“神社で蛇に出会う”というのは吉兆の知らせなのでしょうか。注意喚起の前兆なのでしょうか。
日野町にある熊野神社に参拝した時、圧倒されるような巨樹が何本もある境内を歩いていると、巨樹の根の所にいた蛇がこちらの気配に驚いて木の幹を登ろうとしてうねる姿に出会いました。
当方は大の蛇嫌いにも関わらず、足元から蛇が出て、目の高さ近くでうねっている姿には連鎖反応で悲鳴をあげてしまった次第です。しかも結構大きなやつだった。
まぁ楽観的に“これは吉兆”だと思い境内を進みましたが、この「熊野神社」は修験道の霊場の空気が漂う神社です。
熊野神社は、綿向山の麓にある熊野集落にあり、山岳信仰の御神体である綿向山を中心に活躍した修験道者達の拠点となっていたといいます。
熊野神社から綿向山へ入っていくと、「熊野滝(熊野飛滝神社)」があり、熊野神社の御神体として神聖な御滝を祀っているともいわれている。
鳥居後方の木には勧請縄が掛けられているが、湖東や湖南地方の神社では勧請縄に下がりものが吊るされているのを時々見かけることがある。
村の外から悪いものが入ってこないように張った結界と思われ、下がりものにはその集落特有の決まり事があるようです。
熊野神社ではさらに竹に挟んだ御幣も祀られており、勧請縄には竹に挟んだ御幣が差されている。
また、勧請縄が掛けられた木の根っこにも御幣が差されてあるのは、熊野集落独特の儀式・儀礼かと思われます。
熊野神社の鳥居の前には「熊野神社のタコ杉」と呼ばれる巨樹があり、巨樹ぞろいの熊野神社でも異彩を放っています。
タコ杉は、タコが逆立ちして足が上向きになったような姿から名が付いたとされ、幹周7.3m・樹高25mで樹齢は推定で400年とされる独特の姿をしたスギです。
杉の巨樹が多い熊野神社にあって、他の杉は真っすぐに伸びているにも関わらず、このタコ杉だけが異様な姿をしているのが不思議です。
なぜこのタコ杉がこのようになったのかは不明ですが、周りに何もないところに単立で立っていることで、環境的な影響があったのかもしれません。
境内は「お宮さんの森」と呼ばれ、巨木としてカウントされる樹が26本あるとされます。
大半は杉の木となる中で、勢いよく葉を茂らせているのがイチョウの木。
幹周3.7m・樹高が33mのイチョウはなかなかの見応えです。
熊野神社は、伊弉冉命と武三熊大人命の2柱を御祭神として祀り、武三熊大人命は同じ日野町にある「馬見岡綿向神社」の御祭神の1柱としても祀られています。
馬見岡綿向神社では、天照大神の第二の御子である「天穂日命」、その御子の「天夷鳥命」「武三熊大人命」を祀っており、この神々と日野との関係が興味深い所です。
また、「武三熊大人命」は「たけくまのうし」と読み、「くまの」という音が含まれているのも何か地名と関係がありそうで面白いですね。
拝殿の横の杉も巨樹と呼べるサイズがあり、本殿の横にも巨樹の姿があります。
入母屋造の本殿には千木・鰹木はなく、清々しい雰囲気がありつつも引き締まった空気感を感じます。
本殿の横にも巨樹はあり、御神木とされてもおかしくないような樹齢の杉が多く見られる。
白洲正子さんは熊野のことを「村の中には、老樹にかこまれた熊野神社だ建ち、おきまりの神体山もそびえている。」と書かれている。
さらに「その山中には「熊野の滝」もあると聞いたが、行ってみることは出来なかった。」とある。(近江山河抄・あかねさす 紫野)
「熊野の滝」は以前は落差10mほどある美しい滝のようでしたが、2013年の大雨で滝は原型を崩し、滝道には崩落箇所があり通行困難となっていて滝も崩れているらしい。
おまけに滝への道には山ヒルが多いとのことで行かずじまいです。
「熊野の滝」には「熊野飛滝神社」も祀られていることから、修験者達はこの地に和歌山の熊野を忠実に再現しようとし、綿向山は熊野を再現するに足る神体山だったのでしょう。
境内の滝道へと通じる場所には「山之神」と「野之神」と彫られた石碑が立てられていました。
「山之神」の石碑の横にはタコ杉以外では最大となる杉の巨樹がある。
おそらく幹周は6m以上ありそうで、圧倒される迫力の見事な山之神です。
「野之神」の石碑の前にある杉も見事な巨樹ですが、山之神の迫力ある姿と比べてやさしい印象を受ける。
いずれにしても、魅力的な2本の巨樹が「山之神」「野之神」として祀られているのは、見ている方の気持ちも昂ります。
ところで、熊野神社には成人の日に行われる「弓取りの神事」があるといいます。
遠い昔、熊野の人々を苦しめた2匹の大蛇を修行僧と引率された村の若者が退治した勇気を伝える行事とされます。
「弓取りの神事」は、村の6人の長男たちがそれぞれの家で身を清め、狩衣に身を固めて、神社の鳥居の中から「おろち塚」と呼ばれる大蛇を埋めた塚に向かって弓を放つ神事だといいます。
鳥居の反対側(外側)には「おろち塚」に見立てた塚に結界が張られていて、設置された的に向かって矢を射るといい、修験者の儀式ゆかりの神事と考えられているようです。
巨樹の多い熊野神社でしたが、この熊野集落には国の天然記念物である「熊野のヒダリマキガヤ」があると聞きます。
最初はどこにあるのか分からず人に聞こうとまず人を探し、人を見つけるのも一苦労の中、やっと見つけたお爺さんが分かりやすく教えてくださったのは助かりました。
熊野集落には3本のヒダリマキガヤがあり、この樹はその中の1本で、幹周2.4m・樹高30mで樹齢は400年とされています。
ヒダリマキガヤはカヤの突然変異だとされ、長さが4~5cmの長楕円形の種子の浅い溝が一般のカヤは直線であるのに対して、左方向へ螺旋状に巻いているといい、カヤ稀少品種とされています。
実際には種子を見ないと、ヒダリマキガヤは確認は出来ませんが、国の天然記念物として指定されているのは、熊野の2本のヒダリマキガヤ・兵庫県養父市・宮城県白石市の3カ所だけだといいます。
枝は片側だけに伸びており、その枝はくねったような形をしています。
道路下へ降りていくのは困難そうでしたので、ガードレールの隙間から覗き込むようにして樹を見る。
この熊野集落は、和歌山の熊野神社を再現しようかとでもいうような修験道の臭いがし、ビシッとした空気感の中にタコ杉や林立する杉の巨樹が並び、天然記念物のヒダリマキガヤまである。
熊野集落の隣になる蔵王集落には、吉野山系の修験道者たちが勧請した「金峯神社」があるといい、綿向山で修行する修験者が信仰したといいます。
この地域は古来より山岳信仰と修験道の色濃い一帯だったことを物語るような空気感が伝わってきます。
日野町にある熊野神社に参拝した時、圧倒されるような巨樹が何本もある境内を歩いていると、巨樹の根の所にいた蛇がこちらの気配に驚いて木の幹を登ろうとしてうねる姿に出会いました。
当方は大の蛇嫌いにも関わらず、足元から蛇が出て、目の高さ近くでうねっている姿には連鎖反応で悲鳴をあげてしまった次第です。しかも結構大きなやつだった。
まぁ楽観的に“これは吉兆”だと思い境内を進みましたが、この「熊野神社」は修験道の霊場の空気が漂う神社です。
熊野神社は、綿向山の麓にある熊野集落にあり、山岳信仰の御神体である綿向山を中心に活躍した修験道者達の拠点となっていたといいます。
熊野神社から綿向山へ入っていくと、「熊野滝(熊野飛滝神社)」があり、熊野神社の御神体として神聖な御滝を祀っているともいわれている。
鳥居後方の木には勧請縄が掛けられているが、湖東や湖南地方の神社では勧請縄に下がりものが吊るされているのを時々見かけることがある。
村の外から悪いものが入ってこないように張った結界と思われ、下がりものにはその集落特有の決まり事があるようです。
熊野神社ではさらに竹に挟んだ御幣も祀られており、勧請縄には竹に挟んだ御幣が差されている。
また、勧請縄が掛けられた木の根っこにも御幣が差されてあるのは、熊野集落独特の儀式・儀礼かと思われます。
熊野神社の鳥居の前には「熊野神社のタコ杉」と呼ばれる巨樹があり、巨樹ぞろいの熊野神社でも異彩を放っています。
タコ杉は、タコが逆立ちして足が上向きになったような姿から名が付いたとされ、幹周7.3m・樹高25mで樹齢は推定で400年とされる独特の姿をしたスギです。
杉の巨樹が多い熊野神社にあって、他の杉は真っすぐに伸びているにも関わらず、このタコ杉だけが異様な姿をしているのが不思議です。
なぜこのタコ杉がこのようになったのかは不明ですが、周りに何もないところに単立で立っていることで、環境的な影響があったのかもしれません。
境内は「お宮さんの森」と呼ばれ、巨木としてカウントされる樹が26本あるとされます。
大半は杉の木となる中で、勢いよく葉を茂らせているのがイチョウの木。
幹周3.7m・樹高が33mのイチョウはなかなかの見応えです。
熊野神社は、伊弉冉命と武三熊大人命の2柱を御祭神として祀り、武三熊大人命は同じ日野町にある「馬見岡綿向神社」の御祭神の1柱としても祀られています。
馬見岡綿向神社では、天照大神の第二の御子である「天穂日命」、その御子の「天夷鳥命」「武三熊大人命」を祀っており、この神々と日野との関係が興味深い所です。
また、「武三熊大人命」は「たけくまのうし」と読み、「くまの」という音が含まれているのも何か地名と関係がありそうで面白いですね。
拝殿の横の杉も巨樹と呼べるサイズがあり、本殿の横にも巨樹の姿があります。
入母屋造の本殿には千木・鰹木はなく、清々しい雰囲気がありつつも引き締まった空気感を感じます。
本殿の横にも巨樹はあり、御神木とされてもおかしくないような樹齢の杉が多く見られる。
白洲正子さんは熊野のことを「村の中には、老樹にかこまれた熊野神社だ建ち、おきまりの神体山もそびえている。」と書かれている。
さらに「その山中には「熊野の滝」もあると聞いたが、行ってみることは出来なかった。」とある。(近江山河抄・あかねさす 紫野)
「熊野の滝」は以前は落差10mほどある美しい滝のようでしたが、2013年の大雨で滝は原型を崩し、滝道には崩落箇所があり通行困難となっていて滝も崩れているらしい。
おまけに滝への道には山ヒルが多いとのことで行かずじまいです。
「熊野の滝」には「熊野飛滝神社」も祀られていることから、修験者達はこの地に和歌山の熊野を忠実に再現しようとし、綿向山は熊野を再現するに足る神体山だったのでしょう。
境内の滝道へと通じる場所には「山之神」と「野之神」と彫られた石碑が立てられていました。
「山之神」の石碑の横にはタコ杉以外では最大となる杉の巨樹がある。
おそらく幹周は6m以上ありそうで、圧倒される迫力の見事な山之神です。
「野之神」の石碑の前にある杉も見事な巨樹ですが、山之神の迫力ある姿と比べてやさしい印象を受ける。
いずれにしても、魅力的な2本の巨樹が「山之神」「野之神」として祀られているのは、見ている方の気持ちも昂ります。
ところで、熊野神社には成人の日に行われる「弓取りの神事」があるといいます。
遠い昔、熊野の人々を苦しめた2匹の大蛇を修行僧と引率された村の若者が退治した勇気を伝える行事とされます。
「弓取りの神事」は、村の6人の長男たちがそれぞれの家で身を清め、狩衣に身を固めて、神社の鳥居の中から「おろち塚」と呼ばれる大蛇を埋めた塚に向かって弓を放つ神事だといいます。
鳥居の反対側(外側)には「おろち塚」に見立てた塚に結界が張られていて、設置された的に向かって矢を射るといい、修験者の儀式ゆかりの神事と考えられているようです。
巨樹の多い熊野神社でしたが、この熊野集落には国の天然記念物である「熊野のヒダリマキガヤ」があると聞きます。
最初はどこにあるのか分からず人に聞こうとまず人を探し、人を見つけるのも一苦労の中、やっと見つけたお爺さんが分かりやすく教えてくださったのは助かりました。
熊野集落には3本のヒダリマキガヤがあり、この樹はその中の1本で、幹周2.4m・樹高30mで樹齢は400年とされています。
ヒダリマキガヤはカヤの突然変異だとされ、長さが4~5cmの長楕円形の種子の浅い溝が一般のカヤは直線であるのに対して、左方向へ螺旋状に巻いているといい、カヤ稀少品種とされています。
実際には種子を見ないと、ヒダリマキガヤは確認は出来ませんが、国の天然記念物として指定されているのは、熊野の2本のヒダリマキガヤ・兵庫県養父市・宮城県白石市の3カ所だけだといいます。
枝は片側だけに伸びており、その枝はくねったような形をしています。
道路下へ降りていくのは困難そうでしたので、ガードレールの隙間から覗き込むようにして樹を見る。
この熊野集落は、和歌山の熊野神社を再現しようかとでもいうような修験道の臭いがし、ビシッとした空気感の中にタコ杉や林立する杉の巨樹が並び、天然記念物のヒダリマキガヤまである。
熊野集落の隣になる蔵王集落には、吉野山系の修験道者たちが勧請した「金峯神社」があるといい、綿向山で修行する修験者が信仰したといいます。
この地域は古来より山岳信仰と修験道の色濃い一帯だったことを物語るような空気感が伝わってきます。