面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「サヴァイヴィング ライフ ―夢は第二の人生―」

2011年11月10日 | 映画
エフジェン(ヴァーツラフ・ヘルシュス)は、ごくごくフツウの中年男。
家では口うるさい妻ミラダ(ズサナ・クロネロヴァー)の愚痴を聞かされてウンザリし、眠ることが毎日の楽しみに。
ある日彼は、夢の中でエフジェニエ(クラーラ・イソヴァー)という若く美しい女性と出会う。
誘われるままに部屋を訪れて抱き合っていたところ、彼女の息子ペトルに見つかってしまう。
気まずい気分で目覚めたエフジェンは、夢の内容が大いに気にかかり、精神分析医のホルボヴァー医師(ダニエラ・バケロヴァー)を訪ねた。
カウンセリングによって、エフジェンの幼い頃の経験が関係しているようであることが分かってくる。
夢の操作法に関する本を見つけたエフジェンは、自分の意志で夢の世界に入っていく方法を試そうと、元写真家の老人のスタジオを借りることにした。
そして、ミラダには会社に行くと伝えながら、スタジオで眠りにつくことで、夢の中へと出かけていく日々が始まる…


シュールレアリストとして知られ、クリエイターの世界で多大な影響力を持つアートアニメーションの巨匠、ヤン・シュヴァンクマイエル監督の5年ぶりの長編作品。
夢で見た美女を追い、次第に夢の中へとのめりこんで行く冴えない中年野郎の姿を描く…と書くと何やら冴えない映画のように聞こえるが、さにあらず。
カットアウトアニメと実写を織り交ぜて描かれるシュールな映像は、小さい頃に見た影絵のアニメや紙芝居が思い出されて、得も言われぬ懐かしさが込み上げた。

見様によってはグロテスクながら、それでいて妙なおかしみのある奇想天外なイメージが展開し、何が現実で何が夢なのか、いや全てが夢の中での出来事なのか、観ているこちらの意識が混沌としてくる。
夢か現か、現か夢か。
それはまるで、焚火の炎の明りに浮かび上がる能役者を観ているうちに幽玄の世界へと引き込まれていく薪能にも似て……ちと違うか、いや全然違う(苦笑)


シュールな中にどことなく漂う残酷性が醸し出す雰囲気が独特の、オトナのための童話。


サヴァイヴィング ライフ ―夢は第二の人生―
2010年/チェコ  監督:ヤン・シュヴァンクマイエル
出演:ヴァーツラフ・ヘルシュス、クラーラ・イソヴァー、ズザナ・クロネロヴァー、エミーリア・ドシェコヴァー、ダニエラ・バケロヴァー


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