日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 一言でいえば、

 事態は当事者の思惑を超えた速さで展開している。それが如実に出てしまったのが今回の件。

 ということかと思います。

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 中国外交部による日本メディアに対する電波発言が相次いでいますね。

 ●電波発言の裏にチラつくは制服組の影?(2006/01/10)
 ●続・電波発言。(2006/01/12)

 と、当ブログでも既報しております。……と思ったら、おやおやまたですか。

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 ●「産経は言論暴力団」 中国誌、名指し批判(『産経新聞』2006/01/17)
 http://www.sankei.co.jp/news/060117/kok030.htm

 【北京=福島香織】中国外務省傘下の半月刊誌「世界知識」(16日発行)は3ページをさいて産経新聞などを名指し批判した。中国メディア上で産経が批判対象となることは珍しくないが、「言論暴力団」「保守御用喉舌(宣伝機関)」と呼ぶなど、ここまで激しい論調は珍しい。今月上旬、日中協議の席で、中国側が日本側に報道規制を求め断られた経緯があるが、当局が日本メディアの中国報道にいかに敏感になっているかがうかがえる。
(後略)

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 ……この記事は後段により詳細な批判があったり、『朝日新聞』がその対極として「いい子」扱いされていることが出てきたりと盛り沢山で読みごたえ十分。是非全文を御一読なさるようお勧めします。

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 ただ最初にお断りしておきますが、私は『世界知識』誌の当該報道、つまり原文をまだ入手しておりません。以下はそれを前提とした上で、すなわち『産経新聞』の報道(上記記事)のみに頼って話を進める、という私にとっては実に頼りない状況であることを御理解下さい。

 さらにいえば、私の頭の中には上記エントリーで言及した私なりの「仮説」があります。そして続々と現出する事態はその「仮説」を否定するのではなく、むしろ傍証となるものばかりです(と私はみています)。……そういう考えが念頭にありますから、ややもするとそのフィルターを通して事態をみてしまい、ある程度の傾きが出てくるかも知れませんが、そこは素人ゆえの御愛嬌、といったところで諒として頂ければ幸いです。

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 さて今回は外交部傘下の雑誌に「電波記事」が出たということですが、まず言えることは、これが「電波発言」に続く一連の動きで、連携されたものだろうということです。「日本のメディア叩き強化」攻勢を発動せよ、という指示がどこからか出され、外交部がそれに従った(渋々と?)結果が「電波」3連発という訳です。

 崔天凱・アジア局長(当時)の発言が1月9日、孔泉・報道局長の発言が翌1月10日、とたて続けに中国外交部から飛び出した「電波発言」に比べ、今回『世界知識』誌は1月16日発行とされています。ジェットストリームアタックと呼ぶには間合いが開きすぎているようにも思えますが、当事者(外交部)にしてみればそうではないでしょう。

 ……とは、『世界知識』が半月刊であり、16日発行とされているからです。これは16日発売、という仮定で言うのですが、1月16日から逆算すれば、『世界知識』の「電波記事」は崔天凱発言・孔泉発言と同時期に執筆され、編集作業のデッドラインギリギリに滑り込ませたもの、と考えられます。黒いかどうかは李肇星・外相あたりに聞いてみないとわかりませんが、外交部にとっては「三連星」なのだろうと思います。

 中国は旧正月を控えて歳末気分が高まりつつあるようです。そうしたなか、

 (1)まず外交部に「日本のメディア叩き」をやらせる。
 (2)それに並行して中国国内メディアに離島防衛をテーマとした日米合同軍事演習を叩かせる。その際はお約束として尖閣諸島や台湾問題を絡めて日本(ひいては米国)への非難を加える。
 (3)最後に台湾有事に際して中国は日米の介入を断固として拒むという姿勢をオフィシャルな形で改めて示す。
 (4)お正月。

 というのが当初描かれたタイムテーブルだった……のかどうかはわかりませんけど。

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 わからないと言えば、対日外交にせよ、内政面にせよ、ひとつひとつの意思決定がいま現在どういう形でなされているのか最近は非常に不透明だということにもふれなければなりません。ちょっと常軌を逸している観があるからです。上記エントリーにも書きましたが、特に対日外交については動脈硬化ともいうべき、内政面への配慮を含めた利害得失を度外視したかのような、国際社会で顰蹙を買い、笑いものにされることを敢えて無視するかの如き暴走ぶりが目立ちます。

 一方、国内では『解放軍報』(人民解放軍の機関紙)がやたらに胡錦涛・総書記及び胡錦涛の提唱する「科学的発展観」を礼讃する報道を連日行い、それが『人民日報』など他の主要な中国国内メディアをも強引に引きずるような形となって、気がついたら胡錦涛の活動、また胡錦涛風味のキャンペーンが前面に出てくるようになりました。

 ……ええ、「仮説」はそうしたこと一切に関する私なりの回答ということになります。とはいえ証拠不十分ですから、まあ憶測とか勘繰りとか、まだそんな程度ですけど。

 で、上述したタイムテーブルについて。『世界知識』が1月16日発売なのであれば、外交部(というより外交部に命令した筋)は1月下旬まで日本メディア叩きを続けるつもりだったのでしょう。例えば電波記事について日本の御注進メディアなり新華社の記者あたりが外交部定例会見で質問を発する。すると報道官が得たりとばかりに語りに語りまくるという予定調和。……ところが、そこで降って湧いたような事態が発生してしまいました。

 ●李登輝氏「奥の細道」散策、5月10日来日で調整へ(読売新聞 2006/01/11/03:05)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060111i301.htm

 これですね。靖国参拝や歴史認識などと比較にならない、軍部を一気に沸点近くまで熱くさせてしまう出来事が出現したのです。台湾問題、しかも他でもない李登輝氏の訪日計画ですから(笑)。それから「周辺事態法」改正の一件。ある程度予想されていた動きだとは思うのですが、こちらも台湾有事に関わる中共政権(特に軍部)にとって坐視できない由々しき事態です。

 ●周辺事態の空港・港湾使用も米軍優先…法改正検討
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060111i105.htm(読売新聞 2006/01/11/14:34)

 『世界知識』の電波記事が間延びしてみえるのは、崔天凱・孔泉両者の電波発言から約1週間も時間が経過しているということもありますが、それ以前に、舞台がガラリと変わったところでノコノコと出てきた観があるからでしょう。中共は晩御飯の並んだちゃぶ台をいきなりひっくり返されたようなものです。

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 前回の李登輝氏来日の際には日本政府による発表が第一報となり、中共政権がこれに非常に強い反発を示しながらも手も足も出せなかった(笑)という経緯があります(左サイド「CATEGORY」欄の「李登輝氏訪日」参照)。

 今回は外務省が現時点では「まだ正式に聞いていない」と一応コメントしているため、正式発表になるまでの間にそれを阻止せんとする前哨戦(中国側の抵抗)があるかも知れません。本決まりとなれば、中国側のボルテージはいよいよ高まることでしょう。

 と「続・電波発言」の末尾に書きましたが、その前哨戦はすでにスタートしており、外交部定例記者会見でさっそく脊髄反射が行われました。

 http://news.xinhuanet.com/world/2006-01/12/content_4044959_1.htm

 「人民網」(『人民日報』電子版)も李登輝氏訪日計画に対する記事を特典付き(コスプレ写真)で掲載しています。李登輝氏が靖国神社を参拝するのではないかという憶測も。それ、いいですねえ。是非実現してほしいものです(笑)。

 http://tw.people.com.cn/GB/14812/14875/4027874.html

 それから「中国通信網」(華僑向け通信社・中国通信社の電子版)も米国の華字紙からの論評を転載。

 http://www.chinanews.com.cn/news/2006/2006-01-16/8/678893.shtml

 さらに『解放軍報』が台湾有事に対する日米両国の介入姿勢を批判する署名論文を掲載、李登輝氏については書かれていませんが、「人民網」が転載しています。

 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-01/16/content_385560.htm

 同様に、「新華網」(国営通信社・新華社の電子版)も似たような内容の記事を掲載しています。これは基地外反日紙『環球時報』(2006/01/13)からの転載。

 http://news.xinhuanet.com/world/2006-01/16/content_4057695.htm

 『解放軍報』などは「戦時動員態勢」や「予備役の充実」を論じる署名記事がどんどん出てきていよいよ剣呑な雰囲気、ピリピリしています(笑)。以前にも書きましたが、やはり台湾問題となるとキレてしまう向きが飛び出して来ますから(笑)、霧がゆっくりと晴れていくように中共政権のお家事情が次第に明らかになりつつあるように思います。

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 ……という訳で、「産経は言論暴力団」という記事に反応してそれを吟味するのは必要なことですが、現在の日中関係はむしろ「台湾」がキーワードになりつつあります(中国側も目算が狂って対応に苦慮しているところでしょう)。在上海日本総領事館職員自殺事件や日本メディアの対中報道などに関する中国側からの動脈硬化的な反応、たとえば電波発言や電波記事……といったひとつひとつの点をつなぎ合わせて、一筋の線として眺めてみる必要もあるのではないかと愚考する次第です。



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