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素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)
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当世大学生事情――現実社会に一線画して物欲まみれ?
大学生
/
2006-01-26 06:33:31
当時の手ざわり、これを土台にしてつい眺めてしまうから驚倒する訳で。……いや、中国の大学生の話です。
『中国青年報』といえば時節柄、週末の折り込み版?である「氷点」が当局よって廃刊になった、というニュースがまず思い浮かぶのですが、その前に大学生活に関する数字がまとめて出てきたのでそちらを先に御紹介します。
……ええ、これも『中国青年報』発の報道で、「中国通信社」(華僑向け通信社)を経て「新華網」(国営通信社の電子版)に転載された記事を私は拾いました。
●北京・天津地区の大学生、1年間の消費額は農民年収の3.5倍に
http://news.xinhuanet.com/fortune/2006-01/23/content_4087604.htm
この記事によると、天津市の最高学府ともいえる南開大学の「学生課題組」(ゼミみたいなもの?)が北京・天津地区の主要大学を対象に「大学生消費状況」と銘打ったアンケートを実施したそうです。
北京大学、北京理工大学、北京外国語大学、中国人民大学、南開大学、天津大学、天津師範大学、河北工業大学の8校の学生にアンケート調査を行ったところ、約9500名の有効回答があった、というから大したものです。
――――
で、その結果判明したのは、
●北京地区の大学生1人当たりの平均月間消費額は615.7元
●天津地区の大学生1人当たりの平均月間消費額は440.0元
という数字です。改めて念を入れておきますが「月間消費額」、生活上、1カ月にこれだけのカネが必要になっているということです。アルバイトの機会に恵まれる学生もいるでしょうが、一般的には親からの仕送り額に等しいとみていいかと思います。……これがどのくらいのレベルに相当するかを都市住民及び農民の収入に照らしてみますと、
●都市部1世帯当たり月間平均収入の33.7%(北京)、24.1%(天津)
●農村部1世帯当たり月間平均収入の56.6%(北京)、40.4%(天津)
……とまあ、なかなか大層な数字です。都市部住民にとっての負担も軽くないですけど、農村部住民であれば収入の約半分が仕送りに消えていくということになります。
ところがこれはあくまでも「月間消費額」で、学費や寮費は含まれていません。それを含めて北京・天津両地区における大学生の年間平均支出額を出してみると、実に
10287.5元
に達します。それを2004年の統計でみてみると、
●都市部住民1人当たり平均年間可処分所得(9422元)の1.1倍
●農村部住民1世帯当たり平均年間純収入(2936元)の3.5倍
となって、記事タイトルの「3.5倍」がここで出てくる訳です。大学生を1年間養うのに農家の年収の3.5倍が必要、というのは以前から指摘されているとはいえ、やはり異常だとしか言いようがありません。
――――
消費性向についてみてみると、この調査結果によれば「大多数の学生が基本的な生活費に消えていく」としており、他愛がありません。数字でいうと、
●食費+生活必需出費=513元(北京・天津両地区の1人当たり平均額)
ということで、特に農村部の学生はこの分の支出だけでほとんど残らないようです。
ただ当然のことながら、親がお金持ちグループが存在し、キャンパスを闊歩しています。質朴な生活を送る貧乏学生を尻目に潤沢な仕送りで消費三昧。ノートパソコン、MP3プレーヤー、デジタルカメラなどは最低限の装備に過ぎません。それから携帯電話。金持ち同士の競争意識のようなものもあって、新機種を追い求めて3年間に携帯電話を6台も買い替えた学生がいるほどです。
恋人ができるといよいよ支出額は増えます。全体の1.5%がそのために毎月500元以上使っているとのことで、これは金持ちグループなのでしょうが、程度の差こそあれ金持ち学生でなくても出費は増えるでしょう。
食事を含めたデートでの出費、携帯使用料のほか、誕生日やクリスマス、バレンタインデーのようなイベント支出(プレゼントなど)、それに服をペアルックで揃えるなど馬鹿になりません。大抵は男が払うものなので、この「恋愛費」によって「財政赤字」に陥る者も少なくないとのこと。男子学生の恨み節が聞こえてきそうです。
――――
この調査はなかなか行き届いており、具体的に家電製品の保有率まで弾き出しています。それによると、
●ウォークマン(40.5%)
●テレビ(12.9%)
●PC(48.9%)
●デジカメ(28.7%)
●携帯電話(74.7%)
●CDプレーヤー(21.4%)
●MP3プレーヤー(45.5%)
とまあ、みんなそれなりに持っているんだなあという感じです。MP3が約半数というのは意外でしたが、国産の廉価品でも売っているのでしょうか。最後に「資産運用」については、
●貯金する習慣がない(29.6%)
●やっても続かない(36.3%)
●考えたことはあるが実行していない(13.7%)
●定期的に貯金している(20.4%)
……とのことでした。
――――
で、私は最近中国に行っていませんし、行っても香港経由で広州や深センあたりを徘徊するぐらいで、大学をのぞいたりもしません。それ故に伝わってくる報道で大学・大学生の変貌ぶりを知り、びっくりしてしまうのです。ええ、野暮な言い方をすりゃあ浦島ってやつです。当ブログのエントリーでいうなら、
●キャンパスにも蔓延する「格差」(2005/02/21)
●ニート出現。(2005/02/22)
●卒業即失業、それが嫌ならド田舎へ行くかニートになるか。(2005/07/12)
●21世紀型学生運動。(2005/07/02)
●21世紀型学生運動がデモに発展!?(2005/07/19)
といったニュースに対して、当時の手ざわり、これを土台にしてつい眺めてしまうから私はいちいち驚倒してしまう訳です(笑)。
――――
私のいう「当時」とは1989-1990年ですから随分昔のことです。留学したつもりが前半戦は民主化運動が勃発して連日嬉々としてデモ隊に加わって練り歩き、後半戦は政治・経済の引き締めと思想的な締め付け、それに民主化運動の落ち武者狩りなどを全身に浴びて過ごした日々でした。隔世の観もむべなるかな、でしょう。
当時の中国人学生は学費・寮費が無料で、大学進学率も1割あるかどうか、という限られた俊秀のみに門戸が開かれていた時代です。クリスマスやバレンタインデーなんてイベントもありませんでしたから、学生たちは質朴そのもの。学生寮はひと部屋8人、「北方人vs南方人」や「上海人vs非上海人」また「都市住民vs農村出身」などで反目して喧嘩することはあっても、金持ちかどうかで付き合いが分かれることはまずありませんでした。
当時は留学生食堂が別に設けてあって、私たちは普段そこで食事をしていたのですが、中国人学生は体育館ほどの広さがあって、細長いテーブルだけが無愛想に整然と並んだ学生食堂、ここに「犬皿」と私たちが呼んでいた器ひとつを持って行き、ご飯をよそってもらった上におかずを載せてもらって食べていました。
この学生食堂、夜中も側面の大扉を開けたままの吹きっさらしなので冬はかなり寒かったと記憶していますが、夜間は消灯時間までこの場所が中国人学生によってびっしりと埋まり、雑談することもなく、予習・復習に黙々と打ち込んでいました。選ばれた連中だけに真面目だしハングリーさもある、さすがだ、とこちらは感心することしきりでした。
冬になるとその学生食堂の一角に山のように石炭が積み上げられ、その隣にこれまた山のように白菜が積み上げられます。いや、実際中国人学生のいない時間帯にそこで缶蹴りをやれたほど立派に盛り上がっていました(笑)。消灯時間後の人気が途絶えた真夜中に、寮を抜け出してきた仲のいい中国人学生たちと寒い寒いと言いながらそこで色々な話をしたのはいい思い出です。
――――
惜しいことです。
全寮制という建前ゆえに情報の共有や意思統一、そして組織化が素早く行われるうえ、学生は全国各地から集まってきていますから同じ地区の他大学とはもちろん、他都市の大学との連携も可能。名門大学だと学生の中に高級幹部の息子などがいて意外な機密情報が容易く手に入ったりもします。
そのうえ気鋭の若手教授などが知識人らしく理論的指導者になったりしますから、草の根からの政治運動を興す上で大学ほど都合のいい環境はないのです。実際、五四運動以来、その種のムーブメントの多くは大学生を主役に行われてきました。
翻って現在の大学生。程度の差はあれこうも物質に恵まれ、物欲も持ってしまっていてはもはや骨抜き同然、農村暴動など社会問題に対して敏感に反応することはできないでしょう。仮に一部の学生が問題意識を持っていても、それが共有され、その問題意識で意思統一が形成されることはないのだろうと思います。
私が経験した1989年の民主化運動のあと、「結局、市民を動かすことができなかった」という反省が学生たちの間で行われました。然るに現在、都市でも農民でも庶民が立ち上がっているというのに、皮肉にも大学生は別世界で知らんぷり。……その線を狙って「教育の産業化」(学費や寮費の有料化)が行われた訳ではないでしょうけど。
まあ愚痴はよすとして、です。今回の調査結果で改めて明確になったのは、人口比なら全体の6割7割を占める「多数派」の農村から大学生を出せなくなってきている、ということです。
卒業後に即戦力となるかどうかはともかく、進学率も高くなった現在の中国の大学生は、事実上ホワイトカラー予備軍=オフィスの兵隊候補といった役回りを振られている訳ですが、それが都市住民に限定されつつあるのです。現在の制度下では、自然にそういう成り行きをたどることになるでしょう。奨学金制度の充実などといった小手先の施策では到底変えることのできない流れです。「調和社会」でしたっけ。何とも空疎な響きを伴う言葉ではありませんか。
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