-23 19:30:30 | アート・ライブ・読書
 小倉 宗さんから個展のポストカードを送って頂いておりましたので、大阪は高槻市にある「ギャラリーからころ」へ作品を見に訪れました。
小倉さんの作品を見るのは昨秋に開催されたアート・イン・ナガハマ(通称AIN)以来のことですから約8カ月ぶり。
また、AINで最初に小倉さんの存在を知ったのは2007年のことですから、17年来のファンになります。

これまで10数枚の絵画と4枚の銅版画と絵本の「じゃんけん戦争: あっちの国こっちの国」を所有していますが、欲しくなる作品が次々と生み出されてくるので終わらない。
あっそうそう!小倉さん直筆の当方の似顔絵なんていうウルトラ・レアな絵もありますよ。



これまでも個展の情報を入手することがありましたが、如何せん遠くでの開催が多くて中々行けないのですが、高槻市くらいならと足を延ばしました。
ビルの1Fにある「ギャラリーからころ」へ一歩足を踏み入れると、四方に色彩豊かな小倉作品が展示され、オグラ・ワールドが広がる。
会場内では大きな黒い犬がウロウロと歩いていて、ギャラリーだけどアットホーム感もあります。



入って右側の壁には8枚の絵が展示され、ユミンや卑弥呼や鳥、大津絵をモチーフにした絵が並びます。
昔の小倉さんの作品にあった怖い感じや尖がった感じの絵はすっかり消えて、穏やかで優しく愛情に溢れた作品が並びます。



入口の対面の壁には2枚の絵が展示されていて、テーマになっている「鳥」はこの何年かよく見る題材で、「禿」は最近の題材のようです。
断片的にしか見てはいませんが、かれこれ17年も同じ作家さんの絵を見ていると、色使いや描きたい絵の変遷が何となくだけど分かるような気がします。



ギャラリースペースの左側お壁には、大津絵の鬼の念仏が2枚と赤い鶏冠の鶏の絵が2枚。
特に一番右の絵は伊藤若冲の鶏図を意識したかのような大きな作品で目を引きます。



入口側の壁には5点(写真は4点)の絵が並び、それぞれテーマは違うようです。
禿・ペンダント・ペア・(ギター)などが登場しますが、時刻はいつもルナティックな三日月の出る夜です。



「まどろみ」という絵はネットで見た時に“愛情と優しさに満ちた絵”だなぁと魅力を感じていた絵で、やっと実物を見ることが出来ました。
オグラ・オレンジを背景に空にはクレセント ムーン。まどろむ2人はまるで母親が小さな子供と優しい時間を過ごしているかのようです。



「禿ユミン」は遊女見習いの童女が花魁になったような絵です。
今回の個展では花魁の姿をしたユミンや女性の絵が他にもありました。
個展のタイトルが「禿カムロ KAMURO」ですので、「禿」が新しいテーマになってきたようですね。



若冲を連想させる大作「ふたり」は真っ赤な鶏冠に雄雌で色分けされた羽色が綺麗です。
背景のグラディエーションが鶏の派手さを引き立たせていますね。



「ギャラリーからころ」に「ぶらっくほーる」という絵本が売ってあり、文が霰雫 霙(あらずくみぞれ)さん、絵が小倉宗さんですのでさっそく購入しました。
霰雫 霙さんの文は、稲垣足穂の世界観を思い起こさせる言葉が並び、タルホの宇宙的感性とでも呼べるようなファンタジー世界が描かれます。
夜のレストランにやって来た男が水晶や月や星の飲み物や料理を平らげていく独特の別世界観です。



小倉さんの絵は「じゃんけん戦争: あっちの国こっちの国」の頃のスタイルの絵で描かれている感じです。
霰雫 霙さんの文がとても良く、霰雫さんの文と小倉さんの絵の相乗効果で別世界への扉が開かれます。



「禿カムロ KAMURO」展は四方全てに絵が展示された明るい雰囲気のギャラリーで、今回の展示作品は色合いが明るい作品が多かったことあって華やかな個展でした。
個展で展示された作品のうち、どの作品が秋のアート・イン・ナガハマで見られるでしょうか?楽しみですね。
尚、「ギャラリーからころ」では7/14~20に開催される『もちよってん♡わたしの好きな○○〇♡』にも小倉さんの作品が出展されるそうです。


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山門水源の森でササユリが咲き誇る!

2024-06-21 07:22:22 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 ササユリの花期が始まり、今年はどこへササユリを見に行こうか迷ってしまう季節がやってきました。
昨年は複数の山でササユリに遭遇することが出来ましたが、今年は確実にササユリに出会える場所として「山門水源の森」を訪れることにしました。

山門水源の森では最初に入山届代わりの来訪者名簿に記帳して説明を聞きますが、驚いたのは熊出没注意の看板と定点カメラのリアルな熊の出没写真でした。
入口にある事務所では熊鈴が売られていましたので、熊に会ったらどうしようと少し心配になるものの、来客者が多いので熊は出てこないだろうと思うことにする。
また、コースが3時間コース、3.5時間コースと長く、ちょっとした散策コースと想像していたのとは大違いだったのも事前の調査不足。



「やまかど森の楽舎」という事務所の周辺は花盛りとなっており、この日歩いた「四季の森コース」の前半部はササユリとコアジサイが多かった。
コース入口には大きく育ったヤマボウシがあり、白い花を付けています。
ヤマボウシは道中に何本か見かけますが、大きく育った木が多かったですね。



薄ピンクの花被片をしたササユリをまず最初にパチリ!
横に写っている虫は何でしょう?同定できませんがジョウカイボンの仲間のようにも見えます。



白いササユリが2輪並んで咲いています。
ササユリは大きめの花を咲かすにも関わらず茎が非常に細く、よくあの細さで支えられるなと思います。



コアジサイも青っぽい花と白い花がありますが、青い花の方に魅かれてしまいます。
コアジサイはあちこちで咲いていて、見たこともないような大きな群生地もあり、山門水源の森の自然の豊かさに驚きます。



道はアップダウンが多く、時には木段を登ったり、九十九折の道やトラバース道もあります。
後で気が付いたのですが、もらったパンフレットには“軽登山以上の装備で入山してください。”の注意書きがありました。



最初は沢道を進むことになり、水音が響く中、清流の涼しい風が気持ち良い。
これだけ自然に恵まれた場所ですが、ウグイスの声は聞こえていたものの、他の野鳥の声はあまり聞き取れなかった。
早朝から来ていれば野鳥にも出会えたかもしれませんね。



あれっ?ここは赤坂山の堰堤を越えた所なの?と思えるような沢道です。
山門水源の森の道は、軽く歩ける散策道でなくてほとんど登山道でした。



沢道で見つけた花は、紫色の小さな花を付けたタツナソウ。(だと思う)
他にも小さな花を咲かしている植物はあったものの、小さいのと日陰だったこともあってピントが合わず撮れませんでした。



コアジサイは今度は白い花で。
今の季節に山登りすると、よく見かける花で標高の違いで開花状態が違っていたりするのも山歩きの楽しさのひとつです。



ササユリも咲いていましたよ。
左が薄ピンクで、右が白。どっちの花色が好きですか?



ニガナも黄色い小さな花を咲かせています。
花に詳しい人なら、もっといろいろな花を見つけられるのでしょうけど、まぁ花の経験と知識の習得はこれからですね。



コースは沢道コースから湿原コースに入ると、山と湿原の自然に囲まれた場所に圧倒されてしまいます。
見える山が何という山か分からないものの、もう少し北にある深坂峠を越えると福井県ですから、県境近くに位置するのかと思います。



山門湿原に沿って歩く道は木道になっており、木道がなければ歩くのを躊躇われるような道なので整備されているのはありがたい。
この辺りまではササユリに鹿除けネットが張られていて、ササユリは保全されているが、この先は鹿の食害でササユリはまばらになる。



南分岐に辿り着き、フルコースになる「ブナの森コース」へ進むか、「四季の森コース」に進むか迷うが、花がなくなってきたので四季の森へと進みます。
四季の森コースは同じ山でもこれだけ植生が違うのかと驚くほど花は見かけず、アップダウンの道が続きます。



道中、ひたすら探していたのはギンリョウソウで、すくっと立ち上がったギンリョウソウは見つけられなかったものの、2カ所でギンリョウソウを発見。
ギンリョウソウは光合成はやめてしまい、菌類から栄養を奪って生きていて(菌従属栄養植物)、その姿から別名ユウレイタケと呼ばれます。



よく写真などで見るギンリョウソウは複数のギンリョウソウが茎を立てている姿が多いですが、これらは倒れたような姿です。
とないえ、枯葉に埋もれそうになっている中から2つ見つけることの出来たのは運が良かった。



山門水源の森で子供の頃によく遊んだという人に聞いた話では、夏に昆虫採集に行くとカブトムシがバケツ一杯取れたとのこと。
見た昆虫の中で唯一撮れたのはヒョウモンエダシャク(多分)で、白黒の豹紋と後翅の淡黄色の綺麗なシャクガの仲間です。



では、ここからはこの日の目的だったササユリ特集です。
ササユリの咲く山はいくつか見ましたが、山門水源の森のササユリの数の多さには驚くばかりでした。



花色も濃いのやら白いのやら中間的なのやらですが、色の濃い順に並べました。
最初はピンクの濃いやつ、次に中間的な薄いピンク、最後は白花のササユリです。

↓ ピンクの濃いササユリ


↓ 中間的な色合いのササユリ


↓ 白いササユリ


ササユリは花の状態のいいもの、花期が終わりかけているもの、まだ蕾でこれから開花しようとしている奴などありました。
数が圧倒的に多かったので、今シーズン分のササユリを堪能しつつも、別の山でササユリに出会ったらまた嬉しくなるのでしょうね。
おまけは山門水源の森の近くにある「雨下り(あめさがり)の滝」です。10mほどの滝なので通り過ぎてしまうような滝です。




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黒河峠から三国山の山頂へ~サラサドウダンにやっと会えた!~

2024-06-15 15:30:30 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 山と渓谷社により「花の百名山」に選ばれていて「花の山」として人気の高い赤坂山では5月中旬から6月中旬にかけてドウダンツツジの季節になります。
山系には紅色の花が釣鐘のように咲くベニドウダンと、基部が淡黄色で先端が淡紅色で縦に紅色の筋が入るサラサドウダンが咲きます。

赤坂山の麓にあるマキノ高原の「温泉さらさ」はサラサドウダンに因んで名前が付けられるほど当地に根付いた花です。
実際のところ、赤坂山にはベニドウダンは沢山咲いているものの、サラサドウダンは三国山の方に多く群生しています。



三国山方面には赤坂山の山頂から明王の禿を経由して行くことになりますが、ピストンだとかなり距離があります。
そこで今回は黒河峠から三国山に登ってサラサドウダンを探しに訪れました。



黒河峠は県道533号線から林道に入り、舗装道が途切れる辺りに車を停めて、登山口まで林道を歩いて行きます。
黒河林道には熊出没の情報があり、地元の方に聞いてみたら“会ったことあるけど熊の方が逃げていったよ。”と逞しいのやら、恐れ知らずなのやら。

林道を約30分歩き切ると、登山口のある黒河峠(標高567m)へ到着。
ここにはトイレ施設がありますが、マキノ高原側の登山者のにぎわいと比べると登山者は少なめの印象を受けます。



林道では偶然出会った地元の方といろいろ話しながら歩きましたので、単調な未舗装林道も退屈することなく登れました。
その方が登山口からもう少し一緒に行くと言って下さいましたので、登山開始の頃は2人での登山となりました。



道の両端の草が被ってしまっている道をしばらく登ると、細く使われていないような未舗装の林道に出ます。
林道を横切ったところにある次の登山口から登山再開となり、ここで地元の方とはお別れします。



2つ目の登山口の入口にはヤマボウシが咲いていて、花のお迎えです。
ここまでの林道にはコアジサイが咲いていましたが、登山道へ入ると標高が高くなってまだコアジサイは咲いておらず、高さによる花期の違いを実感します。



道は急勾配の道はほぼないものの、やや狭めの道が崖沿いに続きますので足元注意が必要かな。
そして道に木の枝が被っている場所が多く、身長高めの当方は3回頭をぶつける羽目となってしまいました。



山頂までの登山道で唯一あった鎖場です。
足を掛けるように岩が削られていますので、鎖を使って楽々と登れます。



景色が見渡せる広場のような所もあって、野坂山地の山々が一望出来ます。
晴れたり曇ったりの繰り返しの転機でしたので見渡せる範囲は狭いですが、もう少し標高の高い場所まで登ると琵琶湖がよく見えるようになります。
正面の山は乗鞍岳(滋賀)で一番手前のピークが黒河峠の辺りでしょうか。



岩場の後方には斜めに割れ目が入った巨石があり、高さと幅が約5mほどあるので写真で見るより大きく感じます。
この岩は「アザラシ岩」と呼ばれているようで、見ようによっては目と鼻の孔と空いた口のように見えないことはないですね。



いままで山登りをしてきた中で見たことがなかったのが湿原の木道です・
三国山湿原と呼ばれる場所にはよく整備された木道が設置されており、この辺りには初夏にキンコウカの花が咲くそうです。



ちなみにこの木道の終点近くにはサラサドウダンの巨樹があります。
根元から何本も枝分かれして広がっており、花も沢山付けていました。



三国山が近くなってきたのが分かるのが、木段が増えて急登を登るようになった頃。
黒河峠(林道)からここまでそれほど急な道はありませんでしたが、ここからの約400mは最後のひと踏ん張りになります。
直前の分岐は三国山と明王の禿に分かれていましたので、この分岐で赤坂山への道と三国山への道に分かれる。



そして三国山山頂の標高876.3mに到着です。
赤坂山より約50mほど高く、寒風と比べても30m近く高いので、野坂山地系の山で当方が登ったことのある山の中では最高峰です。



山頂部はあまり広くはないけど座れる石があるのが助かります。
三等三角点、点名:三国が横にあって、ノータッチで写真のみ撮影。



もう少しすっきりとした天気だとよかったのですが、クリアーな空だったら伊吹山や琵琶湖がはっきりと見えたことでしょう。
では、これから下山して途中で見つけた何ヶ所かで咲いていたサラサドウダンを見ながら下山しましょう。



赤坂山~明王の禿、黒河峠~三国山にはベニドウダンがあちこちに生えていますが、サラサドウダンは三国山の登山道に多いように感じました。
これまでに見たドウダンツツジはおそらくベニドウダンと思われるものが大半で、これぞサラサドウダンと言えるものは少なかったと思います。

ベニドウダンは紅色のもの、薄い紅色のものがあり、見る方の期待値がサラサドウダンに傾いているので同定に迷いがありました。
しかし、今回はこれぞサラサドウダンと言い切れる花に沢山出会えて、一年越しの希望が叶いました。



サラサドウダンには先端部の紅色が強いものと全体に白っぽいものがあり、どちらの色目も味わいが深い。
今まで見ていたベニドウダンとは見かけも異なれば、大きさも違いサラサドウダンの方が大きく、先端部が開いていて明らかに形が違う。



ベニドウダンやサラサドウダンが多くなってきた登山道では当方も含めて偶然に出会った3組4人で盛り上がりながらの花探しです。
最初はベニドウダンばかりでしたが、最初のサラサドウダンを見つけると次々に見つかり、“サラサだ!サラサだ!”とはしゃぐのは大人気ないけどね。



同じサラサドウダンでも一番紅が濃いと感じたやつです。
ちょうど時期も良かったのでしょう、落下した花弁も僅かにありましたが、どの枝にも鈴なりのサラサドウダンが吊り下がっていました。





木の本数としてはベニドウダンの方が多いのに撮らないと“扱いが悪いぞ!”とベニさんに怒られてしまいそうなのでパチリです。
ベニドウダンにも紅色が強いのとピンク系のベニドウダンがあるようですね。





サラサドウダンを満喫!登山を満喫!と相成り、気分は爽快でした。
この山域は北に乗鞍岳、南に大谷山があり、少し位置関係が掴めてきましたので、高島トレイルの分割コース歩いてみるのもありかもしれませんね。


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赤坂山登山その2~粟柄峠-山頂-明王の禿のピストン~

2024-06-12 05:55:55 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 快晴の赤坂山登山も約半分くらいの位置になる粟柄峠までやってきました。
ここからは気持ちの良い稜線歩きになるものの、風が強いのでこの季節にも関わらず寒くなってきてウインドブレーカーを着て帽子をリュックに入れます。

粟柄峠から先に続く赤坂山の稜線は日本海側と琵琶湖側の分水嶺にあたり、風を遮るものは何もありませんから、逃げようのない風に吹きつけられます。
粟柄峠の分岐は、麓のマキノ高原・赤坂山・福井県美浜町に分かれており、寒風や大谷山へのルートの分岐にも近い場所にあります。



かつて粟柄峠は、日本海側と琵琶湖側の物流ルートとして人の行き来があったといいます。
峠の福井側には複数の馬がいたと思われる馬場という集落があったとされ、かつての馬に荷を積んで峠を越えていく物流の姿が想像されます。
そのためなのでしょう、巨石をくり抜いた中には馬頭観音(馬の無病息災の守り神)をお祀りしています。





赤坂山に限らず山頂への稜線が美しい山というのがあり、息を切らしながらも登っていく稜線歩きは実に楽しい。
早く着きたいような、もっと楽しみたいような微妙な気分を味わいながら最後のロードを登ります。



とはいえ稜線歩きは楽しいだけでなく、急登を登る苦しさも同時にあって、心の中ではあと僅か、あと僅かと念じるように粘る気持ちで登ります。
マキノ高原から2時間弱、今日は山頂から「明王の禿」まで行きますので少し休憩したいが、風に煽られて寒くて休む場所がない。



最後の急登を登りきると標高823.8mの山頂です。
岩陰で休憩されている方も居られるが、立っているだけで寒さに耐えられないほど強風にさらされてしまいます。



三角点は四等三角点。
三角点の近くには似たような形状の図根点標石があり、林野庁が国有林の測量のために設置した標石設置だそうです。



山頂からは琵琶湖が良く見えており、裸眼だと琵琶湖の湖岸線が湾曲しているのが分かります。
山の麓から見える琵琶湖は近く、福井県美浜産の塩や木炭・海産物を滋賀県海津から湖上輸送するに適した街道(峠)だったことが伺われます。



反対方向は美浜町の雲谷山を経て、向こう側には若狭湾があるはずだがこの位置からは見えません。
寒風まで行く途中には若狭湾と琵琶湖が右と左に見える場所がありますので、両方を見るのなら寒風ルートでしょうか。



赤坂山山頂から向かうのは写真に見える三国山の右にある風化した奇岩が聳え立つ「明王の禿」です。
一旦下ってから登り返すルートになり、更に進めば三国山まで行けますが、戻ってくるのが大変なので明王の禿まで行って折り返します。



赤坂山から明王の禿への道は、低木の茂みの鞍部を通り抜けるような道ですので熊さんに出会わないか不安な道。
しかし、この日は歩いている人が多いので安心して進めます。
最後の登りを終えると目の前には荒涼とした石灰岩の崩壊地。何度見ても圧巻です。



中央に聳える岩は通称「モアイ岩」または「マントヒヒ」と呼ばれる。
麓からも見えるこの崩壊地の崖側の危険個所にはチェーンが張られていて、崖側まで近づくと強風で煽られて滑落しそうで怖い。



奇岩の向こう側には田植えの終わった水田と琵琶湖が見える。
麓から2時間ほどで来れる場所とは思えないほど、この景色は凄い。



明王の禿から木段を登って振り返ればこの景色。
奇岩は今も崩壊したり風化したりしているのでしょうか?
降雪量の多そうな地域ですので、少しづつ風景は変わっているのかもしれません。



明王の禿のピークは標高780m。
高島トレイルのコースに入っており、トレイルの12の分割コースではコース2の黒河口~マキノ高原になります。





ピストンですので明王の禿から赤坂山へ戻りますが、遠い距離ではないけど景色で見ると遠そうに見えるのが山の不思議。
赤坂山山頂までの最後の急登がなかなかシンドイんですよね。



赤坂山の山頂に戻った後、稜線を下って粟柄峠を越えた辺りで寒風への分岐に差し掛かります。
快晴ですので稜線からの景観は素晴らしいと予想されるものの、強風が吹く稜線をずっと歩くのが難点ですので立ち寄らずです。
とはいえ、登り下りする人の姿はチラホラとありました。



マキノ高原に下山しますが、朝と比べてもそれほどテントは増えてはいないようです。
キャンプ場を下りながらテントを見ると、テントのキャノピーの部分が風に煽られて大変そうでしたよ。



花の話に戻りますが、明王の禿の近くにもドウダンツツジが咲いていたものの、これぞ紛れのないサラサドウダンという花には巡り合えずでした。
やはり明王の禿から三国山へ足の延ばすか、黒河峠から三国山を目指すかなんでしょうね。
では日を改めて黒河峠から三国山の山頂へ行ってみよう!


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