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ぽかぽか春庭「店のさきにも春の唄・漢字も歌う絆」

2012-03-25 00:00:01 | エッセイ、コラム
2012/03/25
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>赤い花束車に積んで(3)店のさきにも春の唄・漢字も歌う絆

♪ラララ 啼けよチロチロ 巣立ちの鳥よ 春が来た来た 森から町へ
 姉と妹の あの小鳥屋の 店のさきにも 春の唄

momosukeさんから質問がありました。(2012-03-14 10:40:44)
>絆という言葉は糸を半分づつ引っ張っているという意味なのですか?

>hal-niwa返信コメント(2012-03-14 20:04:16)
 「絆」という字の旁は現在使われている「半」ではなく、上側は「八」になっています。「一つ」のものをふたつに「分ける」という意味の「八」です。下側の本字は「牛」です。中国でこの文字が作られたときは、「牛の足をつなぎ止めるヒモ」「拘束具」という意味でした。
 そこから、「絆」は、「牛や馬の脚をつなぎとめる網」「拘束するもの」「つなぎとめるもの」という意味になりました。
~~~~~~~~~
 と、コメントしたのですが、説明に不足や誤記があったので、もう少し詳しく字源について述べます。
 春庭の「にほんごの店」、店先にもHALのうた。

☆    ☆    ☆    ☆    ☆
 漢字の字源には、諸説があります。漢和辞典によっても、異なる説明が出ているのです。さらに後世になるほど「通俗字解」というものが出てきて、わかりやすくはあるけれど、本来の漢字の意味とは異なる説明になっていたりします。中国で古来から行われてきた字源研究にも、通俗字解が混じっていて、それを日本の学者が信じて本に残し、それが通説になる、という場合も多い。

 長らく漢字字解の本家とされてきたのは、中国後漢時代の『説文解字』です。『説文解字』は最古の部首別漢字字典で、後漢の許慎(きょしん)が篆書の文字を分類し、紀元100年(永元12)に成立しました。後漢の時代に最も古いと見なされていた始皇帝時代の編纂による篆書の文字を部首によって分類し、字の本義を記しています。

 しかし、篆書文字以前の甲骨文字などについてはまだわかっていなかったため、たとえば「王」という字について、許慎は、「天地人三才を貫くもの」と字解し、「三」の字を縦棒で貫いて出来た、と解釈しました。しかし、甲骨文字の原点に戻って字源を研究した白川静は、「王」を「大きな鉞(まさかり)の頭の刃の部分を下にした形。この鉞が王の座る席の前に置かれ、王のシンボルとなり、王の意味となった」と解釈しました。


 「口」という字は、従来、顔の中の口を開けた形とされてきました。しかし、白川は、新発掘が続いた甲骨文字や金文資料を吟味することにより、口(くち)と解釈するものではなく、「神に捧げる祝詞を収める箱」と解釈しました。音読みは「サイ」、訓読みは「ノリト」と提唱しました。
 白川字源研究は人気が高いですが、批判者もいます。また、留学生への漢字教育で、「口」の字を教えるときは、『説文解字』に従って、口を開けた唇の形を絵にして、その上を「口」の形になぞって、印象づけて覚えさせています。この方が手っ取り早く印象に残るからです。

 そのほか、「体」という字、留学生には、「人のオリジン(もと=本)になる体」と教えていますが、本来「体」の本字(繁体字)は偏が「骨」で旁が「豊」という字「體」です。でも、暗記のために、新字に合わせて便宜的な説明をしています。 

 絆は、留学生への説明でには「You and I are bound together with a thread. We are better half.」なんて言ったりしますが、これも記憶のためで、本来の字源ではありません。
 「絆」は、会意文字(二つの意味を組み合わて出来た文字)ではなく、形声文字(意味を表す部首と発音を表す部首を組み合わせた文字)なので、偏の意味は「糸」に関わるけれど、旁は「半ハン、バン」という発音を表しています。

 この「絆」という字が中国から日本にもたらされたとき、訓読みとして「きづな」が与えられ、平安時代中期の辞書『和名抄』には、「牛や馬をつなぎ止めておく綱」の意味で用いられた用例がでています。
 現代の国語事典で「羈(音読み:キ、訓読み:おもがい、つな、たび)」と組み合わさった「羈絆(きはん)=行動する人の足手まといになるもの、束縛になるもの」は、日中辞典(岩波)にも「羈絆(簡体字:表示できず)jiban」とありますが、現代の若者たちは、日本語の「絆きづな」を中国語に翻訳するときは「羈絆」を用いているらしいです。
 以下は、中孝介のうた「絆」の中国語(台湾)訳。
http://www.youtube.com/watch?v=3OHMct0yOX8&feature=related
♪いつでも答えは 僕らのすぐそばに:不變的答案 就在你我身邊
大切な絆を この手の中 繋いで:手中緊握著 連結你我 重要的羈絆

♪今日も仲間の笑い声が聞こえる:一如往常聽見的朋友們嬉鬧的聲音
ふざけあいながら:打鬧嬉笑中
語らう夢のカケラ達:一邊訴說著那夢想的點滴

♪遠く離れた母親からの手紙:遙遠的母親寄來的信
身体を気遣う言葉が並ぶ:寫著要多注意自己的身體
深く深く染み込む愛を:深深的深深的這份愛
時に僕らは忘れてしまうけれど:即使偶爾我不小心遺忘
いつも目には見えない:但總是被那眼睛所看不見的羈絆所相繫著
「絆」が僕を支えてくれる: 給我支持給我鼓勵

♪いつでも答えは 僕らのすぐそばに:不變的答案 就在你我身邊
大切な絆を この手の中 守り続けたい:我要好好守護 連結你我 重要的羈絆

♪今日も僕らは人ごみに流されて:今天依然在洶湧人潮裡流失
自分の居場所を探し続ける:尋找著自己的棲身之處
もしも辛い時が来たなら:如果遇到困難
涙の理由を一人で抱えないで:不要一個人孤獨落淚
君の笑う姿を:相信在某處
誰かがきっと待っているから:總有著人期待著你的笑容

繰り返される 悲しいニュースが溢れる:不斷播放 令人悲傷的新聞
誰かを傷つける為に :人絕對沒有生來就是
生まれてきた訳じゃないだろう:為了傷害某個人

♪いつでも答えは 僕らのすぐそばに:不變的答案 就在你我身邊
大切な絆を 胸の奥に感じて:心中能感受到 連結你我 重要的羈絆
素直に愛を繋いでいけたなら:單純的因為愛而互相吸引
互いに信じあえる:就能相互信
その強さを 守り続けたい: 這份強韌 我要堅守下去
僕らの「絆」を: 那就是你我之間的羈絆
☆    ☆    ☆    ☆    ☆

 春庭の「にほんごの店」、店先にもHALのうた。
(当店の通貨「Hal9000」は、日本円の9000円に相当します。
 「春庭の日本語の解説」を買いたいかたは、壱HALをお支払いください。この壱HALは、日本円換算して9000円。これをふたりで飲んだ場合の「居酒屋おごり」に充当いたします。ふたりで飲み食いして壱Hal。ま、妥当な額かと。

<つづく>
コメント (4)
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