本日の結論です。
所謂・発達障害者の就労について、実務上では「短所を度外視し、
相談により長所を発見して、その能力を伸張させる」ことが肝要と考えます。
障害者雇用促進法では、本年3月1日以降、法定雇用率がさらに引き上げになりました。
そのうち民間企業の法定雇用率は、2.3%となりました。
即ち、従業員43.5人以上の企業においては、1人以上の雇用が義務化されたわけです。
例えば、従業員100人の企業であれば、3人の障害者を採用しなければならないことになりました。
現実のはなしをすると、企業の発達障害者雇用については、現状以下の二つのパターンがあります。
1.法定雇用率を達成するために、障害者(障害者手帳を保有)を、障害者枠で新規に採用。
2.健常者を新規に採用したが、就労後に発達障害の症状があることがわかる。
発達障害のおさらいをすると、生まれながらにして脳に特徴があって、
そのために、家庭・学校・社会生活に種々の問題を生じる障害を云います。
発達障害には、種々の症状があって、主な障害として、ADHDやASD等があります。
詳しくは、厚生労働省のウェブサイト「みんなのメンタルヘルス」を参照してください。
・発達障害
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html
または、DSM-5を参照してください。
発達障害の主な現象(企業にとって不都合な事情)としては、
○対人関係が上手くつくれない ⇒空気が読めない、他人の気持ちが理解できない、コミュニケーションが苦手、
○課せられた仕事ができない ⇒段取りが苦手、納期を守れない、作業中の仕事を放置
○何回も同じことを云い聞かせても対応できない ⇒振り返りができない、経験から学ぶことができない、
等があげられています。
さて、以上のことより、企業の人事部門は、精神科専門医や有識者の指摘を参考にして、
カウンセラーやEAPの協力を得ながら、採用した人材の教育・指導に取り組むわけです。
小職が入手している情報では、多くの企業において、
上述した当事者の欠点を矯正することに主眼を置いた教育・指導をしているようです。
発達障害者も、他の健常者と同じように、業務を与えられ、作業をこなしてほしいと。
要するに従業員の業務遂行レベルの均質化を目指しているように受け止められます。
所謂「金太郎あめ」の大量生産です。とても日本的な労務管理手法でしょう。
しかし、これには無理があります。企業の経験豊富な人事労務担当であれば、
とっくに分かっていることなのですが、企業(上層部)が要求するのでしょうね。
多少の改善は望めるでしょうが、費用対効果は、惨憺たることになるでしょう。
一方で、法令を参照すると、障害者差別解消法や改正障害者雇用促進法により、
事業者には以下の「合理的配慮」の提供義務が課せられています。
合理的配慮に関する基本的考え方
1 合理的配慮は、個々の事情を有する障害者と事業主との相互理解の中で提供されるべき性質のものであること。
2 合理的配慮の提供は事業主の義務であるが、採用後の合理的配慮について、
事業主が必要な注意を払ってもその雇用する労働者が障害者であることを知り得なかった場合には、
合理的配慮の提供義務違反を問われないこと。
3 過重な負担にならない範囲で、職場において支障となっている事情等を改善する合理的配慮に係る措置が
複数あるとき、事業主が、障害者との話合いの下、その意向を十分に尊重した上で、
より提供しやすい措置を講ずることは差し支えないこと。
また、障害者が希望する合理的配慮に係る措置が過重な負担であるとき、
事業主は、当該障害者との話合いの下、その意向を十分に尊重した上で、
過重な負担にならない範囲で合理的配慮に係る措置を講ずること。
4 合理的配慮の提供が円滑になされるようにするという観点を踏まえ、
障害者も共に働く一人の労働者であるとの認識の下、事業主や同じ職場で働く者が障害の特性に
関する正しい知識の取得や理解を深めることが重要であること。
以上のことから、結論を導き出すとすると、
具体的には、対象者の持てる能力を発見、開発し、その卓越した能力を伸ばし、
健常者には負けない実務能力を備えてもらうことにあるのでしょう。
小職としては、これが合理的配慮の具現化と考えます。
勿論、日本的な常識、昨今の常識、あるいは主流となっている常識から外れる部分は、
研修によって認識してもらい、それを少しずつ修正してもらうことも大切なことは付け加えておきます。
このことに気が付いている先進企業は、すでに多くあります。
当ブログでも過去に、数例紹介してきましたが、現時点では、これらの先進企業のノウハウですから、
改めて紹介することは控えることにします。トライ&エラーを試みてください。
100の評価項目があるとすれば、それぞれに1点ずつ100点を取るよりも、
1つの評価点で100点を取るほうが、企業経営への貢献度ははるかに優れていると云えるでしょう。
なんでも平均点の「凡人」より、一芸に秀でた「スペシャリスト」であれば
企業経営に計り知れない貢献を期待することが出来るのではないでしょうか。
参考までに、モーツァルト、エディソン、ダヴィンチ、アインシュタイン、
現存の文献から、発達障害が疑われる偉人たちです。
ひょっとすると、スティーヴン・スピルバーグや黒柳徹子さんの2世が、御社に誕生するかもしれません。