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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

国立演芸場・・・一龍斎貞水「四谷怪談」

2016年06月26日 | 落語・講談等演芸
   今月の国立演芸場の国立名人会は、
   人間国宝一龍齋貞水が届ける本物の恐怖 道具入りの演出と圧巻の話芸 と言うことで、講談「四谷怪談」。
   中入り前には、
   一龍齋貞友の講談「木津の勘助」、林家今丸の紙切り、春風亭柳橋の落語「妾馬」
   しかし、中入り後は、貞水の「四谷怪談」のみ。

   「講談師、夏はお化け、冬は義士で飯を食い」と言うことのようだが、貞水の怪談には定評があり、特に怪談に関しては特殊演出効果を駆使した「立体怪談」と、その取り組みが関心を呼び「怪談の貞水」と言われているのだと言う。
   この日は、正に、その定評のある「立体怪談」で、幕が揚がると、舞台そのものが、墓場の破れ屋敷の風情で、苔むした演台を前にして、貞水が座って語り出すと言う手法である。
   別の公演のチラシにあったのだが、”貞水の迫力ある声と表情に、照明や道具、音楽という演出を加えた「立体怪談」は、まさに“恐怖”倍増! 悲しみ、恨み、恐怖におののく人物たちを巧みに描き分ける、貞水の変幻自在の芸には感服
   とにかく、薄暗い舞台で、ストーリーの展開に合わせて、変幻自在に変化する演台の下から差し込む照明が貞水の表情を変え、不気味に奏でられる下座音楽が感興を添え、火の玉が飛び出し、障子に幽霊の影が浮かび出て、血しぶきが飛ぶ。
   話術の冴えも、ここまで昇華されると、一人芝居の迫力を越えて、グランドオペラのスケール展開である。
   私としては、オドロオドロシイ怪談と言うよりは、壮大なシェイクスピア戯曲を観て聴いているような感慨を覚えて感激であった。
   
   
   さて、「四谷怪談」だが、4代目鶴屋南北の代表作「東海道四谷怪談」が元になっているようで、歌舞伎の舞台となり、ここは、
  塩冶家の浪人四谷左門の娘お岩とお袖の姉妹を巡る怪談劇で、お岩の極悪非道の夫民谷伊右衛門が、伊藤喜兵衛の孫娘に惚れられて、婿に伊右衛門を迎えたい喜兵衛が仕込んだ毒薬によって、お岩の面相が爛れて醜くなり、騙されたと知って激しい恨みを残して壮絶な死を遂げる。この後、お岩の幽霊が出没して伊右衛門を悩ますと言うストーリーがお馴染みである。

   しかし、この貞水の講談の「四谷怪談」は、ほぼ、この「お岩無念」や「伊藤喜兵衛の死」のパートを語っているのだが、少し、話が変っていて興味深い。
   メモを取っていないので、詳細は紹介できないのだが、伊右衛門と喜兵衛の孫娘との結婚画策までは同じなのだが、毒薬の話ではなく、邪魔になったお岩が、夫伊右衛門が借財をしたと騙されて救済のために岡場所に売り飛ばされ、顔が醜いので客を取れず下働きで扱き使われる。偶然出会った下賤に伊右衛門の真実を聞き知ったお岩は、恨み辛みに狂って姿を消す。その後、出没して伊右衛門たちに祟り、孫娘も喜兵衛も殺されて行き、伊右衛門は、僧侶に頼んでお岩の怨霊を地中に封殺するのだが、仲間割れした仲間が怨霊を解き放ったので、再び伊右衛門に祟り始める。
   最後には、伊右衛門が、お袖と夫によって殺されてストーリーが終わるようだが、貞水の講談は、前半途中で幕となった。
   講談は、何回か聴いてはいるのだが、講談師が釈台を叩いて語り続ける舞台なので、このような音や光や舞台そのものが躍動するパーフォーマンスアーツ仕立ての「立体怪談」を観て聴くと、一気にイメージが変わってくる。
   同じような落語の舞台も観て聴いた記憶があるが、やはり、舞台に幅と奥行きが出て豊かになって良い。
  
   一龍齋貞友の講談「木津の勘助」は、正に、大阪のおばちゃん講談師が、立て板に水の名調子全開で語っていると言う雰囲気だが、沢山のポピュラーなテレビアニメの声優をしていて、七色の声で変幻自在の豊かな語り口の魅力は抜群であり、とにかく、面白くて感激しきりであった。
   春風亭柳橋の落語「妾馬」は、長屋の住人八五郎の妹が、お殿様の妾となって出世し、呼び出された八五郎が、殿様の前で頓珍漢の受け答えをするのだが、面白いので家来に取り立てられると言う「八五郎出世」噺である。
   さすがに、ベテラン柳橋の名調子で聴かせる。
   
   
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