当事案は、公務災害ですから、規程が分かりませんので詳細については避けます。
しかし、労災の場合と同じと考えると、1か月だけでも長時間残業という事実があれば、
精神障害の労災認定基準に合致しますので、認定基準どおりに判断した結果と理解することができます。
具体的には、「精神障害の労災認定基準の長時間労働がある場合の評価方法 ③他の出来事と関連した長時間労働」に
該当します。しかも、地方公務員災害補償基金は、労災に当たる公務災害と認定していますので、原告勝訴は順当と考えます。
糸島市職員自殺 過労を認定 福岡高裁逆転判決
2016年11月11日 読売
福岡県糸島市の男性職員(当時52歳)が過労でうつ病になって自殺したのは
市が適切な労働環境の整備を怠ったためだとして、
男性の妻ら遺族が市に約7800万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が10日、福岡高裁であった。
金村敏彦裁判長は市の安全配慮義務違反を認め、請求を棄却した1審・福岡地裁判決を変更し、
市に約1650万円の支払いを命じた。
男性は市農林土木課の担当課長だった2010年6月に自殺。
市町村合併に伴う条例制定などの業務に追われ、自殺直前の1か月の時間外勤務は114時間に及んだ。
1月の1審判決は、「時間外勤務が100時間を超えたのは自殺前の1か月だけで、
業務が過度の負担をしいるものではなかった」などとして、原告の主張を退けた。
控訴審判決で金村裁判長は「男性は自殺直前、業務が集中し、疲労や心理的負荷が過度に蓄積していたのに、
男性の上司は健康状態を認識していなかった」と指摘し、市の安全配慮義務違反を認定。
その上で、「上司が勤務時間を減らしたり、職務分担を変更したりすれば自殺を回避することも可能だった」と言及した。
過労自殺「糸島市に安全配慮違反」賠償命令 福岡高裁
2016年11月11日 朝日
福岡県糸島市の男性課長(当時52)が自殺したのは、市が適正な業務分担を怠ったことによる過労が原因だとして、
遺族が市に約7760万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が10日、福岡高裁であった。
金村敏彦裁判長は「上司に安全配慮義務違反があった」などとして、遺族の請求を退けた一審判決を変更し、
市に計約1650万円の支払いを命じる逆転勝訴の判決を言い渡した。
判決によると、男性は農林土木担当課長だった2010年6月に自殺。
条例案をめぐる地元説明や議会対応に追われ、自殺直前の1カ月間の時間外労働は約114時間に及んだ。
うつ病も発症していたとして13年に公務災害と認定された。
今年1月の一審・福岡地裁判決は、自殺前の半年間に時間外勤務が100時間を超えたのは1カ月だけで、
男性の心身の不調を市が認識できたとは認められないと判断し、原告敗訴の判決を言い渡した。
高裁判決は、自殺前の仕事量が管理職の平均的な業務と比べ過重で、疲労や心理的負荷が過度に蓄積していたと指摘。
自殺直前にうつ病も発症し、「公務と自殺の因果関係を認めることができる」とした。
また上司の部長が男性の過重な業務を認識し、勤務時間を減らしたり職務分担を変更したりすれば、
負担の軽減が可能だったと判断。
メンタルヘルスに関する相談を受けるよう勧めることで自殺回避の可能性があった点も含め、市の安全配慮義務違反を認めた。
一方で賠償額については、男性が管理職として
業務を部下に割り振って自分の労働時間を適正に管理する意識が弱かったことや、
メンタルヘルスの相談制度を利用しなかったことなどが自殺に寄与したとし、8割の過失相殺をするのが相当と判断した。
男性の妻は代理人弁護士を通じて「これでやっと仕事が原因で亡くなったと認めてもらった。
市には二度と同じような犠牲者を出さないことを願う」とコメントした。
糸島市は「判決の内容を確認したうえで今後の対応を検討する」とした。
福岡・糸島市職員の自殺、過労認めず…地裁、「質的に過重とは言えない」と賠償請求棄却
2016.1.21 産経
平成22年に福岡県糸島市の農林土木担当課長だった男性=当時(52)=が自殺したのは、
市が過重労働にならない配慮を怠ったためとして、遺族が約7700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、
福岡地裁(岡田健裁判長)は21日、請求を棄却した。
判決によると、男性は農業施設の工事で受益者から分担金を徴収する条例案の担当となり、
農家や市議への説明などで、自殺前1カ月の時間外勤務が114時間に上った。
地方公務員災害補償基金は25年、労災に当たる公務災害と認定した。
判決で岡田裁判長は「時間外勤務が100時間を超えたのは、条例案に関する業務が集中した1カ月だけ。
責任の重い公務だが、質的に過重とは言えない」と判断した。