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弁護士から裁判官になった竹内浩史のどどいつ集

「条約違反」と 判断させぬ 通説?「憲法 優位説」

2024年03月02日 22時52分30秒 | 裁判
弁護士は条約違反の主張をしているのに、裁判官は判断してくれないという批判がある。
しかし、多くの場合、弁護士の主張の仕方にも問題がある。
例えば、「これは憲法○○条に違反する。同様に△△条約の××条に違反する。」という形の主張を立ててしまう例が目立つ。
これでは、多くの裁判官は「それは憲法○○条に違反しない。同趣旨の条約にも違反しない。」と一蹴するだろう。
本当に条約違反の判断を勝ち取りたいのであれば、憲法違反の主張は控えるべきと思う。
上記のような主張をしがちな背景には、日本国憲法を完璧かつ万能なものであるかのように崇める傾向があるのではないか。憲法学上、「条約優位説」を問題外とし、日米安保条約などを違憲とする「憲法優位説」が通説となってきたことも遠因かも知れない。
しかし、これでは、せっかく憲法よりも更に進んだ具体的な規定を設けている条約の条文が台無しである。
むしろ「憲法には違反しないが、△△条約の××条に違反する」という主張をするくらいの思い切りが必要だろう。
そうすれば、裁判官は正面から条約違反か否かの判断をする以外に逃げ道は無くなる。

(写真)
ちなみに、私は十数年前、当事者の主張も無いのに、当時の民法772条1項の嫡出推定の規定の
適用につき「児童の権利に関する条約」7条1項の児童は「できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する。」に違反する旨の審判をしたことがある。「適用違憲」ならぬ「適用条約違反」の判断とでも呼ぶべきものだ。
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