一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

いきなり発砲されるリスクをどう織り込むか

2006-08-20 | あきなひ

日本漁船に対する銃撃・拿捕問題ですが、(お亡くなりになった方は気の毒だとは思いますが)日本政府としては遺憾の意を示すくらいしかないというのは仕方のないところだと思います。


領土問題(「日本の領土で日本の漁船を銃撃するとはけしからん」)を正面に出すと、そもそも入り口論で両国ともにらみ合いになってしまい、話が一歩も進まなくなってしまいます。
そして両国の合意事項としては日ロ漁業協定があり、今回の漁船が禁止海域で操業していたとすれば、基本的には漁船側の部が悪く、拿捕されても仕方ないわけです(東シナ海では海上保安庁が中国・韓国の漁船や北朝鮮のニセ漁船に対して行っています)。

すると問題はその際の発砲が適切だったか、ということになりますが、そうなると漁船を狙ったのか、威嚇射撃がそれたのか、とか、漁船が逃げようとしたのかなどは下の記事の主張もありうるわけで「藪の中」なわけです(ロシアの警備艇がゴムボートだった、ということなので、ビデオカメラなどもないでしょうし、漁船は飛行機と違ってフライト・レコーダーとかってないんですよね)。

正直言ってロシアにとってみれば水晶島などは国の領土でも東の果てで、しかもベーリング海峡のようにアメリカと国境を接していたり、ウラジオストックのような軍事拠点もないところの国境警備要員ですから、きちんとした訓練を受けずにいきなり発砲するような輩がいてもおかしくないと思います。

一方で日本の漁船はGPSも完備しているでしょうし、ロシアの漁業専管水域に「迷い込んでしまった」という可能性は低いような感じもします。
(何となくそもそも承知の違法操業をしていたところ、ロシア側がゴムボートだったので事前に漁船のレーダーにも引っかからずに、あわてて逃げようとしたのでは、などと思ってしまいます)


であれば、ちょっと冷たい言い方になりますが、そういう海域で違法(またはスレスレ)の操業をする場合の一つのリスクとしては、拿捕や発砲を受ける(発砲をうければ当たって死傷する)ことは考慮に入れておく必要があったのではないかと思います。



これは北方領土での漁業だけの問題でなく、「違法行為」や「虚偽情報の開示/情報の不開示」、「市場の公正さを損なう買収防衛策」などに非常に敏感な証券取引所に上場している企業や、常に引き金に指をかけているかのごとき金融庁の検査対象の企業(そして、弾が当たれば引責を余儀なくされる(しかも誰も「気の毒」とも言ってくれない)役員)にも言えることだと思いまして。

しかも「漁業専管水域」のような明確な線引きもなかったりしますし、学者や弁護士の先生にはGPSほど明確な指標は期待できないところがやっかいですね。


と、ふと思いました、というところですが、今日はこのへんで。



<参考:報道記事抜粋>

「漁業協定順守で一致」 訪ロの塩崎外務副大臣帰国
(2006年 8月20日 (日) 16:46 共同通信)

成田空港で塩崎副大臣は、北方4島周辺海域での安全操業について「2国間の漁業協定を守ることが大事という認識で一致した。どういうことがあっても人命が失われることがないよう再発防止の徹底を強く要望した」と強調した。


解放のめど立たず、政府は領土問題避け交渉 拿捕事件
(2006年 8月20日 (日) 03:03 朝日新聞)

漁船が拿捕された海域は、日ロ漁業協定で日本漁船のカニ漁が全面禁止されている可能性もある。問題が複雑になるのを最小限に抑えるため、ロシア側が問題視する密漁問題には日本の漁業関係者に漁業協定を再確認・徹底させることで理解を得たい考えだ。  

同時に、政府はこの海域で50年ぶりに銃撃の死者が出たことを重視し、陳謝と責任者の処罰を要求。ロシア側が応じるかは不明だが、過去10年間でロシア当局に拿捕された日本の漁船は50隻にのぼり、再発の恐れもあることから、政府関係者は「強く問題提起することで、今後ロシア側の銃撃を自制させられる」と語る。


漁船銃撃、ロシア側の姿勢に日本側は手詰まり状態
(2006年 8月19日 (土) 21:32 読売新聞)

日本人乗組員一人の犠牲を生んだロシア国境警備隊による日本漁船銃撃・拿捕事件を巡る日露政府間協議で、日本側は19日時点で、「停船命令を無視した密漁漁船への警告射撃は正当だった」とする露側の強硬姿勢に直面、事実上の手詰まり状況に陥っている。


漁船員死亡「警告射撃が命中」 ロシア、偶発的と主張
(2006年 8月17日 (木) 17:09 朝日新聞)

同沿岸警備局によると、日本漁船が水晶島近くで警備艇に発見されたのは現地時間の同日午前5時45分ごろで、暗闇にもかかわらず、漁船は無灯火状態だったという。将校らが高速ゴムボートで近づくと、漁船は逃走を試みた。ボートから緑色の警告ロケットを6回発射し、英語を使って無線で停止を呼びかけても無視して逃走を続けたとしている。  

銃撃については、船体に当てる意思はなくボートから自動小銃で2度警告射撃をしたが、波が高く、漁船も複雑な操船をしたため、命中する結果になったとした。

 


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