セ・リーグ ➊:巨人ほぼ目的達成、阪神の補強は不充分
◆巨人:浅野最高のヒット
【新人】…投 手:藤城和明、赤嶺賢勇、吉沢克美
捕 手:笠間雄二
内野手:松本匡史
【移籍】…投 手:浅野啓司、辻上修
「戦力になるのは絶対に間違いない」と長嶋監督が太鼓判を押すのがヤクルトから移籍した浅野。かつての巨人キラーが巨人の救世主になるとは誰が想像しただろうか。オープン戦では投げる度に好投した。二度目の登板となった15日の近鉄戦は先発して5回・被安打4・三振5・四球1・失点1。特に近鉄期待の新外人・バティを2打席連続三振に斬ってとった投球は圧巻だった。「ストレートが良かったですね。内外角のコントロールも安定してきたし順調に開幕を迎えられそうです(浅野)」と表情は明るい。
ヤクルト時代は毎年のように腰痛に悩まされてきたが、今年は全くないそうだ。往年の快速球は望めないにしても、かなりの活躍は期待できそうだ。キャンプ中から巨人に張り付いている中日の江藤スコアラーも「浅野の好調時は左打者の内角にシュートを投げ込んでいた。左打者がストレートが自分に向かって来ると感じて腰を引くとシュートしてストライクになる球が厄介だった。今年はそのシュートが復活している。要注意だね」と警戒を強める。中日以外の他球団も浅野を再チェックする必要がありそうだ。
ルーキーの松本は長嶋監督に「脚力には絶対の自信を持っていて、足だけでプロの世界で食べていける」とまで言わしめベンチ入りどころか土井との二塁併用案まで出ている。初盗塁は12日の南海戦で9回表に代走に起用されるとあっさりと二盗を決めた。翌13日の阪急戦では2つの盗塁に成功している。また捕手の笠間も評価が高い。打撃に関してはまだまだ未熟だが強肩は先輩捕手の上を行き、矢沢を二軍へと追いやった。既に2人の子持ちで文字通り「生活がかかっている」だけに必死だ。尚、ドラフト1位指名の藤城は二段モーションの投球フォームを直す為にデビューには時間がかかりそうだ。
◆阪神:益山にチャンス
【新人】…投 手:深沢恵雄、益山性旭、青雲光夫、土谷賢一
捕 手:続木敏之、小倉泰男
内野手:渡辺純志
外野手:峯本達雄
皆川投手コーチが惚れ込んでいるのがドラフト1位ルーキーの益山である。10日の日ハム戦に先発し、5回・被安打3・失点0で見事初勝利を飾った。評論家の青田昇氏によると「右と左の違いはあるが、小山(正明)みたいな腕の使い方をする。スタミナ次第ではかなり勝てるのではないか」と評価は急上昇。今シーズンもセ・リーグは相変わらず左打者全盛で、とりわけライバルの巨人は王・張本が健在でどうしても「左腕が勝敗の決め手となる(吉田監督)」だけに益山が使えると心強い。一方でキャンプで話題となった青雲は時間がかかりそうで、むしろ内野手の渡辺の方がデビューは早そうだ。尚、今オフに阪神に移籍入団した選手はいない。
◆広島:思い切りの良さで成功
【新人】…投 手:土居正史、平田英之、山根和夫、小林一史
捕 手:山本穣
内野手:山崎隆造
外野手:小川達明
【移籍】…投 手:鵜飼克雄、門田純良、皆川康夫、松原明夫、新美敏、榎本直樹
外野手:正垣宏倫、内田順三
投手の補強がドラフト、トレードで10人を超える。「優勝するには投手陣の強化が何より優先する」と古葉監督。中でも注目は日ハムから移籍した新美だ。何しろ10勝が確実視されていた佐伯との交換だけにトレード失敗は許されない。16日のロッテ戦では抑え役で登板しセーブを記録した。通算四度の登板で9イニング・自責点0で首脳陣を安心させた。「同期の池谷には負けたくない(新美)」とかつての新人王は口数こそ少ないがやる気を充分に漂わせている。
南海から移籍した松原はキャンプ中盤に足を故障して出遅れた。その為にオープン戦の登板も現在までないが、足が治れば持ち前の速球を武器に戦力になるだろう。ルーキーでは土居が期待されている。16日のロッテ戦に二度目の登板をして3回 2/3 イニング・無失点と好投。同じくルーキーの山根も9日の大洋戦で勝ち投手になり、2試合に登板して1勝1Sと結果を出している。その他の皆川、榎本、野手陣の正垣や内田らは一軍経験者なので心配はない。特に正垣は阪急で何度も優勝を経験しているだけに、精神的な面でも広島には欠かせない存在となりそうだ。ドラフト1位指名の山崎は即戦力ではなく将来性に期待だ。