「アメリカ後の世界」の中で、アメリカの将来について、ザカリアは、中国やインドでの新卒技術者数が、アメリカのそれを圧倒しており、アメリカの科学技術の将来は危ういと言う通説は、完全に間違っていると論破し、アメリカの高等教育の卓越性は、他の追随を許さないと説いている。
中国とインドの数字には、簡単な技術しか習得していない二年制三年制の大卒者が過半で、それに、自動車整備士や修理工まで含まれているとすれば、質では、アメリカの方がはるかに上で、人口比では比べものにならないと言うのである。
また、ザカリアは、世界に冠たるインド工科大学(IIT)についても、10億の国民から選ばれた最良の頭脳であることは間違いないが、「平凡な設備、無気力な教師、創造性に欠ける授業など、実際のIITは様々な面で二流の教育機関」だと言う。
IITの優秀性は、優秀な学生を選抜する良く出来た入試試験だが、教師と施設の質では、アメリカの月並みな工科大学の足元にも及ばない。たとえ、IITなどを卒業しても、インドや中国では、大学院教育の質が極端に低いので、数多くの学生が留学のために故国を離れなければならない。
毎年、インドでコンピュータ科学の博士号取得者は、35~50人だが、アメリカでは1000人だと言うのである。
もう一つのアメリカ教育の欠陥として指摘されている小中高の学力の低さだが、アメリカの真の問題は、教育の質が悪いと言うのではなく、教育へのアクセスが悪い点にある。アメリカ国内の地域間、人種間、社会経済的地位間の成績のばらつきは、総合点からは見えて来ないが、マイノリティの貧困層に属する子供の成績が、大きく足を引っ張っている所為である。
上位20%の生徒は世界のトップクラスで、正課と課外の区別なく、不眠不休で勉学に励む姿は、アイビーリーグを訪問すれば誰でも見ることが出来ると言うのである。(私も、アイビーリーガーだったが、勉強をよくするのは確かだが、不眠不休は疑問。)
ザカリアは、「高等教育こそがアメリカの最優良産業だ」として、中国の研究者による定量分析と、英国の「タイムズ高等教育便覧」による世界の大学ランキングを引用して、上位10位の内、アメリカの大学が、夫々8校および7校占めており、優良大学の過半はアメリカであり、人口5%のアメリカが、高等教育の分野を完全に支配していることは事実だと言う。
このことについては、大前研一氏も、近著「さらばアメリカ」において、同じくタイムズの資料に基づいて、「アメリカの強さの秘密は大学にあり」として、アメリカの高等教育制度の突出した優秀性について言及している。
ただし、アメリカの大学のレベルが高いのは、アメリカ人の知能レベルが高いからではなく、驚くほど国際化して門戸を開いて世界中から優秀な人材を集める仕掛けをビルトインした国境を越える「人材吸収システム」にあるのだと強調している。
このタイムズ2008ランキングには、東大が19位に入っているのだが、最近の事情は疎いにしても、私自身の日米での経験から言えるのは、ほかの事はともかく、日本の学生は勉強しなさ過ぎると言うことで、学生が、学問芸術を軽視し知への憧れと探求を怠っていると言うか、この程度のお粗末な勉強量では、知の爆発しているグローバル時代に対応など出来る筈がないと感じている。
ザカリアの説明で面白かったのは、インドの教育システムは、英国式ないしヨーロッパ式の教育手法の影響で、日本と同じような暗記と頻繁な試験を重視する詰め込み式で、自分自身、「毎日大量の知識を頭に詰め込み、試験の前には一夜漬けで暗記をし、翌日にはすっかり忘れると言うことを繰り返していた」と言う。
ところが、留学先のアメリカの大学は、別世界で、正確性と暗記は求められず、人生での成功に必要なこと、精神機能の開発に重点が置かれていて、考えるための教育であった。
アメリカが数多くの起業家、発明家、リスクテイカーを生んでいるのは、この資質ゆえでもあり、知力には試験で測れない部分があって、アメリカには、想像性、興味、冒険心、大志などを育む学びの文化がある。
この文化は、人々に、伝統的な知恵や権威に挑戦する力を育み、失敗を犯し失敗から這い上がる力を与えるとともに、学生の創意と機転と問題解決能力を育て優秀な学生が報われる制度を醸成していると言うのである。
これらの論点については、このブログで何度も論じているので、これ以上の深入りは止めるが、ザカリアも大前研一も、アメリカの衰えについて言及していながら、アメリカの底力である知的世界への挑戦力の健全性を説いている点を注視したいと思っている。
中国とインドの数字には、簡単な技術しか習得していない二年制三年制の大卒者が過半で、それに、自動車整備士や修理工まで含まれているとすれば、質では、アメリカの方がはるかに上で、人口比では比べものにならないと言うのである。
また、ザカリアは、世界に冠たるインド工科大学(IIT)についても、10億の国民から選ばれた最良の頭脳であることは間違いないが、「平凡な設備、無気力な教師、創造性に欠ける授業など、実際のIITは様々な面で二流の教育機関」だと言う。
IITの優秀性は、優秀な学生を選抜する良く出来た入試試験だが、教師と施設の質では、アメリカの月並みな工科大学の足元にも及ばない。たとえ、IITなどを卒業しても、インドや中国では、大学院教育の質が極端に低いので、数多くの学生が留学のために故国を離れなければならない。
毎年、インドでコンピュータ科学の博士号取得者は、35~50人だが、アメリカでは1000人だと言うのである。
もう一つのアメリカ教育の欠陥として指摘されている小中高の学力の低さだが、アメリカの真の問題は、教育の質が悪いと言うのではなく、教育へのアクセスが悪い点にある。アメリカ国内の地域間、人種間、社会経済的地位間の成績のばらつきは、総合点からは見えて来ないが、マイノリティの貧困層に属する子供の成績が、大きく足を引っ張っている所為である。
上位20%の生徒は世界のトップクラスで、正課と課外の区別なく、不眠不休で勉学に励む姿は、アイビーリーグを訪問すれば誰でも見ることが出来ると言うのである。(私も、アイビーリーガーだったが、勉強をよくするのは確かだが、不眠不休は疑問。)
ザカリアは、「高等教育こそがアメリカの最優良産業だ」として、中国の研究者による定量分析と、英国の「タイムズ高等教育便覧」による世界の大学ランキングを引用して、上位10位の内、アメリカの大学が、夫々8校および7校占めており、優良大学の過半はアメリカであり、人口5%のアメリカが、高等教育の分野を完全に支配していることは事実だと言う。
このことについては、大前研一氏も、近著「さらばアメリカ」において、同じくタイムズの資料に基づいて、「アメリカの強さの秘密は大学にあり」として、アメリカの高等教育制度の突出した優秀性について言及している。
ただし、アメリカの大学のレベルが高いのは、アメリカ人の知能レベルが高いからではなく、驚くほど国際化して門戸を開いて世界中から優秀な人材を集める仕掛けをビルトインした国境を越える「人材吸収システム」にあるのだと強調している。
このタイムズ2008ランキングには、東大が19位に入っているのだが、最近の事情は疎いにしても、私自身の日米での経験から言えるのは、ほかの事はともかく、日本の学生は勉強しなさ過ぎると言うことで、学生が、学問芸術を軽視し知への憧れと探求を怠っていると言うか、この程度のお粗末な勉強量では、知の爆発しているグローバル時代に対応など出来る筈がないと感じている。
ザカリアの説明で面白かったのは、インドの教育システムは、英国式ないしヨーロッパ式の教育手法の影響で、日本と同じような暗記と頻繁な試験を重視する詰め込み式で、自分自身、「毎日大量の知識を頭に詰め込み、試験の前には一夜漬けで暗記をし、翌日にはすっかり忘れると言うことを繰り返していた」と言う。
ところが、留学先のアメリカの大学は、別世界で、正確性と暗記は求められず、人生での成功に必要なこと、精神機能の開発に重点が置かれていて、考えるための教育であった。
アメリカが数多くの起業家、発明家、リスクテイカーを生んでいるのは、この資質ゆえでもあり、知力には試験で測れない部分があって、アメリカには、想像性、興味、冒険心、大志などを育む学びの文化がある。
この文化は、人々に、伝統的な知恵や権威に挑戦する力を育み、失敗を犯し失敗から這い上がる力を与えるとともに、学生の創意と機転と問題解決能力を育て優秀な学生が報われる制度を醸成していると言うのである。
これらの論点については、このブログで何度も論じているので、これ以上の深入りは止めるが、ザカリアも大前研一も、アメリカの衰えについて言及していながら、アメリカの底力である知的世界への挑戦力の健全性を説いている点を注視したいと思っている。