中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

ストレスチェックの視点④

2015年06月29日 | 情報
まず、社内に、ストレスチェックを実施することを案内してください。
そのポイントは、
・受検しなくてもよい、受検しなくても不利益はない
・個人情報が保護され、安心して受検できる
の2点です。
ストレスチェックを受検しなさいでは、ありません。ご理解いただけますか。

次に、既に産業医と委嘱契約していると思いますが、所謂「名ばかり産業医」は、
今回限りで契約を終了してください。
委嘱料は、当然に高くなりますが、必要経費です。仕方がありません。
むしろ、前を向いて、この費用を如何にして回収するのかを検討してください。
従業員の生産性が5%向上することができれば、容易に回収することができます。
「先行投資」として解釈し、この「先行投資」を結実させることに注力しましょう。
今回のストレスチェック制度の主役は、「産業医」です。

なお、厚労省主催のストレスチェック制度の説明会において、
「産業医は、今回のストレスチェック制度の実施にあたって、人数は充足しているのか?」
と質問したところ、厚労省労働衛生課の解説によると、50人超の事業所数は、全国で約18万か所で、
産業医は、9万人いるから心配は無用であるとの回答でした。
しかし、多くの産業医は、開業医、臨床医です。産業医の仕事は、医師業務の一部、
しかも多くの内科医は、学校医も兼任しています。
さらに、50人未満の事業所については、ストレスチェックの実施に、産業医の委嘱を前提に、
助成金が支給されます。全国の事業所数は、約160万箇所です。
複数の産業医の先生に確認しましたが、産業医数は不足するであろうとの回答でした。
結論として、まだ時間はたっぷりあるといいましたが、
優秀な産業医との契約、これだけは急いだほうが良いようです。

三つ目に、実態のある衛生委員会に脱皮しましょう。
殆ど開催されていない衛生委員会になっていませんか?
衛生委員会を活性化するチャンスです。

基本的には、法令、マニュアルに従い、すべてを衛生委員会で検討し、決定し、
社内に公表することにしてください。
しかし、オリジナルを追及する必要はありません。
衛生委員会で学習し、マニュアル通りに実施すれば良いのです。
おそらくそのようなことは考えないでしょうが、老婆心ながら付け加えます。

例えば、ストレスチェック項目に、独自の質問を追加したいと考えたとします。
しかし、独自のストレスチェックを設定する場合は、「一定の科学的根拠」を求められます
(マニュアルP31具体的なストレスチェックの項目参照)。
一民間企業が、「一定の科学的根拠」を求められても、対応できるわけがありません。
因みに、「一定の科学的根拠」とは何か、「一定」とはどういう意味か?を
直接、厚労省の担当部門である労働衛生課に問い合わせましたが、要領を得た回答はありませんでした。
なお、この「一定の科学的根拠」については、後日改めて解説します。

四つ目、ストレスチェックの対象者は、一般定期健康診断の対象者と同じです。
なお、派遣労働者は、組織分析のために派遣先で受検しますので、本来の受検となる派遣元と合わせて、
二回受検することになります。
実施要領も、毎年実施する、一般定期健康診断と同じです。
要点は、厚労省が指定した項目について、従業員にチェックしてもらい、
産業医の判断を仰げばよい、それだけのことです。
難しく考えないでください。難しくするのは、EAP等機関の常とう手段です。
もちろん、御社の状況を勘案して、良心的な提案をするEAP等の検査機関もあるでしょうが。
なお、若干の費用増になりますので、経営計画には反映してください。

当シリーズは、まだまだ続きます。
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