紙袋いっぱいのオレンジを抱えている少女を電車の中で見かけた。その子とすれ違いざま、肩が触れてしまい、彼女のオレンジが電車の中の床に転がり落ちてしまう・・・・! これがオレンジガールとの出逢いだった・・・・。
オレンジガールって、何だろう、、、と「14歳の僕」も「読者」も考える。
実は、これは 死を悟ったパパが、わずか4歳の息子が電車のおもちゃで遊ぶのを時折見ながら書いている、長いながい手紙だった・・・・。
パパには残された時間が無い。 本当は、思春期を迎えたくらいの息子と、この広大な宇宙について、人生について、話をしたい。でも、かなわない・・・。そこでパパは将来の息子に向けて長い手紙を書き始めたのだった。
「自然は奇跡では無い、なんて言わないで欲しい。世界は物語ではない、なんて言わないで欲しい。そのことにまだ気ついていない人は、物語がまさに終わらんとするまぎわまで、あるいは気付かないのかもしれない」(175ペー)
今の君は、それまでの狭い視野から抜け出す最後のチャンスだよ、とパパは未来の息子へ語りかける。 はっと驚いて目をこする最後の機会だ・・・・と。
そう、いま、まさに 「パパの人生」に別れを告げようとしている、この奇跡の世界に、もう一度身をゆだねる最後の可能性のときだ・・・と。
パパは語る。人は死ぬ間際、算術の心配やインターネットのことを心配しない、別れを惜しむ、この世界、自分の人生、息子や娘、或いは両親や友達のことを考える。
一瞬で、すべてを失うことについて考える。自分のこれまでの人生そのものや、家族はおろか、自分自身まで、消えてなくなってしまうんだよ、それが死。 宇宙の中で人の命は、ほんとうに短い。そして、一瞬で何もかも奪われてしまう。 今のパパがそうであるように。
それでも、「君」は この世に生れ、「一瞬」を生きることを選択するかい? - これがパパが息子に答えて欲しいこと。
4歳の息子と一緒に居られる時間は『限られている』・・・そんなパパからの手紙だからこそ、切迫感があり、一気に読んでしまった。
『八日目の蝉』が映像化される前に読んだ時や (4歳の甥っ子と別れて住むようになったばかりだた) 映画、『今、会いに行きます』を見たとき、ぽろぽろと涙が止まらなかった。 この本も、きっと あの時期に読んでいたら、泣いていただろうな、と思う。今は感情を幾分コントロールする術を学んでしまった・・・かな。いや、家族も私自身も当時より落ち着いてきたんだと思う。 あの頃のように切迫感がなく、きっと幸せだということ。
『オレンジガール』の作者は、Jostein Gaarder 昨夜、日本語で何だったか分からなくて…、ヨースタイン・ゴルデルだった。
シドニー滞在中、もっとも好きな作家だった。 英語読みで、ジャスティン ガーダーみたいに彼のことを呼んでいたので、とっさに日本語で知られた作家名が分からなかった…(苦笑)
ソフィーの世界、を書いた作家だといえば、多くの人には分かると思う。日本でも大ベストセラーになった、「哲学者からの手紙」 当時、大学院でも社会学に哲学、心理学は不可欠で、私にとっても、大いに役に立った本だった。とても分かりやすくて。私が買った英語翻訳版も、妹が買った日本語翻訳版も、共に我が家の本棚の宝物。。。 ノルウェーから全世界に届けられた「贈り物」 お勧めの一冊、、、です。
では、Have a nice day!
suzu