中國の首脳が憂慮する難題6つ (2014-06,11.)
中国の最高指導者たちは自国の軍事力の拡大に懸命の様だが、その一方で国威の発揚にとって陰りや傷害となり得る要因にも、深刻な懸念を向けている。それらの気がかりとなる要因とは、米国務省が6月5日に発表したリポートに掲載されている。
米国防総省が発表した「中国の軍事力と安全保障の展開に関する報告、2014年版」は、毎年報告する年次報告で、オバマ大統領時代から「中国の軍事報告」と言うタイトルで発表されている。
今回この報告書で更に注目したいのは、米国側が見た中国首脳陣の長期的な戦略である。
習近平政権の中國共産党首脳陣は、現状を、自国が経済発展、領土保全、国内安定などを強化する戦略的な機会と捉え、其のための主要手段として軍事力を強化している。しかし、現在は好ましく見える安全保障環境も、幾つかの要因によって自国の戦略的な発展が阻害される恐れがある事を懸念していると言うのである。
同報告が挙げるそれらの要因は以下の6点である。
1)「経済成長の鈍化」
経済成長を阻害する要因として5項目が挙げられている。第1に投資と輸出への過度の依存状態から抜け出せない事。第2に世界の貿易パターンの変化。第3に国内資源の制約。第4に賃金の値上がりと労働力の不足。第5にエネルギーなど海外の資源が入手しずらく成る事である。
2)「ナショナリズムの危険性」
中國共産党や人民解放軍の指導層は、共産党統治の正当性を支え国内の党への批判を抑える辞めに、ナショナリズムを一貫して利用してきた。ところがナショナリズムは首脳陣にとって諸刃の剣となりうる。対外戦略上、柔軟な政策を取りたくても国内ナショナリズムの高まりで、逆に制約をうけてしまう危険がある。
3)「東シナ海、南シナ海を巡る緊張」
東南アジア国家間との緊張関係は、中國周辺の地域や海域での安定を崩すことになる。他国が軍事力を強めれば中国の軍事力が相対的に弱める事になる。
4)「蔓延する汚職」
いま中國全土で一般国民の共産党に対する不信や不満があり抑えるために、国家レベルの汚職追放の運動が展開されている、その結果次第で、共産党への不信が広がる可能性がある。
5)「環境問題への対応」
環境悪化は経済発展や公衆衛生、社会の安定等々、イメージを損ない大きな政治的危険をはらんでいる。
6)「高齢化と少子化」
中國はいま高齢化と少子化の二重脅威に直面している安価な労働力不足は経済と停滞させ、中國共産党の正当性を脅かす。
今回の米国防総省の報告は、中國の軍事能力そのものを調査し、公表する事が目的だが、中國共産党の指導層は、自国の戦略的発展を阻害する要因として心配して、解説している。
これ等は現代中国の“弱み”だとも言えよう。日本側としても心して置くべき指摘である。
(古森久義;JPpressより)
(えびなたろう)
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