春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「青い野菜も市場について・凍み菜、青菜」

2012-03-24 00:00:01 | エッセイ、コラム


2012/03/24
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>赤い花束車に積んで(2)青い野菜も市場について・凍み菜、青菜

♪ラララ 青い野菜も 市場について 春が来た来た 村から町へ
 朝の買物 あの新妻の 籠にあふれた 春の色

 20日、春分の日はお彼岸中日。姑とお墓参り。姑は、徹底的合理主義の人なので、「死後の世界」というのも信じていないようなのですが、「お墓参り!」の号令をかけるのは、そう言わないといっしょに出かけたりしない姑の息子(私の法律上の夫)をかり出すためのもの。で、故人に線香あげるのはちゃっちゃと済ませて、後楽園遊園地を抜けて「後楽園飯店」へ。ランチコース。

 一家五人そろっての食事というのは、正月以来で、「家族で食事」は、年に数度のみ。食べ終わると夫はさっさと事務所へ。徹夜で『一瞬の風になれ1,2,3』を読んでいて、寝てないので「眠い」という息子は帰るというので、娘も「散歩より昼寝」と言う。
 姑と私ふたりで、後楽園庭園の梅花見。庭園にはスミレも花を見せていて、梅は見頃でした。梅の前のベンチでおしゃべり。
 今までいくらすすめても、「他人が家のことにかかわるのはイヤ」と言っていた姑が、87歳にしてようやく「要支援1」という認定を受け入れ、週に1時間の要支援「おふろとトイレの掃除」をしてもらうこととなりました。これから、だんだん、部屋の掃除や買い物など支援内容が増えて行くかも知れませんが、ヨメは家族の稼ぎ手なので、姑の家事手伝いまではできないのです。

 以前、姑に「買い物は荷物が重いのでヘルパーさんに頼んだ方がいい」と言ってみたところ、姑が主張するに「スーパーにキャベツ買いに行って、キャベツが高かったら、今日の野菜はキャベツはやめて、大根にしようって自分なら判断して買うけれど、ヘルパーさんにキャベツ買ってと頼んだら、高くてもなんでもキャベツを買ってくるだろうから、それじゃイヤ」というのです。60年以上、主婦として家計を切り盛りしてきた感覚からすると、高い野菜を買うなど、生活者の風上にもおけぬ、ということになるらしい。

 この冬、野菜が高くて困った、という話になりました。大根1本250円、キャベツ1玉350円、となると、大根下ろしもサラダもおちおち食べられない。値段が変わらない生協のつけものセットなんぞで野菜不足を補うことで、この厳冬の野菜高騰期を乗り切ったという話をして、ちゃんと野菜高騰に対処したヨメであることをアピールしました。もっとも、姑から見たら、漬物を自分で漬けたりせずに、生協の袋入りなんか買うのはダメ嫁なのかもしれません。

 昔は、冬の間は青菜は食べられなかった。白菜を漬けたり大根のつけものが冬の野菜でした。子どもの頃、わが家の家庭菜園でとれた菜を使って、父は「凍み菜(しみな)」というのを作っていました。うちの近所では「かき菜」と呼ばれていたいつも畑にもじゃもじゃと生えていた青菜を冬のはじめに大量に茹で、その束を2階の出窓のてすりにぶら下げて乾燥させる。よく乾燥した菜を5センチくらいに切って袋に詰めておく。
 いわば乾燥野菜のはしりだったのだけれど、わが家は干し大根などは作っていなかったのに、この凍み菜は毎年作っていたのでした。一冬のあいだ、味噌汁の具に菜っ葉を入れるといえば、この凍み菜ばっかりでした。

 冬場に青菜がいくらでも手に入るようになってからも、父はこの凍み菜を作り続けて、妹は「私は凍み菜の味あんまり好きじゃないから味噌汁にも使わなくなって、まだこんなに余っているから、東京に持ってってよ」と、もてあましていました。
 父が亡くなって17年。ときどき冬場の凍み菜の味がなつかしくなります。

 地元群馬以外にもこの凍み菜が食べられている地方があるかどうか調べてみようと検索をかけたのですが、結局、地元の「道の駅」で売られていたことがわかっただけです。ああ、この出荷者の名前、見たことある、と思いました。地元の道の駅の農産物や手作り品には、生産者の名前と住所が入っているんです。
http://komochi.sblo.jp/article/34808546.html

 「青菜」の「青」については、何度か書いてきました。緑色の菜っ葉をどうして「青い」というのか、という質問は、小さな子からも留学生からもよく出てくる質問です。「青葉」「あお馬」「青い顔」などの「あお」
 古代日本語の色彩名称は、黒、白、赤、青の四つのみ。燃えるような明るい色は、「赤」。黒、白、赤に含まれない「その他」は「青」でした。そのため、今で言う「グレー」の毛並みの馬は「あお馬」だったし、血の気を失った顔色は「あおい顔」です。青菜の青も、赤でも黒でも白でもない色の菜っ葉。

 たった今萌え出たつやつやした新鮮なものを「みどり」と呼び、生まれたばかりの新生児は「みどり子」、つやつやした美しい髪は「みどりの髪」。新鮮な若葉は「みどり葉」。のち、「緑色」が色彩名として定着しました。しかし、緑色の野菜を扱う店や市場も「青果店」「青物市場」と、「青」の字はそのまま残っており、青菜も「みどり菜」と改名はされませんでした。

 昔、凍み菜が冬場の青物だったころ、春になって八百屋に新鮮な青菜が出回ると、ああ、春になったのだ、と皆が食卓の春を喜びました。
 今はどんな野菜でも1年中食べることができるけれど、春野菜のおいしさは格別です。
 さあ、今夜もサラダをたっぷり食べたいけれど、いつになった野菜が安くなるのやら。あ、サラダがなくても、なんても全部たっぷり食べてしまい、結局は冬も春も体重増加ってことは、かわらないのですが。

 暑さ寒さも彼岸までとは言っても、今年の春は足が鈍い。夕暮れ、陽が西に傾くと風はいっそう冷たくなります。
 姑を春日駅まで送り、三田線のホームから電車に乗せました。乗り換え駅まで送ってそれから帰宅しようと思ったのですが、「大丈夫、ここまで来れば一人で帰れる」というので、じゃあ、とホームから見送りました。

 地下鉄1本で、ドアtoドアで1時間の距離に住んでいる姑と嫁。1時間はちょうどいい距離と思って暮らしてきたのですが、そろそろ同居の時期を考えなければならないのかも知れません。姑はこれまで「90歳すぎて、身の回りのことがたいへんになってきたら、お願いね」と言っていたのですが、、、、。 姑から見たらいつまでたっても「青二才」の青嫁ですが、姑90歳で同居する頃には、こちらのほうが青息吐息になりそうな。

さて、春の一日、明日も歩いて足腰鍛えよう。
 

<つづく>
コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする