熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

芸術鑑賞は一人で楽しむもの

2014年09月01日 | 生活随想・趣味
   ある団体の歌舞伎同好会に誘われて入会したのだが、一度出かけただけで、その後、全く行かなくなってしまった。
   元々、私の場合には、オペラにしろ、クラシック・コンサートにしろ、歌舞伎にしろ、家族を誘って行くことはあっても、余程特別でないかぎり、友人や知人など他の人と行ったことはない。
   そんなこともあって、歌舞伎の場合には、もう、20数年間、毎月、歌舞伎座や国立劇場などに、自分の好みや時間を考慮しながら出かけているので、同好会のアレンジする鑑賞会には、まず、演目や日時の選定からしてついて行けないのである。
   それに、私の場合には、独善と偏見と言うか、かなり、恣意的なところがあるので、ついて行って、適当に喋っておれば良いと言うようなパッシブな鑑賞会なら、行かない方が良いのである。

   若い頃からそうだが、クラシック・コンサートに出かける友人は非常に少なかったし、クラシック音楽やオペラを話題にするのも憚られるくらいであった。
   ロンドンにいた頃など、出張などで行けなくなったロイヤル・オペラやロンドン交響楽団のシーズンメンバー・チケットをあげるので代わりに行ってくれと言っても、行ってくれる同僚など殆ど居なかった。
   また、ヨーロッパにいた頃、アムステルダムのコンセルト・ヘヴォーやロンドンのバービカンやコベントガーデンなどで、偶に知人と出会ったりすると、実は隠れクラシックファンでしてと言って笑っていたことがあった。

   海外出張の時でも、避けられない会合や会食などには出たが、極力、夜は自由時間を取って、オペラ劇場やコンサート・ホールに出かけたが、勿論、ひとりでであった。
   個人的な出張や旅行の時には、オペラやクラシック鑑賞のチャンスがあれば、その機会をフルに享受したのだが、当日なのでチケットが取れず、高い切符を手配したこともあった。
   とにかく、こんな調子を続けていたから、友人知人と一緒に劇場に行くなどと言ったことには成り得ないのである。
   ロンドンでは、これが、RSCやロイヤル・シアターなどでのシェイクスピア戯曲やミュージカルへと広がって行ったのだが、やはり、自分一人の趣味が広がったと言うだけであった。

   その後、日本では、まず、歌舞伎・文楽から劇場に通い始めて、もう、20数年。
   好きで、関連本や資料を読み続けているのだが、系統だてて勉強していないので、いまだに、良く分からなくて、ただ、劇場に通って観て楽しんでいると言うだけである。
   それが、最近、能・狂言、落語と古典芸能の鑑賞分野が広がってきた。
   専門家たちは、娯楽であるから、難しく考えずに、観て楽しめば良いと仰るのだが、私にとっては、何時まで経っても難しい。

   分からなくても分かっても、切符を買っては、いそいそと出かけて行くのだから、人様と調子を合わせて鑑賞するなどと言う芸当は出来そうにもないので、一人で楽しむしか方法はない。
   

   色々なパーフォーマンス・アーツを鑑賞して思うのは、やはり、これまでの経験や知識、そして、生活を通じて潜り抜けて来た全人生を打ち込んで味わわなければならないと言うことで、歳を取るにつれて、少しずつだが分かって来ると言うか味わい深くなってきたような気がして、同じ演目でも、しみじみ感動しながら観て聴いていることが多くなった。
   そうであれば、人生のバックグラウンドが違う人とは、やはり、呉越同舟であろうしと、ついつい、考えてしまう。
   尤も、マドンナとなら、また、話が違うかも知れないとは思っている。

   私の元同僚にO君と言うのがいて、私より、芸術鑑賞のキャリアや幅が深いと思うのだが、時々、クラシック音楽や観劇、映画など色々なことを喋ることがあり、これは、非常に楽しいひと時で、啓発されることが多い。
   これなどは、全くのレアケースで、私の場合には、自分の感じや考えを独善と偏見で語り過ぎるきらいがあるので、あまり、話したくないと言う気持ちが強くて、話せないと言うこともあるので、このブログで書く以外に仕方がないと思っている。
   

   誤解を招くといけないので、追記しておきたいのは、私の場合、ロンドンでの生活で、イギリス人の知人たち夫妻と、誘われたり誘ったりして、ロイヤル・オペラやグラインドボーンや野外コンサートなどで、会食を交えた豊かな会話を楽しみながらの鑑賞会を随分経験してきた。
   これなどは、社交の世界で、他のアスコットやクリケットなどでの社交と同じで、非常に楽しくて有意義であって、前述の私の見解とは、全く違った世界である。
   日本でも、何回か経験があるが、このような鑑賞オンリーの世界とは違った親しい人たちとの鑑賞会は、大いにやりたいと思っている。
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