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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ドイツ企業のグローバル戦略・・・日独経済シンポジューム

2005年10月16日 | 経営・ビジネス
   10月14日、日経ホールで、日経とベルリン日独センター共催の「日独経済シンポジューム~大競争時代を勝ち抜くグローバル経営~」が開催されたので聴講した。
   ヨーロッパから帰国してから時間が経ち、国際ビジネスからも遠ざかってしまったので、ドイツ企業がどのように変貌を遂げてきたのか興味があった。

   ドイツから、SAP,ヘンケル、トルンプ、EADS,ルフトハンザ、ダイムラークライスラー、ドイツ・ポスト・ワールドネット等のトップが参加して、夫々の企業の世界戦略等について熱っぽく語っていた。

   総じて、特別変わった印象を受けなかった。
   ボーイングを射程距離に捉えて躍進中のEADSが、独仏西などの全く異質なヨーロッパ諸国の国際コンソーシャムでスタートし苦難の連続だったが、(例えば、各国の機関がまちまちでCEOが2人居たりで組織的にもなっていなかったが、)エアーバスA380の開発を通じて国際協力の実が表れてやっと企業の体をなしてきた話等は面白かった。
   しかし、EU,EUと言いながら、いまだにドイツ企業は、純粋のドイツ企業として個別の戦略戦術で経営をしていて、EU内の企業としてのアプローチ希薄なのが意外であった。

   私の興味を持った論点は、民営化とグローバル化への対応であった。

   まず、民営化であるが、ドイツ・ポストのツムヴィンケル会長(ビデオ参加)の話は、赤字を垂れ流し非効率極まりなかった国営企業を民営化し、いかにして、今日の世界的な優良企業に再生したのか、日本の郵政民営化にとっても役に立つ興味深い話であった。
   特に、郵便事業や国際的なロジスティック方面の話が主体であったが、経営トップの確たるビジョンと明確な戦略の保持がいかに重要であるかを強調していた。
   郵便事業の自動化率を急速にアップして経営を合理化し全国展開を実現して、現代では1.06日以内に総て配送可能だと言う。
   グローバル展開は必須で、世界の優良企業をM&Aでローカルのノウハウごと吸収合併して世界トップのブローバルプレイヤーを目指すとしている。
   民営化とグローバライゼーションが、最大の企業改革と躍進のチャンスを与えてくれたと言う。
   印象的だったのは、このシンポジュームを企画推進したコンサルタント会社のローランド・ベルガー会長が、利益や効率性を追求する企業形態としては、公営企業は、全く不向きであると、吐き捨てるように言っていたことである。
   ソ連だけではない、ドイツも官僚機構の強い国で、同じ問題を抱えていたのであろう。

   グローバル化戦略であるが、SAPのようにハイテクでアメリカンスタンダードが巾を利かせる世界では、いかに、アメリカ企業に遅れずに対応できるかが問題であるが、興味深かったのは、他の企業は、まず、ローカルでの事業で確乎たる地歩を築いて、その上でのグローバル戦略の確立が大切であることを強調していたことである。

   ヘンケルは、ハーバードのセオドア・レビット教授の「マーケティングの革新」で消費者や製品やブランドが単一化すると述べたが、全く現実は逆で、個々の市場に合ったローカルの顧客を満足させ得る商品を開発し生産するのが大切であると言う。
   その為に、プロダクツを性能、ブランドを心理的な消費者の好み、と捉えて、夫々の製品をマトリックスで位置付けてローカル市場に合わせた製品の開発戦略を打っている。

   ルフトハンザは、航空業界では、コスト競争力が最大のポイントで、他業種のように事業場を移転不可能である以上、ローカル拠点で成功しない限り事業の成功はあり得ないと言う。
   その上で、世界のブルーチップ・キャリアーとのアライアンスを確立して、グローバル化に対応することが大切だと強調する。

   トルンプは、工作機械や工業用レーザーの会社だが、非上場の同族会社で完全に社会的に閉鎖された会社で、昔の日本企業のように専門性の高い優秀な社員を擁した超優良企業で、ローカル重視ながら、世界最先端を行く事業でグローバル化を推進している。

   ダイムラー・クライスラーは、トラック部門だけに限られていたが、製品の基本的な開発や設計はドイツ本社が担当するが、ローカル市場にあった製品の開発生産、販売等はローカル企業に任せており、アジアでの三菱FUSOの役割は極めて貴重なのだと言う。

   これ等の話を聞いていて、やはり、堅実なマイスターの国の伝統が息づいていることを、改めて強く感じた。
   しかし、ドイツの最大の特色は、労働組合なり労働者の力が強いことが問題であり、これが、ドイツ企業の競争優位の足かせとなりドイツ経済の足を引っ張っており、抜本的な労働市場の改革が必須であると言われている。
   現実に、同じ様に民度が高く技術重視の伝統を持ちながら、労働コストの安いチェコやハンガリー等中欧への生産拠点の移動が進んでいるなど、ドイツ国内で解決しなければならないことが多い。
   ドイツ企業が、まず、EU域内でどのような支配体制を敷くのか興味深い問題でもあるし、最近、急増しているアメリカ企業のM&Aがどのように展開するのかも知りたい。

   面白そうなので、改めてドイツ経済なりドイツの産業構造について勉強しなおそうと思っている。

   
コメント
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