功夫電影専科

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ジャッキー、ハリウッドに行く(3)『80デイズ』

2017-01-22 23:35:30 | 成龍(ジャッキー・チェン)
「80デイズ」
原題:Around the World in 80 Days
中文題:環遊世界八十天/八十日環遊世界
製作:2004年

成龍(ジャッキー・チェン)のハリウッド進出は、彼に新たな名声をもたらしました。しかし、香港とまったく異なる製作環境はジャッキーを困惑させ、さらにコメディ作品への出演が相次いだことで、作風のマンネリ化も深刻になっていきます。
そんな状況への反発として撮られたのが『アクシデンタル・スパイ』です。この作品はハリウッドで要求される凡庸なコメディとは一線を画す内容で、過激なスタントシーンからはジャッキーの対抗意識が見て取れました。
 しかしハリウッドの「いつものやつをやってくれ」という姿勢は変わらず、そればかりか香港との合作である『メダリオン』は大失敗。この状況を重く見たジャッキーは、ハリウッドから距離を置きはじめます。
この『80デイズ』は、彼が一連のゴタゴタでハリウッドから離れる直前に撮った、まさに過渡期の真っ只中にあったころの作品なのです。

■時は華やかなりし開拓と発明の時代。ロンドンの銀行を襲撃したジャッキーは、故郷の村から盗まれた翡翠の仏像を奪還し、警察から逃れようと発明家のスティーヴ・クーガンが住む家に転がり込んだ。
そこで助手となったジャッキーだが、当のスティーヴは奇天烈な発明ばかりしている変わり者。王立科学アカデミーの会長であるジム・ブロードベントとは仲が悪く、口論の末に「80日間で世界一周してみせる」というムチャな賭けをしてしまう。
 実はこの賭けは、警察に追われるジャッキーが一刻も早く故郷に帰るため、ひそかに仕組んだものだった。奮起したスティーヴと彼はイギリスを出発するが、仏像を村から盗んだ黒幕であるジムはすべてを見抜いていた。
この男は仏像を利用した軍事取引を画策しており、取引相手である莫文蔚(カレン・モク)を刺客として差し向ける。一方、フランスに立ち寄ったクーガンたちは画家志望のセシル・ドゥ・フランスと出会い、紆余曲折の末に旅の仲間として迎え入れた。
さまざまな国を渡り歩く一行であったが、いくつもの困難が彼らの前に立ちふさがっていく。刻一刻と期限が迫る中、はたしてクーガンたちは無事に世界一周を成し遂げられるのだろうか?

▲今回もジャッキーがプロデュースに加わっているため、アクションについては上々のボリュームを維持。中国パートでは洪金寶(サモ・ハン・キンポー)や呉彦祖(ダニエル・ウー)も参加しています。
また、リメイク元に倣って大物俳優や芸能人がカメオ出演しており、そうした点も見どころのひとつと言えるのですが…残念ながらそこまで痛快な作品ではありませんでした。
 まず本作最大の問題点は、主人公の人物設定です。本作のジャッキーは故郷のために戦っていますが、人生を左右するような大博打をスティーヴに背負わせ、彼やセシルをプライベートな戦いに巻き込んでいきます。
これで秘密を抱えて苦悩するキャラならまだ理解できますが、ちゃっかりセシルにだけ教えて旅をエンジョイするのですから、感情移入のしようがありません。そのせいか、後半の仲直りするシークエンスはとても雑に見えました。
 そのほかのキャラクターについては、多少の誇張はあれどマトモな感じにまとまっています。しかし頂けないのはラストの締め方で、エンドクレジットにNG集もエピローグも表示されないのです。
NG集がないのは製作が大御所のディズニーなので仕方ない面もありますが、劇中では思わせぶりな台詞がいくつも存在します(画家として成功してやると息巻くセシル、協力してくれた船長に対して「新しい船を買ってやる」という約束などなど)。
 そのため、最後は登場人物たちのエピローグ的なカットが挿入されるのでは…と期待していたのですが、まさか何もないとはガッカリです。作品としては可もなく不可もない作りでしたが、この2点と凄まじい日本語吹替えだけは釈然としなかったですね。
それにしても、今にして思えばシュワちゃんの役どころ(女に目が無くて何人も妻を娶っている権力者)が、なんだかちょっと洒落になってないような気が…(笑

 さて、度重なるハリウッドがらみの失敗に落胆したジャッキーは、香港に腰を据えて新たな演技スタイルを模索し始めます。一連のハリウッド作品において、彼が求められたのは多種多様なアクション“だけ”でした。
ゆえに単なるアクションスターではなく、役者としての地盤を固めなければならないとジャッキーは悟ったのでしょう。本作が公開された同年に、彼はその第一歩となる『香港国際警察/NEW POLICE STORY』に出演。これまでにない熱演を見せます。
 武侠片にチャレンジした『神話』、人情物の『プロジェクトBB』と意欲作を連発したジャッキーは、2007年の『ラッシュ・アワー3』でハリウッドに復帰します。内容は「いつものやつをやってくれ」でしたが、真田広之と熱い演技合戦を見せていました。
そしてその翌年、彼はハリウッド出演作における最大のドリームマッチを実現するに至ります。幾星霜の時を超え、ついに肩を並べることのできた最強武打星の名とは……続きは次回にて!

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