日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 孔泉をはじめとした中国外交部の報道官による定例記者会見、ときどき日本のテレビにも登場するようですが、あいにく私はそれを目にする機会にほとんど恵まれません。記事漁りをしつつの仕事中はもちろん、当ブログ用の駄文を書いているときも気が散るのでテレビはつけません。

 それに完全夜型生活です。「すぽると」を観ながら「朝食」を喫していることも珍しくありませんから。いまは年末進行の真只中ですから、昼も夜も関係なくなってしまっていますけど(笑)。

 もちろん機会が少ないだけで、定例会見をテレビで観たことはあります。一緒に観ていた配偶者が、

「何これ。馬鹿じゃないの」

 と嫌悪感丸出しで申しておりました。配偶者は横着者なので字幕を追ったりせず、ビジュアルと語調から受けた印象を口にしたのでしょうが、香港人の目にもそう映るようです(ちなみに北京語は発音から何から配偶者の方が下手です。最近は中共礼讃の国情教育なるものが学校で実施され、北京語を操るガキどもも増えているようですが、本来の香港人というのはそういうものです)。

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「いや、あいつらは芸人なんだ。これはお笑い番組なんだよ」

 と、私はつい孔泉たちを弁護してしまいます。演技者とか俳優というほどのものではないでしょう。独り漫才で、ただネタがつまらないだけだと。とはいえ喋り・表情・身ぶりの三位一体が成立してはじめて味が出るものですから、一応は芸としてみてやっていいのではないかと思います。

 現役の報道官3人(孔泉・秦剛・劉建超)についていえば、この三位一体が辛うじて成立して何とか鑑賞に耐え得るのは孔泉くらいのものでしょう。それだけ奥の深い、修業の必要な芸なのです。これは何も中共政権だけでなく、欧米の首脳や報道官の会見を観ていてもそう思います。

 ただ一党独裁で民度も低いため、中共政権の場合はどうしてもネタがつまらなくなるのが難点。中世レベルの民度な上に政治的畜類である中国人民と同列に扱われているようで不愉快にもなります。あと当人は巧みにアドリブを利かせたつもりでも、こちらは逆に不快になったり、観ていて恥ずかしくなってしまったりしますね。……あれ?弁護してやっていたつもりなんですけど。

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 前フリが長くなりましたが、前回の続報のようなものです。

 ●中国、日本に「報道規制」を要求・マイナス面の報道多い(Nikkei Net 2006/01/09)
 http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060109STXKB032609012006.html

 1月9日に北京で開かれた日中政府間協議で中国外交部の崔天凱・アジア局長が、

「日本のマスコミは中国のマイナス面ばかり書いている。日本政府はもっとマスコミを指導すべきだ」

 と言ってのけ、日本側を唖然とさせた件です。私はこの発言自体よりも、こうした私たちを唖然とさせるような動脈硬化ともいえる事例が最近の中国の対日外交に相次いで出てきていることの方に興味があって、その原因として、「指導力不足の胡錦涛と取引した制服組(軍主流派)が、胡錦涛を擁護する見返りに外交に口を出せるようになったからではないか」という仮説を立てているのですが、未だに十分な確証を得ないままです。……というのは前回書いた通りです。

 「政府がマスコミを指導しろ」というのは一党独裁制の社会で呼吸している中国人にとってはごく自然な感覚でしょうし、ごく自然な感覚であるだけに知識人のような学識を身に付けた人でもそれを払拭するのは難しいと思います。「小日本」といった対日感情もあるでしょう。前回も書きましたが、中国のメディアは「党と政府の代弁者」たることが義務付けられており、言うなれば御用新聞や機関紙・広報紙といった存在です。

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 マスコミ論専門の学者とか日本研究者なら「日本のマスコミは違う」という知識があるから別でしょうけど、それでも「中国のように日本政府がマスコミを指導しろよ」という感覚は頭のどこかに残っているかも知れません。外交担当者も同じようなものだと思います。知識として日本や欧米のマスコミが中国のそれとは全く違うということは理解している。とはいえ「ごく自然な感覚」が抜け切れずに残っていたとしても不思議ではないでしょう。

 ただそこは外交の専門家、国際社会でうっかり
「日本政府はもっとマスコミを指導すべきだ」なんて言ったら「やっぱりお里は争えないものだな」と笑われることもわかっていますから、個人の立場で論文などを書くのならともかく、国家なり党なり外交部なりを代表する立場ではそれを口にすることはありません。これも前回書いた通り、せいぜい「日本のメディアも騒ぎ過ぎる」という程度です。

 ああそういえばこの点で失敗した阿呆が一人いましたね。江沢民です。まだ総書記のころ、香港記者の執拗な問いかけにマジギレして記者たる者は云々……と説教を始めたことがありますが、当然のように香港メディア(親中紙除く)に馬鹿扱いされ、大笑いされました。これと反対にメモを用意せずに記者会見に臨み、瀟洒なアドリブも交えた受け答えに終始して好評を博したのが首相時代の朱鎔基です。

 ……ところが今回、崔天凱がやってしまいました。そう言うように強要されていたのか、ついうっかり地金を出してしまったのかはまだわかりません(私は前者の線を疑っているのですが)。いずれにせよ、これは日本メディアが報じたものです。

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 発言がニュースになってしまうくらいですから崔天凱は実際にそう言ったのだろうと思いますが、中共政権は翌1月10日、外交部定例記者会見でそれを否定しました。孔泉・報道局長の登場です。記者が崔天凱発言を持ち出したのに対し孔泉は、

「あなたが言う中国官僚の話だが、私はそれが正確なものではないと考えている」

 と、きっぱりと否定してみせたのです。さらに、

「(日本の一部のメディアは)なぜ中日関係において出現した摩擦や問題を騒ぎ立てることに熱中し、また歴史問題を含めた重大な原則問題について再三再四にわたって騒ぎ立てることに熱中して、中国人民を含むアジア人民の感情を傷つけるのか」

 と逆襲に転じました。むろん孔泉の一連の発言には「日本政府がマスコミを指導すべきだ」というような言い回しは登場しません。例によって「日本のメディアが騒ぎ過ぎ」で鉾を収めています。……ただし、これは台本からそうなっているのでしょうが、孔泉は自分の発言がトチ狂って
「電波」発言になってしまっていることに気付いているのか、どうか。

 http://news.xinhuanet.com/world/2006-01/10/content_4035033_3.htm

 従来の、例えば中国人犯罪(2003年)やサッカーアジアカップにおける中国サポーターの振る舞い(2004年)で使われた「日本のメディアが騒ぎ過ぎ」というのは、いずれも
「日本のメディアが騒ぎ過ぎることで日本人の対中感情悪化を招いている」という文脈で使われた言い回しです。

 ところが、今回は違います。
「日本のメディアが騒ぎ過ぎ」ることで「中国人民を含むアジア人民の感情を傷つける」とのこと。……私はこのくだりで前回に続いて再びコーヒーを噴く破目になったのです。だって孔泉の言の通りだとすれば、「中国人民を含むアジア人民」が例外なく日本語の読解力やヒアリングに長じていることになりますから(笑)。

 少なくとも日本語を解さない絶対多数の「中国人民」についていえば、その感情を傷つけているのは日本のメディアではなく、日本を悪しざまに書き立てることに熱中している中国国内メディアでしょう。どうやら孔泉までが動脈硬化の仲間入りをしてしまったようです。……もちろん孔泉だけではなく、孔泉のために漫才の台本を書いた中国外交部もそれに含まれます。

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 上述したように、その動脈硬化の原因について私は仮説を立ててみたのですが、制服組が青筋を立てるとすれば、やはり歴史問題より軍の職域に直接関わる台湾問題であろうと思い、「李登輝氏訪日」とか「森喜朗氏訪台」といった報道が流れれば脊髄反射などがあって状況がより明確になるのではないか……と前回書きました。

 すると、天に祈りが通じたのです(笑)。前回のコメント欄で「kolgo13」さんが速報して下さった通り、『読売新聞』が打てば響くように応じてくれました。

 ●李登輝氏「奥の細道」散策、5月10日来日で調整へ(読売新聞 2006/01/11/03:05)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060111i301.htm

 いやーやはり普段の行いが違うということでしょうか(笑)。台湾・香港のマスコミはこれを引き写す形で速報しましたが、中でも台湾・中央通信社は李登輝氏に近い筋の話として、

「今回の訪日計画については主に李登輝氏自身が様々なルートを通じて根回しを行い、日本の友人の協力も得ている」

 と報じ、同筋は『読売新聞』のスクープについても
「信憑性がかなり高い」と語った、と伝えています。

 http://tw.news.yahoo.com/060111/43/2r2hi.html

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 一方の中国は?……というと、こちらも台湾・香港に遅れることなく「中国新聞網」(華僑向け通信社・中国新聞社の電子版)が11時24分に速報し、それを大手ポータル「新浪網」などが即転載しています。

 http://www.chinanews.com.cn/news/2006/2006-01-11/8/676716.shtml

 「新浪網」はさらに午後になって「中国台湾網」からの記事を掲載。前者同様に『読売新聞』の記事を主としていますが、こちらは2004年末の訪日などにも言及し、

「李登輝は台湾島内では急進的な『台独』勢力の総代表であり、国際的には徹頭徹尾のトラブルメーカーである」
「先ごろ中国外交部報道官は、日本政府が李登輝の日本行きを認めれば、中日関係が損なわれることになるだろうと厳しく指摘した」

 とキナ臭い解説めいたものが加わっています。

 http://news.sina.com.cn/c/2006-01-11/15457955393s.shtml

 またこれは偶然でしょうが今日(1月12日)「中国新聞網」に出た『瞭望』誌による日中関係を論じた記事にも、

「中日関係では李登輝らの『台独』勢力が訪日などを通じて火に油を注ぐ可能性も」

 という一文があり、期待は膨らむ一方です(笑)。

 http://www.chinanews.com.cn/news/2006/2006-01-12/8/676996.shtml

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 前回の李登輝氏来日の際には日本政府による発表が第一報となり、中共政権がこれに非常に強い反発を示しながらも手も足も出せなかった(笑)という経緯があります(左サイド「CATEGORY」欄の「李登輝氏訪日」参照)。

 今回は外務省が現時点では「まだ正式に聞いていない」と一応コメントしているため、正式発表になるまでの間にそれを阻止せんとする前哨戦(中国側の抵抗)があるかも知れません。本決まりとなれば、中国側のボルテージはいよいよ高まることでしょう。

 いずれにせよ、前掲したように中国でもすでに報じられているニュースなので、中共政権がどういう食い付き方をしてくるか。「電波」度の高まりを鑑賞する楽しみも含め、これはなかなかの見物になるかと思います(笑)。


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 【注意】最近、読者の方から「サイトが汚染されているのでは?」との御指摘を受けました。それによると、

 「日々是チナヲチ。」を一旦ロードし終わったあと、不審なロードが間欠的に繰り返され、そのままブラウザがビジーになってしまうことがある。この場合、ブラウザを強制終了させないとビジーの状態から抜け出せない。

 とのことです。似たようなケースまた別種の不具合に遭遇された方は御一報願います。



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