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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 836 週間リポート・阪神タイガース

2024年03月20日 | 1977 年 



長嶋さんに恥をかかせるな!
プロ入り4年目の若トラ・掛布選手が全セが誇るスーパーカー打線の三番を打ち堂々と活躍した。掛布選手を三番に起用したのは長嶋監督。周囲はプレッシャーが大きく、掛布選手を委縮させてしまうと危惧したのだが半ば強引に抜擢したのだった。「三番を打つなんて考えてなかったですよ。荷が重かったですけど一生懸命やりました。満足です」と掛布選手。第2戦こそ山田投手(阪急)などパ・リーグが誇るエース級の継投に抑えられたが第3戦は見事な活躍を見せ、長嶋監督は「ハイ、掛布君は立派に頑張りました」とベタ褒めだった。

この長嶋演出に感激したのが父親の泰治さん。第3戦の神宮球場へ家族連れだって応援に行き息子の晴れ姿を観戦した。その前夜、掛布選手は移動日休みを利用し故郷の千葉へ帰省し父親が営む小料理屋「みやこ」で親子水入らずで祝杯をあげた。泰治さんは「まだ三番って柄じゃない。もし散々な結果だったら長嶋さんに申し訳ない。しっかりやれと雅之に言いました」と。久しぶりにビールを酌み交わして " 球宴談義 " に花を咲かせた掛布選手はたった1日の夏休みを有意義に過ごし後半戦に挑んだ。全セの三番を務めた自信は大きく無形の財産となって一段の成長につながった。

「掛布は本当に純心ですよ。第1戦の7回一死二三塁で打順が回って来た時、粘って四球を選び一塁に歩いて次の王にチャンスを回したでしょ。普通ならあそこは強引に打って出て殊勲賞など狙うところだが掛布にはそんなヤマっ気はない。公式戦と同じ気持ちで取り組んでいた。あれが彼の野球に対する姿勢ですよ」これはある野球評論家の見方。掛布選手の人気・魅力は案外こんな一面にあるのかもしれない。


両エースもなかなかの好投
阪神の両エース、古沢・江本投手が球宴の第1・2戦でいずれも先発登板し好投した。特に第1戦に先発した江本投手は規定の3イニングを無安打・1四球に抑え最優秀投手賞を獲得した。また古沢投手も見事な投球で公式戦の出来を上回る内容だった。球宴前の前半戦終盤では両投手とも初回に打たれて崩れるケースが多かっただけに全セのコーチとしてベンチ入りしていた吉田監督も複雑な表情だった。こんな投球をペナントレースでも見せてくれよという気持ちだったのだろう。

ひとり黙々と
オールスター戦はやはり出場しないと面白くない…と " 休宴 " の身を悔やんだのは田淵選手。球宴前の広島戦で右手親指第一関節を骨折し出場辞退を余儀なくされた。田淵選手はプロ入り以来、8年連続で球宴出場していただけに悔しい思いは人一倍だ。7月25日、甲子園球場で始まった後半戦に備えたナイター練習に顔を出した田淵選手は1人黙々と外野を走り復活を目指しているが、戦列復帰は8月以降と見られる。「オールスター戦はテレビで見たけどやはり出場していないと寂しい。特に第2戦の西宮球場は家から球場の照明の明かりが見えるし気もそぞろだった。来年はファン投票で選ばれて活躍したいね」と捲土重来を誓っていた。
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