中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

25日は、休載します

2020年09月24日 | 情報

25日(金)は、出張のため休載します。
再開は、28日(月)です。よろしくお願いします。

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(参考)広がる「コロナ疲れ」

2020年09月24日 | 情報

(参考)広がる「コロナ疲れ」 ストレス多く在宅勤務で休職も
20.9.5 日経 産業医・精神科専門医 植田尚樹氏

社員がいきいきと働き、高いパフォーマンスを発揮する職場をつくるには何が必要か。産業医として多くの企業で社員の健康管理をアドバイスしてきた茗荷谷駅前医院院長で、みんなの健康管理室代表の植田尚樹医師に、具体的な事例に沿って「処方箋」を紹介してもらいます。

「コロナ疲れ」「コロナうつ」という言葉が生まれるなど、新型コロナウイルスの感染拡大は、人びとの生活に色濃く影を落としています。それは思いも寄らぬところにも表れています。

4月の緊急事態宣言の発令で、テレワークによる在宅勤務が普及しました。在宅勤務は出社勤務に比べて自由度が高いため、当初は働き手への負荷が少ないと考えられていました。しかし、最近は在宅勤務が原因のひとつとなり、休職に至る事例が増えてきているように見受けられます。

実際、私も産業医として、在宅勤務によるメンタルヘルス不調を訴える人とオンライン面談することが多くなりました。会議に欠席したり、急に欠勤したり、業務日報を提出しなかったり――。上司がいつもと違う振る舞いに気づき、人事部を介して産業医による面談を求めることが多いようです。

症状はさまざまです。不眠、倦怠(けんたい)感、イライラ、落ち込み。怒りっぽくなったという人もいます。なかには面談で「体調不良で仕事が続けられません」「パソコンの画面を開くのが怖い」と訴える人もいます。

 

最大の要因は孤独感

 

さまざまな原因が考えられますが、最大の要因は精神的な孤立、孤独感だと考えられます。ひとり暮らしであれば、誰とも会わない日々が多くなります。毎日のように顔を合わせていた会社の同僚たちとの交流も途絶えがちとなります。こうしたなかでは、コロナ禍による将来への不安が増すばかりです。

感染防止として、密集、密接、密閉の「3密」回避もストレスとなります。外出時のマスク着用や手指の消毒、ソーシャルディスタンス(社会的距離)など、いろいろなことに気を遣わなければなりません。結果として、生活の自由が大きく制限されるのです。

ストレスにさらされている人たちに共通しているのは「満たされない」「達成感がない」との訴えです。「この仕事にどんな意味があるのか考え込んでしまう」といった声を聞きくこともあります。

家族にうつすのではないかと…

IT企業に勤める50歳代男性の事例です。

緊急事態宣言の発令以降、在宅勤務となりましたが、6月末ごろから体調不良となりました。不眠気味でやる気が起きない。イライラする。集中力が続かず、気力が湧かないと訴えていました。

最大の不安は、自分がいつの間にかコロナに感染して、家族にうつしてしまうのではないか――ということでした。勤務先は出社と出張は禁止だったものの、顧客訪問は許されていて、同僚と客先を訪れるのが怖かったといいます。

不安障害と判断されたため、7月から1カ月間の休職となりました。

コロナ禍は人の心にいろいろな不安をもたらします。不安が高じると、不安障害に至る場合があります。原因としては、脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリン)のバランスの乱れや、恐怖や不安に関係する脳の「扁桃(へんとう)体」の過剰反応などが考えられています。抗不安薬や抗うつ剤などによる治療が可能ですので、気になる症状が認められる場合は、早めにメンタルクリニックなどを受診することが望ましいでしょう。

 

在宅勤務で仕事量が増加

コロナ禍による仕事量の増減がストレスをもたらすこともあります。テレワークによる在宅勤務など、働き方の変化も大きな負荷となる場合があります。

イベント運営会社に勤める40歳代女性の事例です。

やはりコロナ禍で在宅勤務を強いられていました。リアルなイベントを開催できないため、ウェブ上でのセミナー「ウェビナー」などで代替する必要がありました。これまで手がけたことのない仕事で、かなり仕事量が増えたそうです。

これまでなら、大きなイベントがあれば一目瞭然ですので、社内で手分けして手伝ってもらうこともしばしばだったといいます。しかし現在は在宅勤務ということもあり、「全部ウェブだから大変じゃないでしょ」と理解されなかったといいます。

実際は各方面の関係者との調整や広報・宣伝、ウェブのデザインなど、やらなければならないことは山積。協力してくれる人は誰もいないなか、イライラしたり、夜眠れなくなったり、ドキドキするようになりました。

仕事量が増えた結果、残業時間はこれまでを大きく上回り、月間80時間以上になっていました。

産業医として面談した結果、休職には至らなかったものの、月間の残業時間を20時間以内に制限すると同時に、病院の心療内科などを受診するように指導しました。

 

孤立が悪循環招く

 

IT関係企業に入社したばかりの20歳代男性の事例です。

入社以来ほぼ出社することなく、テレワークによる勤務が続いていました。与えられた課題をこなすことができず、連絡をとれないことがしばしばあったことから、上司から産業医の面談を受けるように指示されました。

話を聞いてみると、不眠や倦怠感に悩まされているということでした。テレワークだと、先輩から教えてもらった内容がよく分からなくても、聞き返すことができないといいます。何度も同じことを聞くと、怒られてしまうのではないかと思い、そのまま放置してしまったというのです。その結果、与えられた課題ができず、悪循環に陥ってしまったようでした。

本人が「体調が悪いので休職したい」と訴えることから、その旨を書き添えた紹介状を用意して、心療内科を受診するように助言しました。結果、適応障害と診断され、現在は休職しています。

 

求められる寛容

コロナ禍の長期化で、メンタル不調を訴える人が目に見えて増えているようです。同じ職場にいれば、すぐに分かったような不調も、在宅勤務などで見えにくくなっています。出社することができていれば、周りにいる同僚に、分からないことを気軽に聞いたり、休憩時間には世間話をしてストレス発散したりできたはずです。

こんな状況だからこそ、職場では同僚のささいな変化も見逃さず、理解と寛容さをもって、対応することが必要です。真の意味でのニューノーマル(新常態)な働き方の定着が望まれるところです。

※紹介した事例は個人を特定できないように一部を変更しています。

 

植田尚樹氏

1989年日本大学医学部卒、同精神科入局。96年同大大学院にて博士号取得(精神医学)。2001年茗荷谷駅前医院開業。06年駿河台日大病院・日大医学部精神科兼任講師。11年お茶の水女子大学非常勤講師。12年植田産業医労働衛生コンサルタント事務所開設。15年みんなの健康管理室合同会社代表社員。精神保健指定医。精神科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

 

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