中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

うつ病で労災申請

2016年11月11日 | 情報

労災申請の書類には、会社の署名欄があるのですが、会社の承認がなくても、労災申請は可能です。
特に、精神疾患の場合は、労災にあたるのか、私傷病なのかは、会社側は医師ではありませんし、
産業医に相談してみても産業医は判断できませんので、結果、会社側は、俄かに判断できないということです。
従って、記事にもあるように、精神疾患の場合には、労働者が求めても会社側がサインすることはないでしょう。
これは、ある意味、やむを得ないことなのでしょう。
しかし、経験上申し上げることができるのは、記事にあるような重大な業務を、
35歳の、多分、役職でもない中堅社員が、一切の責任を担うことはありませんから、
上司や管理職がどのような指揮命令を執っていたのかが、労災かどうかの判断材料になるかと考えます。

原発事故賠償で過重労働 東電社員、うつ病で労災申請
2016/11/1 日経

東京電力福島第1原発事故の損害賠償業務に携わった東電社員の一井唯史さん(35)が過重労働でうつ病になったとして、
1日までに中央労働基準監督署(東京・文京)に労災申請した。
本人の説明によると、一井さんは2003年に東電に入社し、11年9月~13年6月に個人事業主を含む法人への賠償業務を担当。
13年2月には賠償の判断を取り仕切るチームに異動し、負荷が高まった。
同年3月の時間外労働は89時間で、
「睡眠不足とミスが許されないプレッシャーで疲労困憊(こんぱい)していた」としている。
13年7月に別の部署に異動した頃から体調不良に悩むようになり、医師は同年9月に「うつ状態」、
14年4月に「うつ病」と診断した。現在は休職中。
東電側は就業規則によって休職期間が終了しても復職できないとし、11月5日付で解雇すると通知している。
東電の広報担当者は「労働基準法に基づいて適正な労働時間管理を徹底していた」としている。

原発賠償「とにかく謝れ」 激務で睡眠不足うつ病に 東電社員が体験証言
2016年10月31日 東京

東京電力の社員で福島第一原発事故の損害賠償業務を担当した東京都の一井唯史(いちいただふみ)さん(35)が
本紙の取材に応じ、職場での過酷な体験を語った。一井さんは三年前にうつ病と診断され休職中。
東電から休職期間終了のため十一月五日付で解雇すると通知されており、
三十一日に中央労働基準監督署(東京)に労災申請をする。 (片山夏子)
一井さんによると、二〇一一年九月から、避難区域内外で営業していて廃業や移転を余儀なくされた会社や
個人事業主らを対象に、事故で発生した逸失利益を計算して賠償金を支払う業務を担当した。
東京都多摩市内の職場で、審査内容や賠償金額に納得してもらえない場合に電話で対応するのが仕事だった。
多いときには一人で百八十社を担当。相手から三時間、しかられ続けたこともある。
それでも、上司からは「審査内容や賠償金額は変えられない。とにかく謝れ」と言われたという。
「国は賠償の支払いを早めるよう求めていたが、東電の賠償金額を審査する部門が急ぐと、審査が雑になり、
支払われるべきものが支払われないなどの間違いが起き、自分たちが受ける苦情の電話が増えた」
一三年二月からは江東区内の職場に移り、特殊な案件について、賠償基準の適用の仕方を社員にアドバイスする担当になった。
十一グループ四百五十人から相談を受ける係だった。
どこまでが賠償の対象になるかなどの判断が難しいケースが多く、深夜帰宅が続いた。
家に帰っても神経が張り詰めていて眠れず、睡眠時間は毎日三、四時間になった。
朝、寝床から起き上がれなくなり、視野が狭まり、吐き気を覚えた。
「忙しすぎて倒れそう」「帰って寝て通勤で勉強してまた帰る感じ。フラフラです」。
家族や友人に出したメールが携帯電話に残っている。
同年七月、立川支社に異動したが、めまいや激しい嘔吐(おうと)で早退や休みを繰り返した。
上司に勧められて九月、心療内科を受診すると、うつ病と診断され休職した。
直前の二~六月の給与明細に記録された残業時間は月五十八~八十九時間だが、
休日に仕事を持ち帰った時間などは含まれておらず、一井さんの計算では九十一~百六十九時間に上った。
今も週に数回、起き上がれない日がある。東電の上司や労務担当者に労災だと訴えたが、
「『多くの社員が事故対応をしてきて特別なことではない』と労災申請をしてくれなかった」という。
一井さんは「原発事故を起こした会社の社員として申し訳なく、被災した人たちに少しでも多く賠償したいと思った。
でも自分がどこまで力になれるかというと…。苦情の窓口では、ひたすら謝って聞くしかできないのがつらかった」と語った。
<福島第一原発事故の損害賠償> 被害に遭った人や企業、個人事業主などへの賠償金は、
国の認可法人「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」から資金の交付を受けて東京電力が支払っている。
東電によると10月21日現在、延べ約250万件、計約6兆3000億円。
東電を含む大手電力会社が負担金を機構に納付している。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする