熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

テロ回避はアメリカのパレスチナ政策変更がキイ

2007年09月15日 | 政治・経済・社会
   現在、国際テロ関連組織は中近東にほぼ集中しているが、アル・カイダ関連以外のハマス、イスラム聖戦、ヒズボラなどは、イスラエルの脅威にはなっても、アメリカさえも標的にしていない。
   アルカイダは、世界規模でのイスラムの復興を実施に移し、またカリフの地位を復活させたいと言う願望を抱いているようだが、ビン・ラディンが、幼少の頃から最も心を痛めていたのは、パレスチナ人が被っている不幸な境涯と不公正な扱いで、その張本人であるイスラエルをバックアップするアメリカの不公正で、犯罪的で、暴政的な政策を許せないと言う思いが反米の強力な動機である。
   このことは、オサマ・ビン・ラディン自身が、CNNのP・アネットにも語っており、
   エコノミストのM・ローデンベックも「パレスチナ人が被っている不公正に対する報復と言う考え方こそ、ビン・ラディンの演説で最も力を込めて繰り返されるテーマである。」と述べており、
   9.11調査員会も「ビン・ラディンその他のアル・カイダの最重要メンバーは、イスラエルのパレスチナ人に対するひどい行状と米国のイスラエル支援が動機となって行動した。」と総括している。

   このように、アメリカのイスラエル外交の見直しを説くのは、「イスラエル・ロビーとアメリカの外交」の著者ミアシャイマー教授とウォルト教授である。
   米国がテロの問題を抱えている理由の可なりの部分は、長らくイスラエルを支援してきたからで、これが中近東での反米感情を煽り米国不人気の原因なのだが、この偏った米国の一方的な政策がどれほど高くついたのか、アメリカ人は殆ど知らない。
   これらの政策が、アル・カイダを勢いづかせただけではなく、アル・カイダの隊員確保を容易にし、アラブ・イスラム地域全体に反米主義を広めるのに寄与していると言う。

   パレスチナ問題以上に、アラブ人が広く強烈に米国に怒りを感じる問題は他にない。
   歴史解釈で、何時もは対立するアラブ世俗派とイスラム至上主義者が一致を見るのはパレスチナ問題だけで、自由と人権を擁護する救世主だと豪語する米国の公式見解と現実の政策との余りのもかけ離れた巨大な溝について、アラブ全員が共通の受け止め方をしてからである。
   アラブ・イスラムの人々は、四六時中爆撃を受けて生活苦に泣くパレスチナ人の被害と苦境を心底から悲しんでおり、アラブの親米政権でさえも、自分たちと米国との結びつきについて国民に不満を巻き起こすような政策を止めて欲しいと必死に願っていると言う。

   両教授は、イスラエルの建国について、
   「ユダヤ人がアラブに乱暴な策を取らずに、既にアラブ人が住んでいた所にヨーロッパから来て、自分たち独自の国を創ることなど、そもそも出来る事ではない。ヨーロッパ人が、原住民に重大な犯罪を働くことなしに米国とカナダを創ることが出来なかったのと同じである。
   シオニストがパレスチナで、この地域の住民に犯罪を働かずにイスラエルを建国することは実質的に不可能であった。
   彼らがユダヤ人たちの不法侵入に憤り、抵抗するのは火を見るより明らかでであった。」とまで言うのである。

   最近では、「アルジャジーラ」などのメディアが、毎日のように、イスラエルが占領地区で支配下のパレスチナ人を虐待している沢山の証拠を白日の下に曝し続けている。
   もし米国が人道的理由だけを基準にしてどちらかを選ぶとするなら、イスラエル側ではなくパレスチナ側を援助すべきであり、そうでなければ、米国の基本的価値観と衝突する。
   なんと言っても、イスラエルは裕福で、中東で最強の軍隊を保有している。
   しかし、ブッシュは、強くて恵まれたイスラエルしか助けない。

   アメリカ人は、イスラエルは弱く、広大なゴリアテのよう強い敵・アラブ・イスラム世界に囲まれた孤立無援の国であると教えられ続けているが、事実は全く逆である。
   イスラエルは、中東最強の軍事大国であり、イスラエルの通常戦力は周辺諸国より格段に優れていて、それに、ずっと以前から中東地域で核兵器を保有する唯一の国なのである。どんなアラブの国もイスラエルに武力攻撃など不可能であり、もとよりアメリカの援助など必要がない。
   イランの核保有が取りざたされているが、たとえイランが核を保有しても、数百発の核弾頭を保有するイスラエルを攻撃すれば、瞬時に国が消滅してしまう。

   両教授は、アメリカのイスラエルに対する常軌を逸した異常な軍事等の支援・援助を即刻止めるように提言しており、イスラエルが、パレスチナ人に対する不公正で非人道的、抑圧的かつ暴力的な圧制を改めれば、世界のテロ行為の相当部分は消滅すると考えている。
   現在のイラクでのアメリカのオーバー・プレゼンスが問題だが、しかし、オサマ・ビン・ラディンの大義名分の相当部分が消滅する。

   テロ対策特別措置法に拘って安倍総理が辞めるが、もう一度原点に戻って、アメリカのイスラエル外交を含めた中東政策を考えてみれば、日本外交の選択すべき道ははっきり見えてくる。
   世界の平和のために、アメリカが自ら務め様としているグローバル警察としての役割が適切なのかどうか、そして、アラブ・イスラム世界にとってイラクやアフガニスタンのようにアメリカのオーバー・プレゼンスが必要なのかどうか、はっきり先が見えてきている。

   何十年も昔になるが、サウジアラビアのリアドで、合弁会社のパレスチナ人のカイード総務部長に、故郷は何処かと聞いて、不用意に「占領地区?」と相槌を打ったら、彼は激昂して私を椅子に釘付けして何時間も抗議を止めなかった。
   彼は、給料の中から、アラファットにせっせとパレスチナ税を納めていたが、あのパレスチナ人の怒りは、私たち日本人の想像を絶するものであることを、十分に認識すべきだと思っている。
   
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