日本の「ものづくり」を大事にしよう、という議論を聞くときにそこはかとなく感じるナイーブさは、「いい物を作れば売れる(はず)」という希望的観測(思い込み)を前提にしているからだったんだと改めて認識させてくれたのがこれ。
アメリカでアニメやマンガが売れなくなった本当の理由—Too much expectations and not enough marketing lead to manga slump in US
(本とニューヨーク-BOOKS AND THE CITY)なんで売れなくなっちゃったの?とアメリカ人の人に理由を訊けば、こういう答えが返ってくるはずだ。「The market is over-saturated.」
これを日本人の人にもっとわかりやすく説明すると、アメリカでも日本みたいに老若男女がマンガを読むのがあたりまえ〜になるんじゃないかと最初から期待しすぎた。どういうマンガが売れそうなのか調べもしないで、日本で一般書を出している感覚で「とりあえず色々ちょこっとずつ出してみた」のが裏目に出た。「マンガブームが起こるんじゃないか」と錯覚した、ということなのだ。ぜーんぶ、日本の供給側の責任だよ、ハッキリ言って。
ということで、なんで売上げが落ちているのか?という問いの答えは、「ちゃんとマーケティングをしなかったから」ってことに尽きる。アメリカでマンガを売りたいのなら、どの層のアメリカ人がどんな本を読んでいるのか、どんな本なら売れそうなのか、どうやったら売れるのか、ちゃんと下調べをして、計画を練って、売り込む努力をしなければ、そりゃ「日本で売れたんですよ、コレ」なんて言っても売れないよ。
日本の戦後経済成長を支えたのは「ものづくりの技術」だけではなく「売り込む技術」でもあったはずです。
日本企業は日本製品が「安かろう悪かろう」で1$=360円のころから外国のマーケットを開拓してきたわけで、現在の日本製品が高品質になった反面円高という局面では営業力・マーケティング力が発揮できないはずはないと思うんですけどね。
でも、上のような話を読むと、「いいものを作れば自然と売れる」という「ものづくり神話」に日本企業が自家中毒を起こしているのではないかと心配になります。