日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 中国に『環球時報』という時事国際紙があります。確か当ブログコメント欄の重鎮である「大丈夫?」さんが悪趣味にも現地滞在中に御愛読だった筈です(笑)。ありていは反日基地外紙でして、ここの反日電波報道を読んでも平然としていられるなら免許皆伝、てなもんです。という訳で「大丈夫?」さんはすでに達人の境地。

 もちろん国際紙を謳っていますから紙面の全てが反日報道で埋まっている訳ではありません。その『環球時報』が一昨日(1月11日)掲載した記事なんですが……。

 ●西側メディア、軍の兵員20万名削減を悪意に解釈(『環球時報』2006/01/12)
 http://news.xinhuanet.com/mil/2006-01/12/content_4041459.htm

 「また電波かいw」と笑って済ませられないような気がしますので、一応紹介しておきます。

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 人民解放軍の兵力削減というのは、従来の伝統的な人海戦術から転じて機械化やハイテク武器の装備が必要になったことで軍部が行った口減らし、というものです。農作業の人手を減らして赤いトラクターを買う、資金は浮いた人件費で。……といったところでしょう。

 人民解放軍は中越戦争、すなわち中国が無名の帥をおこしてベトナムに攻め入ったところ散々やられて痛い目に遭った、というあの戦いで懲りて人海戦術と決別し、その後はトウ小平とその忠実な手足である軍高官によって近代化に向けた動きに入ります。

 そのために欠かせない兵員削減もトウ小平主導で進み、江沢民が総書記になった後もトウ小平がリストラを継続。一方で後ろ盾となって江沢民による軍部懐柔を助けつつ、天安門事件(1989年)で武力弾圧を担当し株を上げた楊尚昆・楊白氷兄弟の台頭を阻みもしています。

 トウ小平は1997年に死去しますが、兵員削減はトウ小平の敷いたレールに乗って進み、1985年に423.8万名もいたのが、今回完了した2005年末までの削減で約230万名へとスリム化。もちろんトウ小平の鶴の一声だけでなく、国防予算増大といった見返りがあってこそ実現したものでしょう。

 http://news.xinhuanet.com/mil/2006-01/12/xinsrc_4420103120907750825716.jpg

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 で、中国側はこれを「平和的発展戦略の一環」だとし、「スリム化」は世界的なトレンドでもあると強調しているのですが、『環球時報』の記事タイトルにある通り、欧米や日本のメディアはそう捉えてはくれません。「赤いトラクターをたくさん買ってブイブイ言わせようという魂胆だ」と報じられてしまいました。

「軍備拡張によって対外的伸長を図ろうとする表れ」
「周辺各国との間に緊張を呼ぶもの」
「今回の20万名削減が国際社会における中国の軍事的台頭という不安を打ち消すことはない」

 などと書き立てられ、いわゆる「中国脅威論」が改めて持ち出されたりしました。

 するとどうなったでしょうか。「悪意に解釈」された軍部は逆ギレというべきなのか、ともあれどうやら開き直ってしまったようなのです。

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 「開き直った」というのは非常に重要な出来事です。

「わかったよ。好きに言ってればいいじゃん。こっちも勝手にやらせてもらうから」

 ということに他なりません。『環球時報』の記事によると、

「現在、世界で数多くの国家が自身の国防上のニーズに基づいてスリム化による軍備増強を行っている。米国、ロシア、英国、フランスなどの国も兵員削減を実施した。それなのに中国の軍隊の兵員削減に限っては国際社会において反中勢力があれやこれやと言い立てている。これは冷戦型思考だ。この思考の下では、中国の軍隊がどうしようと、相手はそれを脅威と捉えるだろう。以前の兵員数を維持したままでも中国の軍隊は巨大である、脅威だ、と言われるし、今回のように積極的に軍縮を行っても、中国はハイテク化を強め、戦闘力を高めようとしている、脅威だ、と言われる。じゃあ中国はいったいどうすればそういった声を封じることができるのか?」

 ……ということになります。かなり感情的になっている模様です(笑)。この部分の小見出しは「中国の軍隊がどうしようとも、必ず脅威とみる向きがいる」です。その前段でも、

「中国の兵員削減は完全に中国の主権の範囲内における基本的な権利であり、よそから容喙されるいわれはない」

 というくだりがあります。そして記事の最後には、

「中国は自らをの主権と安全利益を保護する必要から、『中国軍事的脅威論』に手足を縛られるようなことは断じてあり得ない」

 と高らかに宣言することで結語としています。

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 こうした開き直りの台詞を語るのは中国国防大学戦略研究所の楊毅所長(海軍少将)や、中国軍事科学院世界軍事研究部の羅援・副部長といった人物で、台湾問題に関しても他国の介入を許さずといった啖呵を切っているのですが、いったい軍部の中でどういったポジションにあるのか、報道官的な立場からの公式発言ではないにせよ、もし軍主流派を代表した非公式な意思表示だとすれば、大きな意味を持つことになるでしょう。

 ともあれ私と同じような感想を持ったのか、台湾の中央通信社も『環球時報』のこの記事をかいつまんで紹介しています。

 http://tw.news.yahoo.com/060112/43/2r8xx.html

 こういう種類の文章が『解放軍報』(人民解放軍機関紙)に掲載されるようだと、いよいよキナ臭い事態、ということになってくるかと思います。

 以上、ちょっと見には断片的な出来事な上に電波ゆんゆんたる『環球時報』の記事ながら、実は重大なシグナルかも知れないということで、一応留意しておくべきかと。


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 【追記】
この『環球時報』の記事、考えてみたら私は「新華網」で拾ったんですね。つまり国営通信社・新華社の電子版に転載されたという訳です。さらに1月13日付で「人民網」(『人民日報』電子版)にも出ていました。

 http://world.people.com.cn/GB/4023831.html

 ひょっとして「新華網」「人民網」に出たとなると、『環球時報』のこの記事、ちょっとオフィシャルっぽいのでしょうか。だとしたらこれはちょっと怖いですね……。(2006/01/14/04:50)



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