IMFは、2024年10月に、「政策の転換、高まる脅威」として、「世界経済見通し」を発表し、「世界経済の成長は、今後も安定し続けることが見込まれるものの、勢いが欠けそうだ」と報じた。
2024年と2025 年はともに、成長率が3.2%となる予想だ。これら予 測値は、2024年4月の「世界経済見通し(WEO)」お よび2024年7月の同改訂版から実質、変わりない。 しかし、水面下では大きな変化が見られる。今般、欧 州の大国諸国を中心に、先進国の成長率予測が下 方改定された。一方で、こうした下降分を相殺するか たちで、米国の予測値が上方改定された。新興市場 国・発展途上国についても同様に、石油を中心とし た一次産品の生産・供給の寸断、紛争、社会情勢不 安、異常気象現象にともなって、中東・中央アジアと サブサハラアフリカの成長率予測値が引き下げられ た。一方で、アジア新興市場国の見通しは上方改定 され、中東・中央アジアとサブサハラアフリカの下方 改定分を相殺している。アジア新興市場国では、人 工知能への大規模投資によって半導体や電子機器 に対する需要が急増しており、成長が促進されてい る。世界経済の5年後の成長率は、最新予測で3.1% と見込まれており、パンデミック前の平均値と比べる と依然さえない数字だ。高齢化や生産性の低迷など 構造的な逆風が根強く残り、多くの国で潜在成長率 が 抑 制 さ れ て い る 。と言うのである。
インフレについては、
主要経済国では、年初と比較して、循環的な不均 衡が緩和しており、潜在GDPと経済活動が前より一 致している。この変化によって、各国の物価上昇率が 収斂しつつあり、総じて、世界のインフレの減速に貢 献してきた。世界の総合物価上昇率は、年間平均値 が2023年の6.7%から2024年は5.8%、2025年は 4.3%へと低下していくことが予想されている。インフ レ率の物価目標への回帰は、新興市場国・発展途上 国よりも先進国で早く達成されることになるだろう。 ベースラインと概ね合致するかたちでディスインフレ が世界的に進行していく中でも、物価安定への道が 平坦ではない可能性がまだある。財の価格は安定し たが、サービス価格は今も、多くの地域で高止まりし ている。この点を踏まえると、部門別の力学を理解し たり、金融政策を適切に調整したりすることの重要 性が窺える 。
また、構造改革について、
世界が低成長や人口動態の変化、グリーン経済への移行・技術的移行に関連する課題に取り組む中で、構造改革が急務となっている。しかし近年、改革の取り組みは、強まる市民の抵抗を前に後退しつつある。構造改革の社会的受容性を詳しく掘り下げ、世間の態度の原動力や、支援を拡大するさまざまな戦略の有効性を調査した結果、市民の抵抗は経済的な自己利益よりも、認識、誤情報、そして信頼の欠如にしばしば原因があることが明らかになったので、改革の必要性に関する意識の喚起や、政策の仕組みに関する誤解の是正といった情報戦略が大衆の支持を促進する必要がある。効果的な戦略は、信頼を育む強固な制度的枠組みや、関係者と一般市民による双方向の対話で補完するべきである。

以上が、IMF報告の要旨であり、参考として利用できる。
新春に、イアン・ブレマーが、どのような「世界10大リスク」を発表するか楽しみである。
さて、この予測を踏まえて、かんべえ(吉崎 達彦)が、「2025年はトランプ構文がわかれば意外に怖くない 3つの視点で来年の世界経済を展望してみよう」と論評しているのだが、私が気になったのは、
エド・ハイマン氏は2017年3月のレポートでこんなことを書いていた。
「トランプの成長戦略には3つのチャネルがある。①Fiscal Stimulus(財政刺激策)、②Deregulation(規制緩和)、③Animal Spirits(アニマル・スピリッツ)――楽観度の平均、つまり消費者、住宅建設業者、中小企業、CEO のアニマル・スピリッツは過去最高レベルに達している」。と言う点。
このアニマルスピリットである。
アニマルスピリット(デジタル大辞典)は、ケインズが、「雇傭・利子および貨幣の一般理論」のなかで使用した用語。経済活動の多くは合理的動機に基づいて行われるが、その一方で、将来の収益を期待して事業を拡大しようとする、合理的には説明できない不確定な心理によって左右されるとし、その心理をいったもの。「血気」「野心的意欲」「動物的な衝動」などと訳される。
ジョージ=アカロフとロバート=シラーは2009年に発表した共著「アニマルスピリット」の中で、人の心理が世界金融危機に及ぼした影響を分析し、アニマルスピリットを取り込んだマクロ経済学の必要性を説いている。
アニマルスピリットについては、これまでにも何度も書いてきたので、説明は省略するが、
シュンペーターの「創造的破壊」の原動力であり「イノベーション」を誘発する。巨大な機動力で炸裂すれば、旧体制を破壊して、政治経済社会の世界を、一気に、革命的に変革する。
トランプ自身のアニマルスピリットがどのようなものか分からないが、問題は、今や世界最大のアニマルスピリットの体現者であり稀有な創造的破壊者のイーロン・マスクの巨大ダイナマイトの炸裂が、どれほど強烈なものかと言うことで、大いに見ものである。
これ以上望むべくもないほどの創造的破壊者なので、秩序破壊的なマイナス要因を引き起こして、政治経済社会を混乱に陥れるかも知れない。
しかし、これまで、アメリカの歴史では、有効なカウンターベイリング・パワーが働いて、窮地を救って、健全なアメリカ社会を維持してきている。
アメリカの良心が働いて、素晴らしい創造的破壊を発揮することを祈りたい。