功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

【Gメン75in香港カラテ⑥】『香港カラテ対北京原人』前後編

2009-12-22 22:54:14 | Gメン75&82・香港カラテシリーズ
「香港カラテ対北京原人」
「香港カラテ対北京原人」PART2
製作:1981年

▼梁小龍(ブルース・リャン)が2度目の出演を果たした本エピソードは、大風呂敷を広げすぎた前回の反省からか、北京原人の化石を巡る争奪戦に重点を置いている。また、マンネリに陥らないように偉豪(本作ではレイモンド・タング名義)というニューフェイスを用意し、悪役には李海生(リー・ホイサン…本作では前編のみ季海生名義)を迎えるという快挙を成し遂げている。
李海生については説明不要だが、ここでは偉豪について触れたい。偉豪はショウブラ出身の功夫スターで、張徹(チャン・ツェ)作品の端役などでスクリーンに登場。孫仲(スン・チェン)監督による武侠片『七殺(殺の字は旧字体)』で主演の座を射止めているが、残念ながら天映娯樂のリマスター版は発売されていない。梁小龍や倉田と直接的な関わりの無い偉豪だが、恐らくは同じショウブラ関係の縁で本作への出演に至ったのだと思われる。
 また、この前後編は「香港カラテシリーズ」を長年支えてきた楊斯(ヤン・スェ)にとって、図らずも最後の出演となったエピソードでもある(のちに『Gメン82』の香港編で復帰)。
今回の楊斯は佛掌拳&金剛拳なる技を駆使しているが、これは劇中の描写を見るに神打の可能性が高い。神打は『マジック・クンフー神打拳』や『龍の忍者』などでその一端が描かれており、香港映画では比較的ポピュラーな黒魔術として扱われている。また、ラストで李海生も鐵布杉(功夫片でお馴染みの防御術)のような技を使用しているが、こうして見てみると本作の演出は今までで最も香港映画的であったと言えるだろう。

■かつて第二次大戦で消えた北京原人の化石が発見され、香港ギャングがその獲得に乗り出した。
ところが、輸送のトラブルで北京原人が下塚誠(Gメンの1人・范文雀の弟)の手に渡り、あらぬ疑いで警察に拘束されてしまう。彼は香港警察の強引な取調べでムショにぶち込まれたが、香港ギャングは「化石の行方は下塚が知っているに違いない」と思い、獄中の彼に刺客を差し向けんと企んだ。一方、Gメンは下塚を救出するために千葉裕・セーラ・范文雀を派遣するも、香港警察の河合絃司は非協力的だった。
そのころ刑務所では、下塚の前に奇妙な男・偉豪が姿を見せていた。彼は下塚を狙う殺し屋(『少林寺VS忍者』の角友司郎!)を迎え撃つなど、悪い男ではないようだが…。
 刑務所で下塚と面会した范文雀は、彼の証言から事件に北京原人の化石が絡んでいることを知る。だが、香港ギャングと組んだ偉豪によって下塚が捕らえられ、范文雀たちの元に「北京原人をよこせ」と連絡が入る。范文雀たちは化石を持たずに取引現場へ向かうが、丹波哲郎の依頼を受けた梁小龍の参入によって、事なきを得た。
時を同じくして、若林豪も香港へ到着。ところが偉豪は梁小龍に接触を図ったり、下塚を逃がしたりと不可解な行動を取り始める。実は偉豪、北京原人の化石を追って中国本土から香港へ潜入した広東省の特別捜査官だったのだ。彼によって下塚の無実は証明されたが、その身柄は再び香港ギャングの手に落ちた。偉豪は下塚を利用して香港ギャングに近づいた事を范文雀に詫び、必ず彼を救い出すと誓った。そんな中、香港ギャングはまたも北京原人の化石を要求してきたが、北京原人の化石が忽然と消え失せてしまう。
 香港入りした丹波は、化石消失が河合の仕業である事を見抜いた。この北京原人の化石には多額の懸賞金がかけられており、大家族を養う河合は金欲しさに犯行へ至ってしまったのだ。若林の説得によって河合は改心し、無事に化石も戻ってきた。改めて協力体制を敷いたGメンは、偉豪と共に香港ギャングをおびき寄せる作戦に出た。案の定、香港ギャングは偉豪をアジトに幽閉し、梁小龍がこれを追いかける。
こうして、2人の龍虎はカラテ使いの殺し屋たちを相手取り、怒りの鉄拳を炸裂させるのだった…!

▲本作は『香港の女カラテ対Gメン』で見られた難点がいくつか解消されている。
前回はゴチャゴチャになったストーリーも方向性が一本化され、不甲斐ない有様だったGメンにも活躍の場が与えられている。また、今回も梁小龍は本筋に絡んでこない役柄ではあったものの、楊斯や李海生で見せた激しい功夫アクションなどで、大いに作品を盛り上げている。また、梁小龍に代わって本筋を受け持った偉豪も、敵か味方か解らないという、かつての何宗道を思わせる役柄を演じ、なかなかの存在感を発揮していた。
 とまぁ、ご覧のようにストーリーやアクションは格段に進歩しており、前回のバージョンアップとして正しく進化したエピソードとなっている。だがその一方で、香港警察が悪役化してしまうという事態を招いている。この「香港カラテシリーズ」において、香港警察はGメンの障害となる存在として一貫されてきた。時に縄張り意識を誇示し、時にGメンの捜査を掻き乱すなど、香港という特殊な環境の閉鎖性を感じさせる汚れ役であったが、彼らの言い分にも一理あることが多かった。
しかし本作での乱暴な態度や、あまつさえ国宝級の化石を売ろうとする行為など、その行動は完全に悪そのものだ。香港警察に不祥事が多かったことは事実だが、単純悪と位置づけてしまうのは安易ではないだろうか?次回でもその傾向が見られるが、これについてはまた次回の講釈で…。

ハードボイルド『Gメン75』次の活躍は、いよいよシリーズ最終作『香港カラテVS赤い手裏剣の女』前後編をお送りします。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿