一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

楽天の増資と「注文の多い料理店」

2005-11-07 | M&A

※ 小さい文字は備忘録代わりなので読み飛ばしてください。

以前のエントリの最後に、

 ※ 直感的には、収益構造≒株価形成のロジックが異なる両社において時価総額ベースで株式移転比率を決めるのは、かえってフェアではないと思うのですが、そのへんの考察は後日)

 などと書いたままそれっきりになっていたのですが、これは

将来M&Aを継続していく前提で高PERを維持している会社X社が、自社より低PERのA社を時価総額ベースの合併比率で吸収合併すると、X社の市場での評価が変わらない場合は「A社の利益×(X社のPER-A社のPER)」だけ時価総額が増えることになる。でも、そういう「自己増殖する時価総額」をベースに合併比率などを決めるのはどうなんだろう。

という素朴な疑問です。
まあ、これは「無限に増殖するM&A戦略」というものを市場が認めるとも思えませんし(そうだとすると、市場全体のPERは理論的には一番高い企業にさや寄せすることになってしまいます。本当はNASDAQでの赤字・無配当企業の株式を使ってのM&Aの実績などを調べればけっこう面白いのでしょうが、そこまで力及ばずでした)、上場株同士の場合時価総額ベースでないと株主の納得が得られないから、経営統合の協議はどっちにしろ難しいんじゃないだろうかな、と思っていました。
(なのでTOBで買い集めて圧力をかけるのが多いのでしょうし、そのための防衛策も必要なわけです。)

そうこうしているうちに、楽天がTBSの「ベアハッグ」にあって
膠着状態に陥り、このままでは楽天不利、という見方が大勢を占めているなかで

 楽天、1000億円増資へ 財務強化、株価下落に歯止め
(2005年11月 3日 (木) 02:36 産経新聞)

楽天は増資に向け、主幹事の大和証券SMBCや財務アドバイザーのゴールドマン・サックス証券との間で、発行価格や発行株数などの条件の最終調整に入った。

楽天は増資による調達資金を負債削減に充てることで財務内容を改善させる。TBSに経営統合を提案した先月中旬以降、同社株の下落が続いており、これに歯止めをかけたい考えだ。ただ、大型増資は一株当たりの利益を希薄化するとして、さらなる株価下落を招くリスクも抱える。

ということになったようですが、なんかそんな単純な話では終わらなそうな感じがします。

11/4現在で楽天の株価は71,500円、時価総額は846,246百万円です。
株主構成は、三木谷社長夫妻と資産保有会社で51.4%と過半数を確保していますが、ここで1,000億の増資をすると、過半数を割り込むことになります。

また、株価の下落局面における公募増資は難しいので第三者割り当て増資になるとすると、今度は有利発行の問題が出ます、そうなると「もうちょっと株価が落ち着いた(個人の買いが入ってくる)あたり」でしましょうか、となると、三木谷夫妻のシェアはもう少し低くなると思います。


そうすると、今度は楽天がM&Aのターゲットになるのではないでしょうか?

もともと楽天はM&Aで大きくなってきた会社ですので、子会社を切り売りするのは簡単です。
なので、コンテンツごとに切り売りする(村上ファンドやLBOの発想ですね)か、丸ごと他のポータルが買うというのは十分あると思います。


何しろFAがゴールドマン・サックスですから、株価のテコ入れの名目で増資をさせておいて、オーナーのシェアを希釈化して、結局皿に乗せるのは注文主、という「注文の多い料理店」みたいなことを考えていてもおかしくないんじゃないかと思います。

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