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ぽかぽか春庭「リッパな読書-あと千回の晩飯再読」

2012-03-08 07:00:00 | エッセイ、コラム
2012/03/08
ぽかぽか春庭ブックスタンド>読んだ本、読みたい本(2)リッパな読書-あと千回の晩飯再読

 今週月曜日、3月5日は啓蟄でした。
 冬至から60日ほどたったころ、雪が雨に変わります。これを暦の二十四節気では「雨水」と呼びます。雨水から17日ほどで、啓蟄。虫たちが土穴から出てくる。
 雨水のころ、川の氷が溶けて水になると獺(カワウソ)は魚を捕まえます。そして捕らえた魚を川岸に並べる習性があります。そのため、古代中国で、雨水の節気の初候には、「獺祭魚(だつ うおを まつる)」という行事が行われたそうです。

 礼記「月令孟春」の条に「東風凍を解き、蟄虫は始めて振く。魚冰に上り、獺魚を祭り、鴻雁来る」と書かれていることを出典として、カワウソが獲った獲物を並べておくにぎやかなさまを「獺祭だっさい」 と呼び、書物を多く紐解き、座右に並べて詩文を作ること、また好書家、考証癖、書癖などを言う言葉にもなりました。

 転じて、書物を整理できず、カワウソが捕った魚を周りに並べておくように散らかしておくようすを「獺祭のようだ」と形容しました。正岡子規は、書物を部屋のそこらじゅうに片っぱしから並べておき、「片付けられない男」でしたので、自ら号を「獺祭屋主人」とし、根岸の子規宅を訪れる友人達は、その盛大な散らかりぶりを見て「獺祭屋主人」の号に納得したといいます。

 こういう立派な先例があると、春庭が本を片付けられず、部屋中に散乱しているようすも、なにやら獺祭屋主人末裔のようで、あながち責めを負うに如かずという気分になってきます。困るのは、図書館で借りてきた本が山の中に埋没し、貸出期限がきても返却できないこと。このごろ、できるだけ図書館では借りずに古本屋百均本を探すようにしているのは、返却できなくなると困るからです。

 図書館借りて読んだ本もツンドク本も、本の山の中に埋没してしまえば、買ったか買わなかったか忘れてしまい、同じ本をブックオフ飯田橋店と白金店と池袋店でそれぞれで買い込んでしまう始末。

 しかるに、一度読んだ本もすぐ忘れるぽかぽか頭の春庭だからして、3回読んでも毎度新鮮に楽しめるので損はない。
 たとえば、山田風太郎の『あと千回の晩飯』。新聞連載時に楽しみに読んでいたのだけれど、1995年の連載から17年もたっていれば、ほとんど忘れていたゆえに、もう一度たっぷり楽しんだ。
 


 「生きすぎて」と題された中に武者小路実篤89歳のときの随筆が引用されている。17年前も大笑いしたはずの文章、電車の中で、人目をはばかりつつ笑った。

 「--(実篤翁89歳の文章)人間にはいろいろな人がいる。その内には実にいい人がいる。立派に生きたひと、立派に生きられない人もいた。しかし人間には立派に生きた人もいるが、なかなか生きられない人もいた。人間は皆、立派に生きられるだけ生きたいものと思う。この世には立派に生きた人、立派に生きられなかった人がいる。皆立派に生きてもらいたい。皆立派に生きて、この世に立派に生きられる人は、立派に生きられるだけ生きてもらいたく思う。皆人間らしく立派に生きてもらいたい。--(風太郎翁72歳の感想)1回転ごとに針がもとにもどるレコードのようなもので、果てしがない。こういう状態で、武者小路実篤は九十歳で死んだ。」

 小説の神様が志賀直哉なら、ムシャ翁だって文章の天神様くらいの扱いはされていただろうから、こういう文章を渡されても編集者は「推敲せよ」の一言もなく「玉稿」押し頂き、ありがたがって紙面を飾ったのだろうと思うと、おかしくておかしくて。
 はい、私もリッパに生きられるだけ生きてみようと思います。そして90婆になれたなら、同じことを繰り返しくり返し呟きながら、日がな昔ばなしでもしようと思う。「あたしゃねぇ、リッパに生きたいと思って、がんばって立派な本も読んで、リッパに論文も書いたのよぅ。それでリッパに生きられるだけ生きたいから、立派な本も読んで、、、、、、」
 まあ、ぐうたら生きるのもキッパリ逝くのも芸のうち。

 2012年1月2月に読んだ本のタイトルだけメモしておきます。
 読んだ順番は、順不同にて。
@は図書館本 ¥は定価で買った本 ・は、ほとんどBookoffの100円本、定価の半額本。
☆☆☆☆☆これを読まずに死ぬのは惜しい!あなたも絶対読むべきだ 
☆☆☆☆いい本です。あなたの趣味がどうあれ、お勧め  
☆☆☆私は読んでよかったけど、あなたの趣味は知らんので。 
☆☆お暇なときのお供にどうぞ 
☆他に読む本ないとき、読んで損はない 
無☆読まなくとも人生、大過なく生きてける

日本語、日本文化関連
@佐藤智子『アート・イン・ディテール』ゆまに書房 ☆☆☆☆
@星野勉編『外から見た日本文化』法政大学出版局 ☆☆☆
@馬淵章子『ジャポニスム』ビリュッケ ☆☆☆
・中村重樹『日本の伝統文様』エムディエヌコーポレーション ☆☆

小説
・杉本章子『東京新大橋雨中図』文春文庫 ☆☆☆☆
・上橋菜穂子『精霊の守り人』新潮文庫 ☆☆☆
・村上春樹『東京奇譚集』☆☆☆

エッセイその他
・山田風太郎『あと千回の晩飯』☆☆☆☆
・幸田文『季節のかたみ』新潮文庫☆☆☆
・米原万里『魔女の1ダース』新潮文庫☆☆☆
・ドナルドキーン『日本語の美』中公文庫☆☆☆
・小林紀晴『アジアの少年』幻冬舎文庫☆☆☆
・村上春樹『雨天炎天』新潮文庫☆☆☆☆
・村上春樹『辺境・近境』新潮文庫☆☆☆☆
・松村映三・村上春樹『辺境近況写真篇』新潮文庫☆☆☆

<1月2月読書メモおわり>
コメント (18)
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