医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

柑橘類摂取(フラボノイド、ビタミンC)と女性の脳卒中発作リスクの軽減について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2014-07-17 21:29:33 | 健康・病気

以前からいろんな研究で、かんきつ類の摂取は、ガンを始め、生活習慣病のリスクの軽減をもたらす、という研究報告があります。今回は、女性の脳卒中発作リスクと柑橘類摂取の関係の研究が報告されていますので、これについて考えていきたい、と思います。

イ―ストアングリア大学のAedin cassidy博士らの研究によると、柑橘類(特にオレンジやグレープフルーツなど)に含まれるフラボノイド類をより多く摂取すると、虚血性脳卒中発作のリスクを軽減することができる可能性があります。そして、柑橘類を多く摂取した婦人は、その摂取がもっとも少ない婦人に比べて、虚血性脳卒中発作のリスクが19%低下しました。コホ―ト研究は、かんきつ類などに多く含まれるフラボノイド類を摂取すると、脳卒中発作のリスクにどのように影響するか調べる、最も重要な研究の一つです。

一般的には、フラボノイド類は、野菜や果物などに含まれ、抗酸化作用のある栄養素の一群です。博士らの研究では、脳卒中発作リスクの減少は、野菜、果物の高摂取と結び付いています。特に、ビタミンCの高摂取は、そのリスクを減少させます。フラボノイド類は、いろんなメカニズムにより、脳卒中に対し防御作用を有し、血管機能改善と抗炎症作用をもたらします。

Cassidy博士らは、69,622名の女性看護師の14年間にわたる健康調査から、4年間の果物、野菜摂取の詳細を調べ、一般的米国食で摂取される6種のフラボノイド(フラボン、アントシアニン、フラボンー3-オルス、フラボノイドポリマー、フラボノ―ルとフラボン)と虚血性脳卒中発作、出血性脳卒中発作との相関を調べました。

予想されていたように、フラボノイド類は、生物活性がそれぞれ異なっているので、それぞれのフラボノイド摂取量と脳卒中発作の間の正の相関関係は見出されませんでした。しかしながら、かんきつ類のフラボノ―ル類を多く摂取した女性は、摂取量が最少の女性に比べて、血栓(虚血性)が関係した脳卒中発作のリスクが19%程低い結果でした。フラボノイドは、オレンジとオレンジジュース(82%)、それにグレープフルーツとグレープフルーツジュース(14%)由来でした。しかしながら、これらの効果は、フラボノイド類だけでなく、カロテノイドやビタミンCなどが協働して効果をもたらした、と考えられます。フラボノイド単独でなく、かんきつ類のようにいろんな栄養素がバランスよく含まれていることも、脳卒中発作リスクの軽減につながり、かつ生の新鮮な柑橘類の摂取も欠かせない、と当方は考えています。

以前の研究では、生の柑橘類とそのジュースの摂取(他の果物の摂取でない)が、虚血性脳卒中発作と脳出血のリスクを予防することがわかりました。また、他の追試の研究では、抗酸化栄養物質(果物と野菜から約50%)を多く、頻回に摂取したスエーデンの女性は、その摂取がもっとも少ない女性に比べて、脳卒中発作が少ないという結果でした。いずれにせよ、栄養バランスを中心として、生のかんきつ類や野菜、生の果物を多く、頻回に摂取することは、ガンや心臓病、それに脳卒中発作のリスクを減らすと考えられるので、食生活に、意識的に取り入れることが賢明です。

References

Aedin Cassidy et al: Dietary flavonoids and risk of stroke in women. Stroke, Feb 23 2012

Eating citrus fruit may lower women's stroke risk.: ScienceDaily. Feb 23,2012

筆者の栄養医学ブログは、blog.goo.ne.jp/h35p39で発信しています。

 

 

 


PM2.5と気候変動の関係と死亡率の増加について 地球環境医学ブログ 藤井毅彦

2014-07-15 15:19:48 | 健康・病気

pM2.5は、異常気象など気候変動により、その影響が変化し、死亡率を高める、とノ―スカロライナ大学の研究は示唆しています。これとよく似たデータが多く集まると、全世界での死亡率が高まり、人類の存亡だけでなく、他の生物の存亡にも影響を及ぼし、地球は、将来、もはや死の世界になる可能性も、あながち否定できません。ここでは、米国の研究を参考にし、そのことについて考えていきたい、と思います。

"Environmental Research"誌に載ったノ―スカロライナ大学のJason West博士らの研究によると、200万人より多い死亡が、大気汚染によりもたらされた直接の結果として、毎年、世界中でもたらされています。さらに、最近の気候変動は、大気汚染の影響を変化させ、死亡率を高める、と示唆されています。しかし一方、気候変動は、その影響が最少で、大気汚染と関係した、現時点での死亡率の割合が少ないという報告も有りますが、さらなる疫学研究の積み重ねが必要です。いずれいせよ、PM2.5を含む大気汚染は、異常気象と複合して、人類の健康に悪影響を及ぼす、と当方も考えています。この根拠は、、当方が、昔、医学部医科栄養学科で学んだ公衆衛生学の環境衛生の知識が基礎になっていると考えています。

Jason West博士らの研究によると、毎年、約470,000人が、人類がもたらしたオゾン濃度の上昇により、死亡すると見積もられています。また、毎年、約210万人の死が、pM2.5による大気汚染によりもたらされています。なお当方も、紫外線量の増加が、PM2.5の毒性を高め、死亡率の上昇と関係している、と考えています。とにかく、地球環境の総合的悪化がその根底にあるのは確かです。

健康にとってもっとも重要な環境リスクの因子は、大気汚染です。そして、大気汚染による死の多くは、東アジアと南アジアでもたらされ、またそこは、人口が多く、大気汚染が深刻です。研究を調べてみると、産業革命以前の農業生産時代(江戸時代以前)は、気候変動による大気汚染が原因の死亡数は、相対的に少なかったようです。また、気候変動は多くの点で、大気の質に影響し、大気汚染の局地的増大や、あるいはその減少をもたらす可能性があります。例えば、気温と湿度の形態、あるいはそれらの持続期間が、反応率を変化させ、降雨は、汚染が集中する時期を決めることができます。そして、大気の高温状態は、樹木から有機化合物の放出を高め、そのことが、オゾンと微小粒子状物質を形成し、大気中で反応します。大気の質とその健康に及ぼす、過去の気候変動の影響を評価する研究はなされていません。しかし、過去の気候変動の影響は、大気汚染による全体的影響では少しですが、構成要素となっているようです。

West博士らの研究において、2000年と1850年のオゾンとPM2.5の濃度をシュミレイトする気候モデル全体を用いました。総計14のモデルのオゾン値がシュミレイトされ、6つのモデルのPM2.5値がシュミレイトされました。そして、以前の疫学的研究では、気候モデルから大気汚染のはっきりした濃度が、現在の地球上の人類の死亡率にどのように関係するか、評価するために用いられました。研究者らの結果では、大気汚染と死亡率を分析した、以前の研究と比較できました。しかし、どの気候モデルが用いられたかによって、いくつか違いがありました。異なった大気モデルの間の幅に基づく、強い不確実性があることが、見出されました。このことは、将来、単一のモデルを用いることに対し、いくつかの研究で見られたように、注意すべき点です。
しかし、コンピュタ―を利用することにより、いろんなデータを統合的に解析し、シュミレイトし、より真実に近い結論に導くことも可能、と考えます。

References

Raquel A Silva, J Jason West et al: Global premature mortality due to anthropogenic outdoor air pollution and the contribution of past climate change. Environmental Research letters,2013; 8(3): 034005 DOI

Air pollution responsible for more than 2 million deaths worldwide each year,expert estimate: ScienceDaily. July 12,2013

 

 

 

【即納】シャープ 除加湿空気清浄機 空清〜32畳 加湿〜18畳 除湿〜23畳 KC-HD70-W 【送料無料】【KK9N0D18P】


野菜と果物の摂取(ルテイン、ゼアキサンチン)と視力の関係について 栄養医学ブログ 藤井毅彦

2014-07-10 22:38:06 | 健康・病気

年齢を重ねるに従い、白内障など目の障害に悩まされ、手術をされる人が増えていますが、早期に栄養的対策を実施し、予防することは重要です。ここでは目の障害の栄養的対策の研究が、米国で報告されていますので、それについて考えていきたい、と思います。

"Journal of Food Science"誌によると、緑葉色野菜とカラフルな果物に見出されるカロテノイド(色素栄養素)は、眼の機能を高め、年齢が関係した眼の疾患を防ぐ可能性があります。

ジョージア大学の研究者らは、眼の機能に及ぼすカロテノイドのルテインとゼアキサンチンの作用に関するいろんな研究結果を収集しました。以前の研究でも、カロテノイドは夜盲症と関係し、それは眼との関係が知られていました。

いろんな研究を再調査した後、ルテインとゼアキサンチンのような色素栄養素は、視覚機能に影響を及ぼす、と結論づけられました。ルテインとゼアキサンチンは、眼の障害と"まぶしさ"による不快感を減らし、視覚の幅を広げます。

Billy R, Hammond Jr 博士は、ルテインとゼアキサンチンの作用に関する研究は、生物学的手段により改善できる可能性があるのは、明白なので、そのことに注目しました。例えば、2008年の一件の研究では、色素栄養素が網膜とレンズを保護し、網膜の斑点の変性と白内障など年齢が関係した眼の疾患を防ぐのに役立ちます。これらの事から、眼の健康のためカロテノイドを多く含む、緑葉野菜やカラフルな果物の高摂取が勧められています。

 

 

Reference

Institute of Food Technologists: Eat fruits and vegetables  for better vision. ScienceDaily.
December 19,2009

筆者の栄養医学ブログ記事は、blog.goo.ne.jp/h35p39で発信しています。


女性の膀胱がんリスクと野菜、生の果物の摂取との関係について 栄養医学ブログ 藤井毅彦

2014-07-10 18:37:00 | 健康・病気

ガンのリスクと野菜と生の果物の摂取の関係は、疫学調査やマックス・ゲルソン療法などで、しばしば報告されていますが、今回、コホ―ト研究により、その関係が報告されたので、これについて考えていきたい、と思います。なお、果物は、ジュースや缶詰の形でなく、生の果物、野菜は塩分の多い漬けものでないものが、研究対象です。

ハワイ大学のSon-Yi Park博士らの研究グループは、野菜と生の果物の高摂取は、侵襲性膀胱がんのリスクを減らす可能性があることを発見しました。彼らは、食事、生活スタイル、遺伝因子、それにガンのリスクの間の関連を評価するべく、1983年に出された多人種コホ―ト研究(MEC)の一部として、研究を実施しました。

12.5年より長い期間、185,885名の成人からデータを集め、そのうち、581名が侵襲性膀胱がんと診断されました(女性152名、男性429名)。年齢など、ガンのリスクと関係した変数を調整した後、もっとも多くかんきつ類と野菜を摂取した女性では、それらがもっとも少ない女性に比べて、膀胱がんが52%少ないようでした。これらのデータから、ビタミンC,ビタミンA、それにビタミンE、抗酸化栄養素などの摂取が最も多い女性は、膀胱がんのリスクが最も少ないことが、示唆されます。男性では、有意差が認められませんでしたが、過去の疫学調査では、有意差が認められましたので、更なる研究が必要です。なお、以前の疫学調査では、米国のカリフォルニア州やフロリダ州などかんきつ類の豊富に採れる地方は,よくかんきつ類を摂取し、そうでない地方に比べて、ガンのリスクがすくないという、研究報告も有ります。栄養のバランスと共に、野菜や生の果物の高摂取が望まれます。

References

S.-Y Park et al: Fruit and vegetable intakes are  associated with lower risk of bladder cancer among women in the mutiethnic cohort study. Journal of Nutrition. 2013; 143(8):1283DOI

Higher intake of fruits and vegetables may reduce the risk of bladder cancer in women. ScienceDaily. August 23,2013

 

 

 

 


PM2.5対策と抗酸化食品摂取の効果について 栄養医学ブログ 藤井毅彦

2014-07-07 17:58:29 | 健康・病気

当方が住んでいる四国東部は、少年の頃の空は青く澄んで、美しかった記憶がありますが、最近は汚れて、いつも濁っているようです。特に、春先の2月から3月にかけて、汚れがひどく、咳き込む人が多いようです。なお、この空には、PM2.5が漂い、我々の健康に悪さをしています。今回は、米国ユタ州で行われた、これに関する研究について考えていきたい、と思います。

ユタ州キャシュバレー(Cache Valley)は、空気の質が悪く、それに伴う健康への影響が問題になっている地域です。そこで、ユタ州立大学では、PM2.5と野菜と果物(抗酸化物質を多く含む)の摂取量の増加の関係の研究を、Michael Lefevre博士らは、2011年に、キャシュバレ―の45~80歳の66名より多い参加者でニ重盲検試験を始めました。

そこで、彼らは、呼吸系へのリスクに及ぼす微細粒子による汚染である、PM2.5のインパクトと食事性抗酸化物質(抗酸化栄養素)の間の関係を調べるべく、臨床試験を実施しました。キャシュバレ―は、冬季に高気圧が蓋の役目をし、頻繁に空気の質の悪化がもたらされ、その中にPM2.5が高濃度に含まれます。ユタ州以外の州では、空気の質の悪化が見られますが、それが、地形の影響や風の流れの変化で入れ替わります。

研究は、環境汚染協会による、低い、もしくは普通と考えられるpM2.5濃度に焦点を合わせ、開始されました。なお、pM2.5は肺に留まり、気道の狭窄をもたらし、過敏症と炎症をもたらし、肺の機能を低下させる、恐ろしい微粒子です。そして、PM2.5が低値から普通の値でさえ、呼吸器系の過敏症をもたらします。

キャシュバレ―の参加者は、血液検査と呼吸テストのため、一か月に二度、検査を受けました。
研究の結果は成功でした。プらセボに比べて、食事性抗酸化物質をより多く摂取したグループは、pM2.5による疾病リスクが低値でした。そこで、ユタ州立大学は、ユタ州北部の住人の野菜と生の果物の摂取を40%増やすことを、勧めています。日本国でも、近年、PM2.5濃度の上昇が認められるので、抗酸化栄養素を多く含む野菜と生の果物の摂取量を増やすことが必要、と考えられます。

References

 

Nutritional supplement study concludes at Utah State University: Utah State University News. Apr.5,2012

Contact and writer : Jacoba Poppleton, 435-797-9608, jacoba.poppleton@usu.edu