豪華列車の旅というのがある
ななつ星in九州や、JR東日本の四季島、JR西日本のトワイライトエクスプレス瑞風などは一泊二日で36万円から71万円もする超豪華な旅だ。
たかが列車の旅にそんな大金出すのかと思うのだが、超高額に相応する列車の諸施設も超豪華らしい。
人間国宝が焼いた有田焼の洗面器、じゃなかった洗面鉢。
洗面器も有田焼ともなると洗面鉢というらしい。
クローゼットの中のハンガーが「世界的に高い評価を受けた〇〇工芸のもの」
とかヒノキ風呂があったり、トイレの便器が天然木を用いたりと心配りが素晴らしい。
食事の時、バイオリンを弾いてくれるというも聞く。
クルーも超豪華、超笑顔の超美人揃い。
豪華列車というのは、つまるところ、お宝展示会の会場が線路の上を走っていくということになる。
日本には天皇陛下の専用列車である「お召し列車」しというものがある。
ソファもテーブルも窓枠も、そこにかかっているカーテンもかなり豪華ではあるがヒノキ風呂まではついていない。
多分、畳の和室もついていないだろうし、洗面鉢も有田焼ではないと思う。
われわれは今や天皇陛下以上の列車に乗っていることになるのか。
列車内どこもかしこも豪華造り。
便器の蓋さえ天然木。
紙のほうだって多分、高度な漉き方をしたいい紙を使っていて、巻き取るときカラカラと高級な音がする。
窓枠ひとつにも金を使ってるはずで、そこに掛かっているカーテンだって西陣織りとかナントカ織りとかの高級品を使っているはずだ。
つまりどこにもかしこにも金をかけている。
だが、ただ一つ、何とかして金をかけたいと思ってもかけられないものがある。
それは車窓から見える景色である。
豪華列車側からすれば、高級化できるものであれば景色も金をかけて高級化したいと思っているはずだが、景色ばかりはどうすることもできない。
遠くに見える山々、近くに見える田や畑、連なる民家、眼下を流れる小川、牧場で草を食う牛たち。
これらを何とかして高級化したい、どうやったら高級化できるか。
その方面の関係者たちは、今でも日夜頭を悩ましているに違いない。