功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

ジャッキー、ハリウッドに行く(2)『シャンハイ・ナイト』

2017-01-08 23:21:51 | 成龍(ジャッキー・チェン)
「シャンハイ・ナイト」
原題:Shanghai Knights
中文題:贖金之王2皇廷激戰/皇家威龍
製作:2003年

成龍(ジャッキー・チェン)の名を全米に知らしめた『ラッシュ・アワー』シリーズは、ハリウッドのスタッフによって製作されたコメディ・アクションの快作でした。
その後、ジャッキーは自らのプロデュースで異なる人種のコンビが活躍する、違ったアプローチの映画を考案します。それが白人俳優のオーウェン・ウィルソンを相棒に迎えた『シャンハイ・ヌーン』だったのです。
 彼が大きく関わったことにより、この作品は古き良き西部劇にオマージュを捧げつつも、『ラッシュ~』よりカンフー色の強いアクションを構築。ややインパクトには欠けますが、こちらも上々の成績を記録しました。
注目すべきはラストの2連戦で、今やすっかりジャッキー映画の常連となった于榮光(ユー・ロングァン)、スタントマンとして数々の格闘映画に関わったロジャー・ユアンと夢の対決が実現しています。
相棒となるオーウェンの飄々としたキャラ、最後のちょっとしたサプライズも実に痛快で、当然のように続編が作られる事となりました。それが『シャンハイ・ナイト』であり、今回もナイスな対戦相手とサプライズが待っていたのです…(詳しくは後述)。

■中国・紫禁城の宝物殿から、皇帝の権威の象徴とされる秘宝・龍玉が盗まれた。その際に番人であったジャッキーの父・陳錦湘(キム・チャン)が殺され、アメリカで保安官となっていたジャッキーは思わぬ訃報に落涙するのだった。
この事件は、英国王室の皇位継承者であるエイダン・ギレンの企みであり、ジャッキーは仇討ちに向かった妹の范文芳(ファン・ウォン)を追って、落ちぶれていたオーウェンと共にイギリスへ向かった。
 道中、スコットランドヤードのトム・フィッシャーや、浮浪児のアーロン・ジョンソンと出会いつつ、事件の真相に近付いていくジャッキーたち。やがて、この事件には中国皇帝の座を狙う甄子丹(ドニー・イェン)も一枚噛んでいたことが判明する。
自らが皇位継承者のトップに躍り出ようとするエイダンは、龍玉を渡す代わりに甄子丹へ他の継承者たちと王女の暗殺を指示。范文芳をスケープゴートに仕立て上げ、全てを闇に葬ろうと目論んだのだ。
だが、アーロンの協力で危機を脱したジャッキーたちは、一丸となって暗殺計画の阻止に乗り出した。今、華やかな記念式典でにぎわうテムズ川を舞台に、最後の戦いの幕が上がる!

▲前作は西部劇のテイストを色濃く残していましたが、本作ではロンドンを舞台にした活劇仕立ての内容となっています。一部にミュージカルや喜劇映画のオマージュもあり、それが後半のサプライズ的な展開へと至るのです。
ただ、今回のサプライズは色々と盛り込み過ぎていた感があり、製作側のドヤ顔が透けて見えてしまいました。アーロンの本名も最後の最後に判明した方が、もっと観客を驚かすことが出来たはずです。
 また、今回のストーリーは西部劇の要素がごっそりと省かれています。そのため、前作のラストで判明したオーウェンの正体が死に設定となり、活躍の場も激減していました(彼がガンマンらしいスキルを見せるのは終盤の乗馬シーンぐらい)。
もっとも、今回のオーウェンは完全にギャグ担当となっており、クリス・タッカーと違ってアクションに介入する事すら許されていません。おかげで楽しいシーンも多いので、こればかりは仕方ないと割り切るしかないでしょう。
 しかし『ラッシュ~』の主役2人があくまでバディだったのに対し、本作の主役2人はコンビという垣根を飛び越えた友達同士であり、喧嘩をしてもすぐ仲直りできる関係には微笑ましさを感じます。
ところで、この2つの作品における主役関係の変化ですが、なんとなく『蛇拳』『酔拳』の変遷を彷彿とするのは私だけでしょうか?(『蛇拳』では師匠と弟子が友達同士、『酔拳』は師匠と弟子の関係を徹底、という具合に逆となってますが)

 さて、功夫アクションについては今回も趣向を凝らしていて、先述したサプライズ関連の前振りとなるサイレント映画調の立ち回り等、見所は随所にあります。
しかし最大の見せ場は、なんといってもワイヤー功夫片で慣らした甄子丹とのドリームマッチに尽きるでしょう。彼はジャッキーとの初共演に緊張していたのか、演技面やアクションに硬さが見受けられました。
 それでも、終盤におけるジャッキーアクションとマッハカンフーの激突は、ハリウッドのジャッキー作品としては中々の出来。残念ながら彼との絡みは一度だけで、尺もそれほど長くないのが惜しまれます。
その後に待ち受けるVSエイダンも、甄子丹の迫力に押されがちですが悪くはありません(吹替えスタントも多々ありますが)。のちにジョン・シナとも戦うエイダンの動きはそこそこ流暢で、それなりに強敵感も出ていたと思いますね。
 そんなわけで、作品自体は相変わらず平々凡々ではあるものの、その賑やかな作風からは「ジャッキーもハリウッドに順応しつつあるのでは?」という希望をほのかに感じさせてくれます。
ハリウッドもそんなジャッキーを認めるようになり、彼に大物俳優が多数登場するオールスター作品の主演を任せようとしますが……詳細は次回にて!

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2 コメント

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こんばんは。 (ひろき)
2017-02-12 19:15:47
龍争こ門さん、こんばんは。
いつもお世話になります。
よろしくお願い致します。

ジャッキー、ハリウッドに行く企画、ありがとうございます。長年のジャッキーファンなので、とても興味深く読ませて頂きました^^
「シャンハイ~」シリーズは、二作共、劇場公開時、映画館で、観ましたが、個人的には、本作の「シャンハイ・ナイト」の方が、「シャンハイ・ヌーン」よりも、楽しめました♪

>しかし最大の見せ場は、なんといってもワイヤー功夫片で慣らした甄子丹とのドリームマッチに尽きるでしょう。彼はジャッキーとの初共演に緊張していたのか、演技面やアクションに硬さが見受けられました。

ジャッキー・チェンVSドニー・イェンの夢の対決は、マーシャルアーツ的なバトルと言うよりも、どちらかと言えば、香港式の型にはまったカンフーバトルだったので、楽しめました♪
欲を言えば、武器やアイテム絡みの戦いよりも、もう少し、拳脚アクション中心の真っ向勝負の戦いを観たかったですね。

あと、子役時代の「キック・アス」やハリウッド版の再リメイクされた「ゴジラ」に主演した、アーロンテイラー=ジョンソンも、出演されていると知り、驚きました。
まるで、女の子のような綺麗な顔立ちをされた美少年だったので、とても印象に残っています♪

あと、最近、家の住んでいる地域で、深夜枠の地上波のテレビ放送で、「酔拳2」が、放送されていました。
久しぶりの再見でしたが、前半は、昔ながらの伝統的な型にはまったファイトスタイルで、技や動作が、美しくて、魅了されましたし、後半からのキックボクシングやマーシャルアーツ的な激しいファイトスタイルも、凄まじかったですね。
「カンフーヨガ」の日本での劇場公開はいつになるのでしょうかね?とにかく、楽しみに待ちたいと思います♪
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返信。 (龍争こ門)
2017-02-21 20:33:25
ひろきさんこんばんは、お返事お待たせしました。

>欲を言えば、武器やアイテム絡みの戦いよりも、もう少し、拳脚アクション中心の真っ向勝負の戦いを観たかったですね。
 縛りの厳しいハリウッドですから、やはりそこは色々と制限が付きまとったのだと思われます(戦闘シーンの尺にも決まりがあるとか無いとか…)。
ちなみにノーカット版では素手の戦いに加え、浮き輪を使ったやりとりなどが若干長く行われており、本編ではこちらを見たかったですね。

>あと、子役時代の「キック・アス」やハリウッド版の再リメイクされた「ゴジラ」に主演した、アーロンテイラー=ジョンソンも、出演されていると知り、驚きました。
 本作の記事を書いたときは特に意識していなかったので、あのチャップリン少年がキックアスだとは全く気付きませんでした(苦笑
ドラマやアメコミ映画など、様々なジャンルで活躍しているアーロン氏ですが、またこういったアクション映画にも出て欲しいですね。
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