功夫電影専科

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ジャッキー、ハリウッドに行く(4)『ドラゴン・キングダム』

2017-01-29 22:41:34 | 成龍(ジャッキー・チェン)
「ドラゴン・キングダム」
原題:The Forbidden Kingdom
中文題:功夫之王
製作:2008年

●名実ともに世界的なアクションスターとなった成龍(ジャッキー・チェン)ですが、ハリウッドでの出演作はどれも似たようなコメディ映画ばかり。彼自身も不満を抱いており、活動の舞台を香港や中国に移し始めていました。
しかし、ハリウッド進出でジャッキーが得た物は決して少なくありません。過去のレビューでも触れましたが、大物俳優との共演や夢の対決がそれに当たります。
 『ラッシュ・アワー3』の真田広之しかり、『80デイズ』のアーノルド・シュワルツェネガーしかり、『アラン・スミシー・フィルム』のシルベスター・スタローンしかり。作品の出来はともかく、香港映画では決して実現不可能な顔合わせばかりです。
そしてジャッキーのハリウッド時代における最大のドリームマッチが、この『ドラゴン・キングダム』における“功夫皇帝”こと李連杰(リー・リンチェイ)との邂逅でした。
 ジャッキーと彼は昔から交流があり、いつかは共演作を撮りたいと思っていたとのこと。ところがプロダクションの違いやタイミングの悪さでスケジュールが確保できず、流れ流れてようやくハリウッドで形となったのです。
とはいえ、私は公開前の情報を聞いて不安を感じていました。監督のロブ・ミンコフは本業がアニメーション監督、ジャッキーと李連杰が主役ではない、さらに意図の読めない一人二役、そして製作するのが香港ではなくハリウッド資本…。
懸念すべき材料はとても多く、ぶっちゃけ全く期待しないで視聴したのを覚えています。

 ストーリーはとてもシンプルで、功夫映画オタクでいじめられっ子だったマイケル・アンガラノが異世界に旅立ち、冒険を通して成長していくネバーエンディングなもの。ジャッキーは酔拳の、李連杰は少林拳の師匠として登場します。
まず率直な感想から申しますが、本作はハリウッド産ジャッキー映画の中でベストの出来でした! 確かに物語は真新しいものではなく、出てくるビジュアルはアニメっぽさが強め。ツッコミどころを挙げようとすれば幾つも挙げられます。
しかし本作は功夫片への、ひいてはジャッキーや李連杰に対するリスペクトに満ち溢れており、それでいて2人のスターを並び立たせることに成功しているのです。

 まずリスペクトに関してですが、これまで製作されたハリウッド製のジャッキー映画は、そのほとんどが凡庸なアクション映画の型枠にはめ込まれていました。ゆえにリスペクトに欠けた面があり、中には彼が主役である必要性を感じない作品もあります。
同様のアプローチは『ラッシュ・アワー2』でも行われていますが、こちらがリスペクトしたのは『燃えよドラゴン』のみ。それなりのオマージュこそ感じられるものの、ジャッキーVS章子怡(チャン・ツィイー)をスルーするなど、難点も多々ありました。
一方、本作では人物設定を功夫片や武侠片から引用し、作中の随所に香港映画を彷彿とさせるイメージを挿入。オープニングではショウ・ブラザース作品のコラージュまで飛び出すなど、これでもかと言わんばかりのリスペクトっぷりを見せています。

 ジャッキーや李連杰の扱いについても、各々がそれまで培ってきたキャラクター性をきちんと把握し、それに見合った役柄と設定が用意されています。これは脚本家であるジョン・フスコの、功夫片に対する深い造詣があればこそ実現したのでしょう。
当然、アクションシーンもこの2人の独壇場であり、多くのファンが待ち望んだジャッキーVS李連杰は出会って早々に実現! 2人の長所を知り尽くした袁和平(ユエン・ウーピン)の指導によるこの一戦は、両者の個性を上手く生かした名ファイトでした。
また、主人公であるマイケルを必要以上に目立たせず、それでいて身の丈に合った活躍をさせるという難題もクリアしています。こうした点も今までのハリウッド産ジャッキー映画では調整できなかった部分であり、本作は上手く料理できていたと思います。

 改めて考えると、本作でジャッキーと李連杰が見事に並び立てたのは、2人を助演に配置したハリウッド製の作品だったからではないでしょうか。もしこれが2人とも主役で、香港資本の作品だったとしたら同じ結果になったとは限りません。
たとえ両者が共演を望んでいたとしても、香港映画なら我の強いジャッキーが自己主張を示し、『酔拳2』の監督交代劇のような結果を招いていた可能性があります。
 しかし制約で守られたハリウッドという場所で、一歩下がった助演という立場に身を置いたからこそ、ジャッキーは自らの立場を貫き通せたのでしょう。もしかすると、これまでの凡庸な主演作はこのビッグイベントのために存在した…のかもしれませんね。
その後、そつなく作品を纏め上げたロブ監督の力量と、脚本を担当したジョン(彼は『グリーン・デスティニー』の続編である『ソード・オブ・デスティニー』のシナリオも担当)のカンフー愛もあって、本作はヒットを飛ばしました。
そして、ハリウッドでの立ち位置を見極め始めたジャッキーは、一連のハリウッドでの主演作の総決算ともいえる作品と出会います。その想いは次世代へ、そして時代は2010年代へ……次回、いよいよ特集最終回です。
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