青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

「現代ビジネス」アジサイ(繍球)記事と、オリジナル記事について

2018-06-16 20:55:40 | 「現代ビジネス」オリジナル記事


梅雨の風物詩「アジサイ」は、実は生物学的に謎だらけだった

5月は、結局、掲載ゼロです。編集U氏からは、ほぼ毎日のように「来週掲載するから待って」「明日リライトを送るから」の繰り返し。いつものことだけれど、今回は余りに永すぎます。

一回の稿料3万円は、僕にとっては大金です(月の生活費・経費の1/3ほど)。命綱と言って良いのです。
それを貰うためには、T大卒エリートの、大出版社の若き編集氏に、いくら理不尽な思いがあろうが、逆らうわけにはいきません。

当初は、これまでのように、30年間の日中往復の間で感じた「中国人と日本人の文化の違い」を、敢えて「子供の日記風」に、ゆる~く書き記していこうと考えていたのです。

読者には、非常に人気を得てるようです。でも、いろいろ「大人の事情」があるらしく、「現代ビジネス」という「お金儲け」の為のメディアの中で、「貧乏でも平気」という話題を続けることは、抵抗感(「読者」というよりも「対中国日本人論客」や「クライアント」の間で?)を生み出しているのではないかと想像しています。

ことに「深圳」持ち上げ?(深圳のまるで未来都市のような超近代化に対しての多くの日本人の新鮮な驚き)記事が一気に氾濫しつつある中で、30年間深圳に携わる人間として、「それは表面的な印象に過ぎないよ!実態はいろいろと複雑」と冷めた目で水を差すことに、論客たちから反感を覚えられている可能性があります。

前回アップのすぐ後の4月26日は、筆者の70歳の誕生日でした。それで、(「逮捕」の記事の次は)その時の出来事を書こうと思ったのです。モニカと一緒に、僕のバースデイケーキを買いに、町のスーパーに出かけた時のことです。

中国人が、いかにドジで間抜けで、デリカシーに全く欠けた出鱈目限りない民度の低い人種であるかを、モニカの行動を観察しつつ証明していこうと(笑)。

と同時に、(日本文化が大嫌いなモニカが)深い部分では日本人を尊敬し、年長者を敬い、僕に対して最大限の敬意を払ってくれていることも、よくわかるのです。

モニカの想いを借りて、中国人たちの日本に対する想いの深層を、日本の人々に伝えようと、、、。中々の自信作に仕上がったと思っています。

しかし、「現代ビジネスの読者に対しては幼稚すぎる記事」ということで、掲載直前にボツになってしまいました。

それで、テーマを変えて、以前から用意してあった(100編近くの原稿を編集部に送信済み)「中国の食べ物」についての記事(オリジナルは今年正月に執筆)にすることにしました。

大まかな内容は以下の通りです。

中国料理を美味しいとは思わない。
油まみれで、どれも(どの地方でも)同じ味だ。

でも、一生懸命作ってくれる。

どんな高級店でも、衛生面には問題がある。

僕は、必ずといって良いほど下痢をする。

でも中国人は平気。

日本人は免疫がないのでは?

清潔すぎるのも問題があると思う。

全ての生物は、他に対する防御のために、いわゆる毒物(薬物にも置き換わる)を内包している。もし、食物から全リスクを取り除こうとしたならば、やがて日本人はサプリメントだけに頼る民族となってしまうであろう。

これに、モニカによるレポートを付随(中国に対する懐疑)。
故郷の村の実態。汚染水で育てた野菜を市場に卸し、清冽な泉の水で作った野菜は自分たちの家庭で食べる。

それと、僕自身の体験(日本に対する懐疑)。
ある山の中で出会った老婆が、奇麗な水の飲めるところに山道を歩いて僕を案内してくれた。そこはオタマジャクシがいっぱい泳ぐ水溜り。老婆は「心配しなくて良い、この水は清冽よ!」と美味しそうに飲み干したが、僕は飲めなかった。日本人であることを恥ずかしく思った。

これも、掲載直前になってボツにされてしまいました。

それで、編集部の指示で、連載を始めた最初のテーマに戻って生物の話に再々転換。6月には「アジサイ」と「小笠原復帰50周年」をテーマに書くことになっていたので、早目に切り替えることにして、5月の中旬には両方を書き終え、送信しました。

6月に入ってすぐ(編集氏曰く、アジサイの話題は6月初めでなくてはならない)アップすることにしました。しかし、待っても待ってもリライトが届かない。

やっと連絡がきたと思えば「字数を減らせないか?(最初は字数には拘らずに書いてくれと言われていたのだけれど)」「話の脈絡が分からない(殊に分類に関わる面で)ところがある」「高名な執筆者の記事を先に載せねばならぬので、後回しにする、もう1日待ってくれ」。

一か月間、ずっとその繰り返しです。「今日は送るから」「明日こそ送る」という言葉を信じて、毎晩Wi-Fiが使えるスタバとマクドで、深夜までリライトが届くのを待機。

その間、オーバーではなく、数10回書き直した原稿を送信、そして「今晩リライトを送る、明後日アップ」が延々と続いたのち、やっと今日アップされたわけです。

一昨日には、虎の子の生活費を切り崩して、とんぼ返りで伊豆半島まで行ってきました(行きは新幹線、帰りは在来線)。野生のガクアジサイの撮影です(30年ぶりに北限自生地に行ってきた)。ガクアジサイの紹介は乗り気ではなかったのですけれど、「カラフルで一般によく知られたアジサイの写真も欲しい」と望んでいるらしい編集氏への忖度です。
 
届いたリライト原稿の最終チェックは、毎回基本的に(編集氏によるリライトにいくら不満があっても)ほぼ全面的に従い、大きな変更はしません。ただし、具体的な間違い箇所は指摘しておかねばならない。

今回は、以下の2か所(他にも多数訂正希望箇所はあったのだけれど、それらについては目を瞑ることにしました)。

●ユンナンアジサイの写真が何故か5枚のうち2枚も使われています。それは良いとしても本文にこの種の記述が一つもないのは、違和感を覚えます。それで、青網の部分を付け加えてください。
>純白のトカラアジサイやヤクシマコンテリギと同じ種は、中国大陸にも分布しています(カラコンテリギ)。
⇒純白のトカラアジサイやヤクシマコンテリギと同じ(または非常に近縁な)種は、中国大陸にも分布しています(カラコンテリギとユンナンアジサイ)。

●ここも、将来整合性が付かなくなってしまう可能性が、、、、(黄網をとり青網を加える)。
>筆者はこれを「ヤナギバハナアジサイ」と名づけました。これこそが、今まで見つかっていなかった、日本のヤマアジサイに最も近縁な中国産アジサイではないかとにらんでいます。
⇒筆者はこれを「ヤナギバハナアジサイ」と名づけました。これこそが、今まで見つかっていなかった、日本のヤマアジサイに最も近縁な中国産に自生するアジサイの一つではないかとにらんでいます。

直っていなかったですね(笑)。読者から何か指摘があっても僕の責任じゃないです(今回はまあまあですが、いつもタイトルについて「タイトルと記事の内容が違う」と読者からのクレームが来ます、タイトルは編集者が決めるので僕は関与していません)。

ということで、「あや子版」には、(削ったり再編したりして)100回近く書き直した草稿の幾つかを紹介しておきます。

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≪ⅠA≫(初期原稿のひとつ・前半)

アジサイのことをどれほど知っていますか?

6月の花といえばアジサイ。4月の花サクラ(ソメイヨシノ)が、私たちに身近な園芸植物のほとんどが外国からの導入種という中にあって、珍しく日本が原産であることを、以前に紹介しました。アジサイも、その稀有な例の一つです。

アジサイには、3つの「種類」があります。

1「園芸植物」としてのアジサイ。
庭やお寺や街角で見かける、私たちが普段アジサイとして認識しているものです。人間が作った、自然界には存在しない植物で、花屋さんで売っています。経済的な価値があり「ビジネス」とも大いに繋がります。無数と言って良い品種があります。

園芸植物アジサイ


園芸植物アジサイ(セイヨウアジサイ)


園芸植物アジサイ(ガク花と手毬花)


2「栽培植物」としてのアジサイ。
愛好家やマニアが、変わった色や形の野性株を山から採ってきて、自分の家の庭で手塩にかけて育てています。品評会があったり、販売組織があったりします。個人間の取引で、1のような大規模な流通機関はありませんが「ビジネス」としては成り立つと思います。やはり無数の品種があります。

  

ヤマアジサイの一品種「ベニガク」


ヤマアジサイの一品種


ヤマアジサイとヤクシマコンテリギの雑種

3「野生植物」としてのアジサイ。
人間の都合とはかかわりなく、地球上に人類が登場する遥かに以前から存在しています。通常、山の中に慎ましく生えていて、2のような愛好家の対象にされる以外は、ほとんど知られることがありません。世界に20~100種ほど(研究者ごとに種の数え方が異なる)が分布しています。

   

ヤマアジサイ(エゾアジサイ)岩手
          

コアジサイ 山梨


トカラアジサイ 三島列島黒島

1と2は、それぞれ人間にとって需要があります。言い変えれば、人間の都合で存在しているわけです。従って「ビジネス」と成り得ます。3は一切人間の都合とは関係なく存在しているので、ビジネスとは無関係ですし、1の美麗さ絢爛さや2の侘び寂びも微塵もなく、一言で言えば役に立たない存在です。

「役に立たないものには無関心」。知人の大学教授が嘆いていました。最近の学生は応用科学ばかりを専攻して基礎学問に興味を示さない。

全国のアジサイの愛好家は、ものすごい数です。愛好家でなくとも、ほとんどの日本人が、何らかの形でアジサイに関心(好感)を持っていると思います。アジサイに関する本も、山のようにあります。

しかし、驚くべきことに、というか、これほど身近な存在であるにも関わらず、生物学的な立場から見た「アジサイとはなにか」に応え得る資料は、ほとんどありません。見掛けの変異に対する品種の命名が膨大な量で行われているのに相反して、系統的な分類は全くといって良いほど手が付けられていないのです。

どの生物の分野でも似たり寄ったりですが、アカデミックな研究者は、メジャーで愛好家の多い対象には、手を付けたがらない傾向があります。取り組むとしても、基礎的な系統分類ではなく、需要がたっぷり見込まれる世界(アジサイの場合は1や2)に限られます。

アジサイの日本における普及はごく最近のこと

ということで、あえて金儲けには「役に立たない」基礎的な情報を紹介していきます。ほとんど全ての日本人にとって極めて身近な存在ながら、誰一人知ることのない、アジサイの素性です。

一切の先入観を排し、筆者による基本形質分析と、最近のDNA解析結果を基に組み立てました。筆者のオリジナルであり、ほとんど全てのアジサイ解説書とは、大半の部分で重ならないと思います。アジサイ愛好家の人達が望むこと(いわば1や2の関連事項)は、何にも書いていません。でも、こうも考えて下さい。将来、人間生活の中でアジサイとより深く関わりあうために、基盤となる知識を改めて知っておいても損はない、と。

私たちに身近なアジサイは、園芸植物としてのアジサイ(1)です。その由来については、結構多くの方々がご存知でしょう。園芸アジサイ(園芸植物としてのいわゆるガクアジサイを含む)の基になったのは、日本本土に広く分布するヤマアジサイの伊豆諸島周辺地域産集団(通常、本土産とは別の種ガクアジサイとされますが、和名についての詳細は複雑な話になってくるので、ここではスルーします)です。

興味深いことに、園芸のサクラ(ソメイヨシノ)が伊豆諸島周辺地域産の(広義にはヤマザクラに含まれる)オオシマザクラであることと軌を一にします。しかし、野生-改良-普及が国内で完結しているサクラと違い、アジサイは少々事情が異なります。

まず、古い時代に一度中国に渡ります。それなりに中国の文化に溶け込み、園芸植物としての地位が確立したのちに、日本への里帰りもあったと思われます。しかし、どちらかと言えば負の存在で、日本の文化に積極的に受けいられることはなかったようです。

そして18世紀の末、中国からヨーロッパに紹介され、(良く知られている、シーボルトが愛人の名前を付けてヨーロッパに再度紹介したのは、その数10年後)そこで積極的な改良がなされ、多様な品種が誕生しました。欧米では園芸植物は大きくてカラフルで派手であればあるほど人々に好まれます。昭和も半ば頃になって、日本起源のアジサイは、豪華絢爛に変身して、里帰りしてきたのです。そして澄ました顔で、古くからの住民でございと、日本文化の代表の一つとして、社寺などに植えられているのです。

ここで、アジサイの「花」について簡単に説明しておきます。手毬のような形の一般にアジサイの花とみなされている部分は、花の集まりで「花序」と言います。それを構成する一つ一つが花である、と言いたいところですが、実はそれも花ではありません。いわゆる一般のアジサイには、花がないのです。

花に見える3~5枚の花弁のようなものは花の外側のガク片に相当する、いわば偽の花で、「装飾花」と呼びます。小さくて目立たない本物の花の周りに、虫を引き付けて花粉の媒体する目的で大きくて目立つ偽の花が形成されました。そこに人間が目をつけ、そこだけを強調し、やがて本物の花のない偽物の花だけで成り立つ園芸植物のアジサイが出現したわけです。

園芸アジサイのなかには、野生種と同様に花序の周りに装飾花、中央部に本物の花の集まり、という組み合わせのものもあって、ガクアジサイとよだれています。ヤマアジサイの一地域集団の伊豆諸島周辺に分布する野生ガクアジサイと一応同じものですが、存在の次元が異なり、園芸種はアジサイもガクアジサイも、基は野生のガクアジサイに由来しています。

中央部に集まる小さな本物の花は、正常花(生殖機能がある)、中性花(一つの花の中に雄蕊と雌蕊が共存する)、普通花などと呼ばれます。分類にはこの部分の構造比較(ルーペや顕微鏡を使わねばならない)が最重要なのですが、一般のアジサイ愛好家や業者は無視しています。そして単に着飾った服に過ぎない(生物学的にほとんど全く無意味と言って良い)偽の花である装飾花の色や形にひたすら注目し、(人間にとって)より魅力的なものにしようと、努力を重ねているのです。まあ、ビジネスに繋がるのだから仕方がないのですが。

侘び寂びの世界に繋がる日本のアジサイ文化

日本の各地に最も普遍的にみられる野生アジサイが、ヤマアジサイです。北海道から九州に至る日本本土のほぼ全域と周辺の島嶼、および朝鮮半島南端部と済州島に在来分布します(中国大陸の一部にも分布するという見解がありますが実態は良く解っていません)。



ヤマアジサイ 広島県恐羅漢山(関東地方のヤマアジサイより血縁的にはガクアジサイやエゾアジサイに近い?)

上記した、近年になってお寺や公園に里帰りし、日本の風景に溶け込んでいる園芸アジサイの基になったのは(種としては同じヤマアジサイに包括される)伊豆諸島周辺産ガクアジサイ(他に比べ葉や花が大きく剛健)ですが、愛好家たちが愛でるのは、ガクアジサイ以外の日本各地に野生するヤマアジサイのほうです。その花(装飾花)や葉の微妙な変異に注目し、侘び寂びの世界に没頭するのです。この風習は、園芸アジサイの普及の流れとは別個に、奈良時代頃から今に至るまで続いているようです。

そのような歴史があるにかかわらず、ヤマアジサイの生物学的な視点からによる分類は、ほとんど行われていません。慣例では、伊豆諸島周辺産を別種ガクアジサイ、北日本産を変種エゾアジサイ、そのほかをヤマアジサイ、それに茶飲料に利用するアマチャとか、九州産のヒュウガアジサイとか、数多くの変種を加えることもあります。

しかし、それらの分類は外観の印象に基づくものであり、一から分類体系を構築し直す必要があります。基礎形態の比較およびDNA解析に基づくと、従来ヤマアジサイとされていた集団は、遺伝的には多様な集団の混在であることが分かりました。一部のヤマアジサイ(おおむね本州西部や九州にみられる花色の鮮やかな集団)は、野生ガクアジサイや北日本のエゾアジサイと同じ一群、一方主に関東地方などにみられる白花の集団は、それらとは異なる血縁集団。ただし総合的な整理はまだ行われていず、よくわかっていないというのが現状です。

例えば四国。ここは特にヤマアジサイ愛好家が多い地域で、夫々の農家には山という山から採取されてきたヤマアジサイが育てられています。それぞれに自慢の品種名が付けられ、毎年各地で盛大な品評会が行われています。にもかかわらず、「四国のヤマアジサイとは何者か?」という基本的な事実の探求は、全く行われないでいるのです。実は四国のヤマアジサイのかなりの個体は、別の種であるガクウツギやコガクウツギとの交配起源である可能性を有しています(外観はヤマアジサイ、基本形質はガクウツギ類)。しかし、実態は全く不明です。

ヤマアジサイの仲間は、ヤマアジサイのほかに、コアジサイ、ガクウツギ、コガクウツギの3種が、日本の西半部(関東地方~九州)に分布します。ヤマアジサイの開花期は、低地では6下旬、山地では7月。同じ頃に咲くコアジサイは、装飾花を欠き、正常花だけで成っていますが、その分、鮮やかな青色の小さな正常花が目立ちます。


コアジサイ 山梨県櫛形山


ガクウツギ 大分県祖母山


サクラやアジサイを愛でる日本の文化を、何の疑いもなく称賛するだけで良いのでしょうか?

ガクウツギ(分布東限は高尾山)とコガクウツギ(同・伊豆半島)は純白の装飾花を持ち、疎らで片の大きさが歪です(両種の関係には不明な点が多い)。開花期は5月。

南西諸島にも、純白のガクウツギの仲間が分布します。屋久島の低地帯にはヤクシマコンテリギ(高地帯に
は分布南限のコガクウツギも観られ、場所によっては混在しますが、交配は行われていません)。屋久島を代表する素晴らしい花の一つです。

権威のある研究者が、ヤクシマコンテリギをトカラアジサイと同一種と見做したため、公式には固有種とされていません。それに固有種らしからぬ麓の至る所に普通に生えているので、有難みに欠けます。ちょうど世界遺産に登録された頃のことです。山の入り口に当たる道路脇に、環境省や県の自然館などに属する数件の大きな建物が立てられました。それから間もなくして、道路の両側を覆っていた野生のヤクシマコンテリギが全て引っこ抜かれてしまったのです。邪魔者の在来種を排除して、観光(これも自然保護?)の目玉にすべく、島外から導入した色鮮やかな園芸アジサイに全て置き換えられてしまったのです。

サクラのところでも違和感を感じたのですが、このようなコメントが多くを占めていました。日本人は、植えたサクラを手塩にかけて大事に育て、花の時期には侘び寂びを楽しみます、それは隣国(K/C)の人々には、とても真似のできない素晴らしい美点であり、その歴史を強調すれば良いのであって、野生とか由来とかの話はどうでも良い。

それ自体は確かにそうかも知れません。しかし、人間の作り出した(疑似)自然にだけ愛情を育み、元からあった自然に対しては、(それが固有種とか絶滅危惧種とかならそうでもないようだけれど)なんだか、ものすごく冷淡。見る角度を変えれば「日本人の美徳」は、いかにも自分勝手で、決して自慢できるような物ではないような気がします。

ヤクシマコンテリギとトカラアジサイを同一種とする案には、筆者も必ずしも反対ではありません。しかし それを慣行するならば、中国大陸産のカラコンテリギや日本本土のガクウツギなども包合する必要が出てきますます。そこまでの研究が成されていない現状では、とりあえずは別種としておくべきだと思います。同種か別種かはともかく、ヤクシマコンテリギは、トカラアジサイにない顕著な特徴を持っています。葉が紙質で、縁の切れ込みが著しく深く、先端が極めて細長く伸び、しばしば葉裏に濃い紫色の幻光を伴います。


ヤクシマコンテリギ 屋久島              


トカラアジサイ 口永良部島

屋久島の真西最短距離僅か12㎞には、火山島の口永良部島が浮かびます。距離的近くても、その生物相は屋久島とは大きく異なり、むしろ北の三島列島や南のトカラ列島と共通します。この島のトカラアジサイは、ヤクシマコンテリギと対照的に、葉が分厚い革質で光沢を持ち、葉裏に紫色の幻光はなく、代わりに葉表がしばしば紫色になります。これらの特徴は、トカラ列島口之島産など他のトカラアジサイとも共通します。

屋久島の西北62㎞の三島列島黒島は、以前「バラン」の項で紹介したような、独自の生物相を持っています。トカラアジサイは主に山上の原生林に生え、葉が革質であることなどは他の各地産と共通しますが、装飾花が極めて大きく、葉が極小さいのが特徴です。


トカラアジサイ 三島列島黒島             


トカラアジサイ トカラ列島口之島

屋久島の南西56㎞のトカラ列島口之島産トカラアジサイは、逆に巨大で丸味を帯びた葉をつけます(園芸アジサイと良く似ている)。黒島産同様、装飾花が極めて大きく、海岸沿い一周道路の周辺に、まるで人間が植えたかのような見事なアジサイ並木が見られます(島に放牧されている牛が食べ残したため)。

トカラアジサイは、その他のトカラ列島の島々や、奄美諸島の徳之島、沖永良部島、および沖縄本島北部のすぐ西にある伊平屋島に分布します。それぞれの島ごとに、顕著な特徴を持っています。ちなみに伊平屋島も不思議な島で、沖縄本島目と鼻の先に位置しながら、生物相は顕著に異なります。そして、ずっと離れた屋久島産と共通する植物が生えていたりします。


トカラアジサイ 伊平屋島               


ヤエヤマコンテリギ 西表島


南琉球の石垣島と西表島には、別種とされるヤエヤマコンテリギが分布しています。

トカラアジサイやその近縁種は、小さな島々を含む南西諸島の多くの島に分布しますが、屋久島を除く南西諸島ベスト3の面積をもつ、沖縄本島、奄美大島、種子島には、何故かこの仲間が分布していません。それぞれすぐ隣の、伊平屋島、徳之島、屋久島に普通に見られることを考えれば、不思議と言わざるを得ません。

台湾や中国大陸産のカラコンテリギ(中国繍球=繍球はアジサイの中国名)については、およびヤマアジサイの仲間以外のアジサイについては次回。





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