熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

新春国立名人会・・・小三治の「小言念仏」

2017年01月07日 | 落語・講談等演芸
   国立演芸場の新春国立名人会の千穐楽の公演を聴いた。
   とにかく、7日まで全8回、江戸落語のスターが総登場と言う豪華版で、近くに住んで居れば毎日でも通いたいと思う程の名人会である。
   7日のプログラムは、次の通り。
《落語》柳家花緑  親子酒
《音楽パフォーマンス》のだゆき
《落語》金原亭馬生  ざる屋
《漫才》すず風にゃん子・金魚
《落語》桂文楽  掛け取り
 仲入り
《奇術》ダーク広和
《落語》柳家小さん  幇間腹
《紙切り》林家正楽
《落語》柳家小三治  小言念仏

   開口一番、今日のお客さんの中には、酔っぱらっている人がおられる。と言って、
   まず、小三治の謂れから話し始めた。
   真打に昇進した時に、新宿の末広亭で、小さん師匠から、お前は、小三治だと言われた。 
   それまで、三治だったので、小さくなるのかと思って不満だったがクレームなどつけられない。
   大事な名前だといわれたのだが、その後、どうしても確かめたくて、小さくなったのですかと聞いたら、大きくなったら大変だと言われた。
   もう、大三治(大惨事)にはなりませんと答えたと言う。

   昨年同様、舞台に飾られている立派な正月飾りの鏡餅を観て、褒めながら、国の予算からで税金が・・・と語って笑わせていた。
   新宿の末廣亭の、11日から始まる二の席で、夜のトリを取るので、毎年、27日に立派な二段の鏡餅を貰うのだが、餅だけなので、近所の店から、エビ飾りを買ってきて、玄関のげた箱の上に、自分で飾り付ける。
   説明書きはあるのだが、昆布を忘れたり、途中で順序を間違えて、また、一からやり直すなど、大変で、やめて欲しいくらいだと語る。

   立派な本物のエビ飾りを見ながら、縁起物だと言うことで、某演芸場でも本物を飾るのだが、21日まで飾りっぱなしなので、臭いが大変。
   この演芸場は、日頃は人通りが少ないのだが、正月には大変な賑わいで、立錐の余地がないほど客が入り、高座の席近くまで、はっさん熊さんが詰めかける盛況なのだが、外では益々景気よく客を呼び込んで入れる。そうすると、暖房をどんどん上げて、暑さと湿気に耐えられなくなった客が出て行くので、入れ替えられる。
   今は、ましになったが、一年を7日で取り戻そうと言う商魂、と言って笑わせていた。

   興味深ったのは、昔では普通であった、春の七草、七草粥が、今では、忘れられようとしているのを懐かしみながら、
   子供の頃、どこの家でも、7日の朝には、母がまな板を叩く音が聞こえて、今日は七草の日だと気づいたと、しんみりと語っていた。
   昔は、七草を野辺で一つづつ摘んだのだが、今では、スーパーで、七草セットが売られていると言う。
   せり、なずな、と語り始めたら、時々度忘れするので、客席から、ゴギョウ、ハコベラ・・・と声が返ってきたので、憮然として、秋の七草の時は、難しいと言いながら、聞いてないから言わなくてもよい。と釘を刺していた。

   今回の人間国宝小三治の出し物は、昨年と同様の「小言念仏」。
   この世には、陰と陽があり、宗教でもそうで、南無阿弥陀仏が陰、南無妙法蓮華経が陽だと題目を唱えながら語り始めて、
   前回は、ドジョウを料理して、「腹出して皆浮いちゃたぁ、ざまあ見ろ」と言うところまで語ったが、今回は、妻の呼び声では聞こえないと思って、念仏途中大声でドジョウ売りを呼び止めて、念仏と呼び込みがごっちゃになったところで、話を終えた。
   木魚代わりに、右手に持った扇子で、リズミカルに床を叩きつつ、ナムアミダー、ナムアミダーと念仏を唱えながら、女房の一挙手一投足や這い寄ってくる赤ちゃんの仕草を見て小言を言ったり、ドジョウ売りの呼び込みに気を取られ、真面目腐った表情で語り続ける。
   妻に話しかけられると、信心に身が入らないと言って怒るのだが、とにかく、小三治の語り口が秀逸で、実に面白いのである。

   予定の持ち時間は、20分だったのだが、まくらが長かったので、終焉時間を25分も過ぎていた。
   
   
コメント
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