感染時の症状の有無に関わらず、感染から回復した後も、後遺症の様々な症状に苦しんでいる方々がいるとの報道があります。後遺症の原因が明確になっていませんし、治療に長い時間がかかる場合もあるそうで、感染から1年経過後も症状が見られる場合もあるとのことです。
そこで、精神症状を中心に、公的機関、専門機関の情報を集めましたので、紹介します。
まず、厚労省の「新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き、別冊罹患後症状のマネジメント」(本別冊(暫定版)は,2021 年 11 月 26 日現在の情報を基に作成しました.今後の知見に応じて,内容に修正が必要となる場合があります.厚生労働省,国立感染症研究所等のホームページから常に最新の情報を得るようにしてください.)です。
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6 精神・神経症状へのアプローチ
・精神・神経系の罹患後症状について
精神・神経系の罹患後症状は,中枢・末梢神経系,筋・骨格系,内臓系および精神・心理活動のいずれかの機能部位(臓器)の異常も原因の一端であると考えられ,例えば図6-1 の概念図に示されるように,複数の機能部位(臓器)に関連する症状である場合が多い.また,著しい炎症反応に伴うさまざまな臓器への器質性障害および免疫応答における異常も背景要因の一つと考えられており,大半の症状では時間と共に回復することが見込まれ,適切な病後のフォローとセルフケアによって,早期の改善または重症化予防が期待される.
しかし,現時点では,治療やアプローチ(ケアなど)に関する科学的な知見やエビデンス(論拠)がいまだ不十分であり,国内外の報告例や大規模コホート研究における解析結果等を踏まえながら,主として総説およびシステマティックレビューやメタ解析などを参考に,比較的頻度の高い症状について概説する.
精神・神経系の罹患後症状は,精神・神経系の基礎疾患や素因を基盤とするものもあり,基礎疾患の増悪との鑑別が必要であること,また,まれに発熱や息切れなどの呼吸・循環器系等の症状と鑑別が必要な罹患後症状が出現する場合もあり得ることを念頭に置くべきである.脳神経内科領域の病態は多岐にわたる.したがって,基本的なアプローチの指針としては,直ちに専門家や総合病院等へ紹介するよりは,病後の担当医やかかりつけ医等で一定期間の経過観察を行うことが望ましい.加えて,心理的要因が強く疑われる場合でも,不意に精神科へ紹介されたことによって不安が増す可能性もあり得ることから,急を要する場合を除いては,直ちに精神科への受診勧奨を行う必要はないと考えられる。
【発生頻度および成因(メカニズム)について】
精神・神経系関連の罹患後症状のうち,多くの報告に共通してみられるのは倦怠感・易疲労性である.英国国家統計局の発表によると,COVID-19 罹患後5週時点の有病率は 11.9% とされるが,文献により発生頻度にばらつきがあり,おおよそ 40 ~ 80%,多いものでは 90%を超える記載もある.また,症状の発生頻度は,COVID-19 の重症度に依らないという報告もある.
背景となる要因は,中枢神経系,末梢神経系,および心理的要因などの関与が示唆されており,中枢神経系における主な機序としては,①長期間に及ぶ免疫応答によるグリア細胞への障害,②血液脳関門(Blood-brain barrier)の機能低下と血管透過性の亢進などが報告されている. また,Brain fog(脳の霧)と呼ばれる「頭がボーっとする」ような症状や,実行(遂行)機能や集中力の低下などは中枢神経系を中心とする特徴的な症状と言われている.また,著しい炎症反応に伴って凝固能亢進が惹起され,血栓ができやすくなることで脳梗塞や脳出血のリスクが増大する可能性も示唆されており,注意が必要である.精神・心理系の主な罹患後症状としては,不安・焦燥感、抑うつおよび PTSD(心的外傷後ストレス障害)などがあげられ,入院後 1 カ月時点の有病率は 56% ,米国の大規模コホートにおける後方視的研究の 3 カ月時点での有病率は 18.1%(このうち新規罹患者は 5.8%)との報告があり,上述の倦怠感・易疲労性などの背景要因ともなり得る.
このほか骨格筋および末梢神経における器質性の障害などによるさまざまな痛みや痺れ(しびれ)と,起立性調節障害(OD:orthostatic dysregulation, POTS:postural orthostatic tachycardia syndrome など)に加えて,長期間の入院(臥床)に伴う廃用性の筋力低下,集中治療後症候群(PICS:post intensive care syndrome)などによる倦怠感・易疲労感も考慮する必要がある.
2.精神・神経系の症状フローチャート
最初に行うべきは,身体的原因の検索である.必要に応じて,二次医療機関での精査を考慮してもよいが,必要以上の検査により患者を不安にさせる可能性もあるので注意が必要である.また,身体的原因の有無にかかわらず,症状が軽度なうちは病後の担当医やかかりつけ医等での対応が基本である.
有効な治療に関しては,まだエビデンスが乏しく,患者の経験する不安や苦痛の傾聴,共感が重要である.また,共同意思決定に基づき,達成可能な目標を設定することが有用であり,目標達成に必要な助言を行う.
一方,脳血管疾患や精神病症状など,身体的あるいは精神科的に緊急対応が必要と思われる重症例は,躊躇せず専門医療機関に紹介すべきである.専門医療機関・精神科医療機関で治療を行う場合も,信頼関係のある病後の担当医やかかりつけ医等が併診することにより,患者の不安感が和らぐ場合もある.
また,専門医療機関における検査終了後や、治療により症状が軽快した場合も,病後の担当医やかかりつけ医等で診療を継続することが望ましい
身体症状を訴えるものの明らかな異常所見がなく,心理的な背景が推察される場合においても,直ちに精神科に紹介するのではなく,いったん総合病院の総合診療科等を紹介し,受診先で内科的・心理的評価をするなどの段階を経て,必要な場合に精神科を受診するというプロセスも考慮する.精神科を先に受診し,精神科医にコンサルテーションを行ったうえで病後の担当医やかかりつけ医等で診療を継続することもあり得る.
身体症状を伴わない比較的軽度な精神症状を訴える患者には,精神保健福祉センターまたは保健所の精神保健福祉担当部署を紹介することもできる.精神保健福祉センター・保健所では治療は行わないものの,傾聴や助言,メンタルヘルスに関する情報提供,またはセルフケア,ストレスマネジメントといった予防に関する相談窓口があり,就労支援や障害福祉に関するさまざまな社会的資源へつなぐ活動も行われている.
つぎに、東京都福祉保健局の情報です。(その他道府県も同様な相談窓口があります。)
○都立・公社病院患者支援センターへの「コロナ後遺症相談窓口」の設置について
病院経営本部及び公益財団法人東京都保健医療公社では、都立・公社病院の患者支援センターに「コロナ後遺症相談窓口」を設置し、新型コロナウイルス感染症の治療や療養終了後も、呼吸の苦しさや味覚・嗅覚の異常などの症状がある方からの受診や医療に関する相談への対応を開始いたしますので、お知らせします。
1 対象
新型コロナウイルス感染症と診断(PCR検査等で陽性)されてから、1~2か月以上経過し、何らかの症状がある方※ 相談は原則、御本人からお願いします。
2 相談の方法及び内容
患者支援センターの看護師等が、電話で症状等について相談をお受けして、症状に応じて、医療機関の受診につなげるなど支援します。(相談は無料)
相談の内容
・具体的な症状や体調に関する相談
・症状に応じた受診について
対応
・症状により、かかりつけ医やお住まいの近くの医療機関への受診を御案内するほか、かかりつけ医がいない場合や症状が重い場合などは、外来受診を御案内いたします。
※ 新型コロナウイルス感染症の後遺症については、現時点では確立された治療法がないため、医療機関を受診された場合、治療は症状に応じた対症療法が基本となります。また、受診においては所定の医療費がかかります。
○新型コロナウイルス感染症 後遺症リーフレット
本リーフレットは、新型コロナウイルス感染後に様々な症状で苦しむ方々に後遺症を患っている可能性を自覚してもらい、医療機関や相談窓口等につなげることを目的としています。
ダウンロード用データ
新型コロナウイルス感染症 後遺症リーフレット A4サイズ(PDF:3,408KB)
新型コロナウイルス感染症 後遺症リーフレット A3サイズ(PDF:3,410KB)
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