日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 今回は軽く雑談でと思ったのですが、つい勢い込んでしまいます。

 いやあ新年早々、というか中国は旧正月前の歳末気分でしょうが、ともあれ盛り上がって参りました。

「今年は『武装農民vs武警』というシチュエーションが増えそうで楽しみです」

 と前回書いたその筆が乾かぬうちに、何と自爆農民がついに登場。いや、自爆テロ自体は前々から起きていて一部が「自殺」扱いで報道されていますが、今回は明々白々、しかも「官」に対する怨恨絡みとみられるケースです。

 もちろん日本でも報道されていますから御存知の方も多いでしょう。

 ●農民が裁判所で自爆、5人死亡 中国・甘粛省(Sankei Web 2006/01/07/18:31)
 http://www.sankei.co.jp/news/060107/kok049.htm

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 繰り返しますが、「官」への怨恨という動機が明白である点が大きな意味を持っていると思います。「明白」というのは中国国内メディアでも「裁判所の処置に不満」であることが原因だと報じられているからです。

 ●『重慶晩報』(新華社電 2006/01/08/03:40)
 http://www.cqwb.com.cn/webnews/htm/2006/1/8/178794.shtml

 ●「中国新聞網」(2006/01/08/09:12)
 http://www.chinanews.com.cn/news/2006/2006-01-08/8/675126.shtml

 香港紙の報道によると、中国国内のネット世論は自爆した農民に同情的だったとのことです。

 ●『明報』(2006/01/08)
 http://hk.news.yahoo.com/060107/12/1k77b.html

 ●『太陽報』(2006/01/08)
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20060108/20060108015637_0000_1.html

 ……あ、中国の大手ポータル「網易」(NETEASE)だと大量のレスをまだ読むことができます。

 http://news.163.com/06/0107/03/26R7AQ3A0001122B.html

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 「官民衝突」かどうかは別として、明確な意図を持った爆破事件は他にも起きています。

 ●炭鉱同士の「械闘」で爆薬使用、山西省で8死4傷(「新華網山西チャンネル」2005/12/03)
 http://www.sx.xinhuanet.com/jryw/2005-12/03/content_5733146.htm

 ●新疆炭鉱の「11.8」爆発事故、報復目的の爆破事件と判明(「新華網」2006/01/07)
 http://news.xinhuanet.com/legal/2006-01/07/content_4021666.htm

 「械闘」というのは農民が刃物や農具などの武器を手に村同士で戦うもので、水争いや境界線画定など村落間に生じた問題が衝突の原因。歴代王朝時代から続いている伝統的なものですが、今回はこれを炭鉱同士でやってしまい、業界柄爆薬を持ち出したため、かくなりました。

 事故から事件に昇格した新疆の一件は、14死27傷。新疆ウイグル自治区公安庁責任者によると、労使紛争や経済的利益に関する対立などから「私憤・報復」的爆破事件がしばしば発生しているとのこと。一例として2005年1月20日にバスの中で爆薬を爆発させ、11死7傷という被害を出した事件を挙げています。「私憤・報復」は公式発表ですから実際の動機がその通りかどうかは別として、新疆では爆発事件が結構起きているようです。

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 炭鉱は全国各地にありますし、しかも政府が闇炭鉱を閉鎖させたりしていますから爆薬は手に入りやすいことでしょう。武具や銃器類も地下工場や横流しルートがあり、闇市場で入手可能です。「武装農民」や「自爆テロ」が出現する素地は十分に整っているといえるでしょう。

 ですから「武装農民」が今年のトレンドかな、と考えてみたりするのです。昨年は当局の雇われ暴徒が丸腰の農民を襲撃した定州事件(6月)や、武警(武装警察)がついに実弾射撃を行って農民を射殺した広東省汕尾市・紅海湾の「12.6」事件という実例が発生。とうとう一線を越えてしまったという観がありますから、「民」の当事者としては覚悟を新たにせざるを得ないのではないでしょうか。

 「官逼民反」(「官」の横暴により追い詰められた「民」が、成否を問わずに立ち上がる)

 という言葉を、ここ数年の中国国内の掲示板ではよく目にします。官民対立がある程度の段階に達したとき「もはや武装して蹶起あるのみ」という気分になるかも知れませんし、自衛目的で武装することもあるでしょう。ともあれ、武装化しやすい空気になったのではないかと思います。

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 これとは別に、重慶市では住宅の強制収用で官民衝突が発生しているようです。共同通信によると、労働者数千名が警官隊数百名と衝突して警官1名が死亡、とのこと。

 ●中国の重慶で労働者と警官が衝突・香港紙報道(Nikkei Net 2006/01/07/18:08)
 http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060107STXKG029307012006.html

 ●中国 不満噴出、相次ぐ衝突 農民が自爆/2000人暴動(産経新聞 2006/01/08)
 http://www.sankei.co.jp/news/060108/morning/08int002.htm

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 実はここからが本題なのですが、記事タイトルの「香港紙報道」というのは『太陽報』(2006/01/07)であることがいずれの記事文中でも明らかにされています。ところが同紙電子版(無料版)に飛んでみたものの、該当記事を見つけられませんでした。『太陽報』のこの記事、御覧になった方があれば御一報下さい。やはり原文にあたってみたいのです。

 ちなみに反体制系ニュースサイトで探してみたところ、「博訊網」と「大紀元gb」が報じていました。どちらも元ネタは米国系ラジオ局「RFA」(自由亜洲電台)の報道でした。

 ●「大紀元gb」(2006/01/07)
 http://www.epochtimes.com/gb/6/1/7/n1181019.htm

 ●「博訊網」(2006/01/08)
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/01/200601080108.shtml

 となると、『太陽報』も「RFA」報道を引き写したものなのかも知れません。親中紙を除く香港の新聞が「RFA」や、やはり米国系ラジオ局である「VOA」(美国之音)をソースに記事を書くことは珍しくなく、「大紀元」や「博訊網」が元ネタとして明記されていることもままあります。

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 で、素朴な疑問が浮かぶのです。毎度毎度のことなのですが、日本の大手メディア、特に新聞や通信社の香港特派員は、どうして「RFA」が報じた時点で動かず、香港紙(今回は『太陽報』)が報道してから記事にするのでしょうか。

 香港紙の流す情報自体、その確度は「RFA」などと大差ないのです。むしろ上述したように、「RFA」などを元ネタにさえしています。この場合、「香港紙が報じたから」という言い分が手堅さの証にならないことは言うまでもありません。

 紙媒体が報じたから間違いない、という根拠のない安心感のようなものがあるのでしょうか。インターネットによる報道がかくも一般的になった時代にそういう考えでいるのなら、ちょっと信じ難いアナクロぶりということになります。

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 いや、私は「RFA」が報じた時点で動け、と言っている訳で、その時点で記事にしろと主張しているのではありません。動けばいいじゃないですか。「RFA」とのパイプがあれば、相手方の記者に確認するなどしてタイムリーに情報の確度をチェックできます。そこから先はプロの記者として記事とするに値するかどうかを判断するだけです。そういうネットワークを、香港各紙や大手誌も含めて張り巡らせれば済むことではないですか。

 私は香港在住時代の初期に趣味でチナヲチをしていたとき、素人ながらその真似事をしていました。疑問のある報道にぶつかれば新聞社に電話して、その記事を書いた記者に直接確認したりしていました。当時の香港紙は中共政権の官職名や組織名について大ポカをすることが少なくなかったので、「その名前は本当か?」などと問いただしたりしたものです。

 以前にも書きましたが、それが重なるうちに飲茶をするような関係になった香港紙記者や政論誌編集者もいますし、図々しくも親中紙の資料室を使わせてもらったりもしました。素人でもマニアめいた執着心があればそのくらいできるのですから、難しいことではない筈です。時代が変わったので、それを紙媒体からネットメディアに範囲を広げるだけのことではないですか。

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 それが歯がゆい、ということだけを雑談として短切に書くつもりだったのが、血を騒がせる事件が報じられてつい長くなってしまいました。

 歯がゆいのです。中国語の原文にあたれる人ならともかく、一般的日本人はやはり日本語メディアに頼ることが多くなるでしょう。プロの方々にも色々な事情があるのかも知れませんが、もう少し働いてほしいものです。



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